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ん?なんか人多くね?ひーふーみー………、56人か。
なんで?え、私の気配が物騒過ぎたの?それとも、ベルの押しすぎか?どっちかわかんねぇな。
「あのー、アルバイトで来たんですけどー」
「あるばいとぉ?若本当ですかい?」
さっきのスキンヘッドにもう一度言うと若と呼ばれる190㎝はありそうなデッカイ兄さんに聞いた。それにしても、皆でかいな。若が飛びぬけてでかいわ。栄養行き過ぎ。首が痛いわ。こちとら身長が低いんじゃ。まあ、若って人から見たら皆小さいわな。
「貴女がアルバイトの方ですか?」
「は、はい!」
ううう、緊張するー。
ってか、若かっけえな。それよりも、この声どっかで聞いたことあるな。どこだっけ、結構失礼にかつ具体的に評価したことのある声だな。
若は程よくついたしなやかな筋肉が格好いい。服の上からでもよくわかる。格好は、白のTシャツの上に黒のシンプルなジャケットで袖をまくっており、ズボンは清潔そうなジーパン、くっそ脚が長い。
「あれ?電話の方ですか?」
「………へぇー、よくわかりましたね。」
「印象深い声でしたので………。」
緊張でだんだんと声が小さくなっていく。若という男は椿がそういうと目を見開き驚きを露わにする。
「そんなこと初めて言われたよ。君、事務のアルバイト?だったかな。確か町田さんだよね。」
「はぃ。」
「うん。こっち来て。…お前たちは全員持ち場に戻って。」
「「「「「押忍」」」」」
若は何故か私の肩を抱こうと腕を回してくるがぬるりと避ける。
若の頬がひくりと引き攣る。
「えっ?あのー、アルバイトは?」
「うん、今から本社に行くから。町田さんは今日から本社の雑務をやってもらうから。つまり、アルバイトにはないけど、異動ってやつだね。んで、僕が社長。」
「はぁ、そうですか。」
「そそ。だから宜しくね。」
えぇ…、聞いてないんですけど。社長ってなんだよぉ。
「表に車が止まってるから特別に乗せてってあげる
よ。」
「あぁ…、はい。ありがとうございます。」
上から目線んんん。
これが俺様……趣味じゃねぇな。
若が先導して歩いてくれるみたいで私は長い脚で歩く若の後ろを短足で、短・足・で!足早についていった。くっそコンパス…。
私がそういうと若は私の見えない私の死角で表情を落としていた。