27
酒のお陰で普段の口調に戻った椿は才原に秘密の三年間を簡潔に喋った。
というか、酒の効き目がいつも以上な気が……
「―—というわけ。」
「いや、信じられんな。」
「いや、信じろよ。」
「荒唐無稽な話だが、さっきのを見るとな…」
「雪子!何か喋ったれ!」
私は確実に酔っ払いになっていた。
《初めまして。主が世話になっているな。》
雪子が念話で全員に喋りかける。
「ぬお!」
私はその驚き様にあはは!と指を指して笑っていた。
「お前、それを他の者が居るときにやるんじゃないぞ。」
「へいへい。」
《酔っ払いになりましたね。》
「お前の主が本当に強いのか疑わしくなったな。」
《強いわ。この世界の最強兵器よりな。侮らないことだ。》
雪子は椿とは違う態度で才原に喋った。
「よーし。才原!目をかっぽじって見とけ!」
完全なる酔っ払いだ。
「結界展開!」
椿は酔っていながらも繊細な魔力操作で防音結界と認識阻害結界を張った。
「何をしたんだ?」
「防音と認識阻害の結界を離れ一帯に張って、ついでに空間魔法でスペースを広くした。」
「…凄まじいな。」
才原は驚愕していた。こんな世界があるのかと。そして、こいつを絶対に敵にまわさない事を心に誓った。
「みんなぁー!修行だー!組手だぁ!こらぁ!」
《わーい!》
《鈍っていないといいのですが。》
「ガウ!」
椿は両手を拳にして、天を突きあげた格好で酔っ払いの雄叫びを上げた。そして、全員が戦闘態勢に入った時に今気づいたかのように「あ!」と声を上げた。
「どうした。俺はみたいぞ。」
「久遠!貴方の魅力を才原に思い知らせてやれ!がはははは!」
そう言って、腕についている久遠を才原に向かって投げた。
その絶妙な速度と角度で飛んできた物体を才原は反射的にキャッチした。
「なんだ。これは。」
「世界最強のスライムだ!がはははは!みんなぁ!修行だー!」
椿がそういうと従魔達が一斉に襲い掛かってきた。
雪子は主の影に潜り、影から攻撃をしかける。
クロは夜の闇を素早く動き回り、攻撃の機会を伺う。
マリアは仕込まれた格闘術で素手に魔力を纏わせて椿に応戦する。
四方八方から攻撃が繰り出されるが椿は余裕の表情で躱しいなし、反撃をする。
その一つ一つの動作で地面にクレーターができ、拳圧で爆風が起きる。
ドゴォーン!ドォーン!
爆風とクレーターができる音に才原は圧倒されていた。
視覚出来ないほどの速度、一撃でも食らえば即死の攻撃を目が飛び出るほどに凝視していた。
「…これほどとは。」
自分の想像もできない次元の先頭を見て、久しく忘れていた男の夢を垣間見た気がした。
「ははは。久遠と言ったかな。お前の主は化け物だな。」
久遠はそれに答えるかのようにプルプルと震えた。
「久遠は修行に参戦しないのか?」
久遠は反応しなかった。
「そうか。俺も憧れるな。」
そう言って、ちびりと湯呑みの日本酒を口にする。
「それよりも、この庭を直してはくれるのかな。お前の主は。」
久遠はプルプルと震えた。
肯定の様だ。
「そうか。なら良しとしよう。だが、明日の大会をどう過ごすつもりなのか。」
才原は右手に湯呑み、左手で久遠の不思議な気持ちのいい感触を楽しんでいた。椿の言う通り久遠の魅力にハマったようだ。




