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「嬢ちゃんがあれやったのか?」
「そうですけど。あと、嬢ちゃんじゃなくて町田椿です。」
「すげぇな。」
「いえ、秘密の方法でやったので手は」
「おい!おめぇら!今日からこの人を椿姐さんと呼ぶんだぞ!いいな!」
「いや、町田です。」
「いや、椿姐さん。」
「町田です。」
「つば」
「町田です。」
「つ」
「町田です。」
「姐さ」
「町田です。」
「椿さ」
「町田です。」
「………町田さん。」
「それでいいでしょう。」
「そうか。それと、さっきはすいやせんでした!」
「は?」
このおっさん突然来たかと思えば土下座とはやるな。そして、何だこれは。
「立ってください。」
「どうして若の肩書きを使ったかわかんねぇが、ありがとうございやす!綺麗に使わせてもらいます!」
「立ちなさい。」
「へい!」
おっさんは元気いっぱい笑顔で立ち上がる。ほら、なんか変な目で見られてんじゃん。どうしてくれんだ。
「やめてください。」
「いや、俺は感動しやした。後に使った連中も感動してました。ありがとうございやす。おい!町田さんはあの便所を綺麗にしてくれたんだぞ!」
「「「「「「おぉ~!」」」」」」
一斉に上がる歓声にお前ら自覚してたんだな。と思う。
「「「「「「町田さん。」」」」」」
おい。
「おめぇら綺麗に使わせてもらうんだぞ。」
「「「「「「押忍!」」」」」」
全員が頭を下げてくる。何だよこの異様な光景。何か部屋を出ていく人数が多かったけどもしかして見に行ったのか?大丈夫かあいつら。しかも「俺コンビニのトイレに行ってたわ。」「やべぇな。バレちったかも。」「おい、どうすんだよ。」「もしかして、物置も見られて!」と聞こえてくる。お前だったのか。顔は憶えたぞ。
「町田さん。俺は田中蒼汰と言います。」
顔ごついくせに爽やかな名前してんな!
「町田さんの言うことは何でも聞きます!」
「そうですか。では、脚立はありますか?」
「へ?脚立はないです。」
「そうですか。じゃあ、肩車はできますか?」
「へ?」
「へ?」を何回使う気だよ。多様性があるな「へ?」。
「肩車で何をするんですか?」
「窓ふきですが。」
「いや、俺が拭きます。」
「いえ、私がします。私の仕事なので肩車をしてください。」
「いや」
「私が、します。」
「はい。」
「しゃがんでください。パンツスタイルなので問題ないです。筋力がないのならば魔法の言葉をかけてあげますから大丈夫ですよ?」
「は?」
「はい、しゃがんで。」
「へ、へい。」
私は魔法の言葉という名の補助魔法を田中さんにかける。「おぉ!」と田中さんは驚いていた。実は田中さんは私を探してビル内を走り回っていたようだ。何でこの部屋が後回しだったのかは謎だ。多分一番最後に来るのだろうと思っていたのか。
「俺、大人になって大人を肩車したのは初めてです。」
だろうな。
「町田さん。尊敬しています。」
尊敬早いな。そして、チョロいな。若の立場なくね?
「町田さん。どうして、若の名前を使ったんですか?」
「社長に雇われているからですよ。」
「それが何か?」
「それだけです。」
この馬鹿に何を説明してもわからなさそうなので打ち切る。
「凄いっすね!」
絶対理解してねぇだろお前。
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コンコン
「町田です。」
「どうぞ。」
ドアの向こうから印象深い声が聞こえてくる。私は返事が返ってきたので部屋の中に入る。
「失礼します。」
足音を出して入室する。
「どうしたの?辞めるの?」
ん?何言ってんだこいつ。
「違います。これ、経費で落とせますよね?」
私は懐から出したメモを若に渡す。
「ん?これは。町田さん、掃除したの?」
「そうですが、何か問題でもありましたか?」
「いや、僕もここのトイレに行けると思うと嬉しいよ。」
メモをパラパラとめくる音が鳴り終わる。
「うん。経費でいけるよ。コーヒーメーカー買おうかな。飲みたいし。」
「では、皆さんに自分のコップを持ってきてもらうように言ってもらえますか?」
「うん。いいよ。ありがとうね。」
「あ、あと紅茶の茶葉をダージリンでいいので買ってもらえますか?」
「いいよ。それも経費でいけるよ。」
「はい。では、こちらのほうも買ってください。」
「ん?これだけじゃないの?」
「はい。」
私はまた懐からメモを取り出した。
「これは………、紅茶を入れるのが得意なの?」
「趣味程度ですが」
「ふーん。今度飲ませてね。」
「期待しないでくださいね。」
「期待しとくよ。」
「あと、報告を。」
「どうぞ。」
ふふ、チクりタイムの始まりだ。
「では、皆さんに無理をせずにできる限り物を丁寧に扱ってくださいとお願いをしてください。」
「お願い?」
「はい。お願いです。」
「うん、それで?」
「吸い殻の数が多かったのでビル内では禁煙をお願いできますか?」
「お願いね?」
「はい、お願いです。それと、どうしても吸いたいと願うのならば屋上で吸ってくださいとお願いします。そこでは、設置型の吸い殻を置いて下さい。これも経費で。あと、女性の方を連れ込まないでくださいと命令してください。」
「うん?そこは命令なんだ?」
「はい。本来は、はっきりと申し上げにくいことですが、はっきりと言わせていただきますと性行為の際に」
「わー!言わなくていいよ!ごめんね!これは僕もいやだね!」
「はい。それとその行為をしていた方を一部ながら把握しておりますのでご報告を。」
「言って言って」
私は社長に一通り報告した後に退室した。
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「ふぅ~、ってかあいつそんなとこも見てたのかよ。すげぇ女だな。おい。」
社長室で俺は一人呟いた。
「あいつ根性あんな。酒か、給湯室に置いてあるって言ってたな。うわー行きたくねぇな。でも、俺が行かないと途中で盗られそうだな。あー、めんどくせぇ。」
お願いだとよ。粛清する気満々だな。俺の会社だぞ?お願いっつって縛りがないように言う。命令だと犯人が割れないからな。見張る気か?まぁ、俺も助かってんだがよ。女は流石に現行犯で捕まえたくねぇもんな。俺もだ。他人の情事をみる気もねぇし興味もねぇな。反応示した奴が犯人だったりな。ははは。あいつ、本当に何者だよ。スパイか?いや、そんなわけねぇ。あいつの出自やら何やら調査はしてるし、今回の職場で初めての仕事ってのは知ってる。怪しいこともしてるわけじゃない。だが、社員を見ても物怖じしない、というか何故か慣れている。怒声を聞いても何故か慣れてやがる。田中が報告に来たが「俺に雇われているから。」だとよ。まぁ、張り紙にそう書くのはあながち間違いじゃねえ。寧ろ正解だな。あいつ等が張り紙通り従う奴らじゃねえし、俺が最初にやれと言ったからな。それに、あの田中が犬っころみたいだったな。あいつの舎弟か何かに見えるのは気のせいか?いい年したおっさんが犬みたいって気持ち悪かったな。
そうだ。給湯室に行くか。
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「おいおい。ここはどこだ?」
あの「爆発部屋」と呼ばれていた部屋が普通の給湯室になってんじゃねぇかよ。酒は、まだ飲めるな。もらっとこ。
いや、すげぇな。俺ここに来たくなかったんだけどな。あと、トイレか回収する前に行くか。
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「いや、ここもどこのトイレだよ。」
あの小にゼラチンを混ぜたかのような塊も落ちてねぇし臭いいもしねぇ。今思えば可哀そうなことを言ったような気がする。いや、鬼だな。あいつよく辞めなかったな。その根性に俺も尊敬してしまうな。田中が感動していたわけだな。ちらっと物置も見たが今日はアレの臭いがしなくて安心したな。うん。女連れてくんなと命令するのは正解だな。あいつやるな。窓のサッシも以上に綺麗だ。カビもないし、埃もねぇ。どこか異常だなこのトイレ。どうやってあいつは掃除したんだ?うちには水を撒くホースもなにもトイレの掃除道具はねぇ。水も撒かれた跡がない。問いただしても答えなさそうだし、害がないなら放置でいいか。酒は山本と持って帰ればいいか。持ちきれねぇし。
「ははは。面白れぇな。紅茶も楽しみだな。」
まぁ、あいつの家の周りで開発しようとうちの傘下の組の会社が立ち退き要請をやってたのには驚いたけどな。一応辞めさせといたが、まさかあの女の担当者が凄い頻度で変わっていたのは何とも言えなかったがな。




