9話 アリス救出
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
グレイもアリスの元に駆け寄り、様子を見た。
「だいぶ衰弱しているな⋯よし、クリスの調合した薬を使おう」
クリスは、グレイが薬を取り出す手を、震える指で止める。
「……待って、この子は魔力枯渇だから……普通の薬じゃ……」
アリスの額にそっと唇を当て、微かな光を送り込む。
「『プリンセス・キス』……王家に伝わる秘術です」
ふとグレイの驚いた顔を見て、照れくさそうに笑う。
「……初めて人前でやったわ。でも、グレイなら……いいの」
アリスの頬に少しずつ血色が戻り、まぶたが微かに動く。
「これは⋯凄いな⋯」
剣の世界で生きる、グレイにとって、この魔法の奇跡のような出来事は衝撃だった。
アリスのまつ毛がかすかに震え、ゆっくりと目を開く。
「……ぁ……?」
クリスは、涙で視界がぼやけながらも、必死にアリスの手を握る。
「アリス……! 目を開けて……! 私よ……!」
少女の焦点が合い、驚きの表情が浮かぶ。
「……姫……様……?」
突然、アリスが泣き出し、抱きついてくるのを受け止める。
「よかった……本当によかった……!」
グレイの方を振り返り、笑顔で頷く。
「グレイ……ありがとう。これで……三人になった」
「うおおお⋯!」
感動の再会にグレイは、男泣きしている。
「良かった! 無事に再会できて!」
グレイの、いつものクールな雰囲気は何処へやら?
クリスは、グレイの涙に驚き、自分もさらに涙をこぼす。
「グレイ……泣いてる……!」
アリスと顔を見合わせ、くすくす笑い出す。
「クールな騎士様が、こんなに……」
三人で自然と輪になり、抱き合う。
「これからは……一緒だよ。魔王を倒すまで……」
ふと洞窟の外から差し込む陽光に目を細める。
「ほら、晴れてきた……きっと、いいことがありますよ」
「ああ! そうだな! まずは村に戻ろう! アリスを休ませないと」
クリスは、アリスをそっと背負い上げ、グレイの方を振り返る。
「はい……! でもグレイ、その前に……」
洞窟の奥を指差し、微かな光が揺らめくのを見せる。
「あそこに……聖剣の気配がします。アリスの転移魔法、きっと聖剣を守るためだったんです」
アリスが弱々しく頷き、クリスの肩に顔を埋める。
「少しだけ……寄り道してもいいですか?」
グレイの鎧の傷を気遣うように触れながら。
「グレイも、もう少し回復薬を使った方が……」
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