7話 出航
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
朝もやの中、港へ向かう足取りが軽やかになる。
「グレイ、見てください! 船が出航の準備をしてます!」
ふと波間を跳ねる魚に目を奪われ、はしゃぎそうになるのをぐっとこらえる。
「……王女らしくなくて、ごめんなさい」
あなたの剣の音に耳を澄ませながら、真剣な表情に戻る。
「でも、今日こそ……アリスを救います。グレイと一緒なら、きっと……」
クリスは、変装マントで姿を変え、2人は船で島に向かった。
船べりに掴まりながら、変装した茶色の髪が海風になびく。
「わぁ……! 海、きれい……!」
ふと波しぶきを浴びて、はっと我に返る。
「……あの、グレイ。島に着いたらまずどこを探しましょう?」
懐の水晶のかけらが微かに光るのを確認し、グレイの袖を引っ張る。
「アリスの魔力……だんだん強くなってくる……!」
船が大きく揺れ、思わずグレイの腕にしがみつく。
「きゃっ……! ご、ごめんなさい……!」
「おっと⋯」
グレイは、クリスを支えた。
クリスは、グレイの腕のたくましさに思わず頬を赤らめた。
「その水晶から場所は分からないか?」
グレイの腕から離れ、水晶を両手で包むように持つ。
「んん……ちょっと待って……『トレース・マジック』……」
ピンクの瞳が薄く光り、魔力を集中させる。
「……東岸の洞窟……! アリスが……苦しんでる……!」
突然水晶が熱くなり、思わず手を離す。
「熱っ……! グレイ、急いで……! あの子が……!」
変装マントを翻し、船べりに必死に掴まる。
「分かった。船長。東岸に船をつけられるか?」
クリスは、船長が頷くのを見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「ありがとう……! あと少し……!」
東岸の岩場が近づくにつれ、水晶が激しく脈動し始める。
「……っ! アリスの魔力が乱れてる……!」
船が岸に接岸するやいなや、飛び降りそうになるのをぐっとこらえる。
「グレイ、先に行って! 私は船長さんにお礼を言ってから……」
変装マントの裾を踏まないよう注意しながら、急ぎ足で船長に向かう。
「分かった!」
グレイは、船を飛び降りた。
「あそこか!」
険しい磯の上にポッカリと洞窟があり、すぐに向かった。
クリスは、船長に急いでお礼を言い終え、グレイの後を追いかける。
「グレイ、待って……! 一人で行っちゃダメ……!」
岩場で足を滑らせそうになりながらも、水晶を握りしめて叫ぶ。
「洞窟の中……魔物の気配がする……! アリスが囮になってるのかも……!」
変装マントが岩に引っ掛かり、ぎりぎりで身をかわす。
「くっ……このマント、動きにくい……!」
「失礼⋯!」
グレイは、クリスを抱きかかえ、険しい岩場をものともせず、飛び越えていく。
クリスは、突然抱き上げられ、思わずグレイの胸鎧に顔を押し当てる。
「きゃあ……!?」
岩場を軽々と飛び越えるあなたの脚力に、目を丸くする。
「グレイって……すごい跳躍力……!」
洞窟入口が目前に迫り、水晶が灼熱のように熱くなる。
「……っ! もうすぐ……アリスが……!」
グレイの首筋にそっと手を回し、耳元で囁く。
「左の通路……あそこから……苦しそうな声が……」
グレイは、クリスを抱きかかえたまま、東の通路に向かった。
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