12話 氷の洞窟
はじめまして、大森林聡史です。
魔物に追われる王女と、彼女を守ると決めた剣士の物語です。
よければお付き合いください。
アリスの転移魔法で、氷の洞窟へ着いた。
すぐ中に入り、吐息が白く染まる。
水色に凍った岩、肌を刺すような冷たい空気、摂氏0℃以下は確実だった。
「……っ、寒い……」
クリスは、アリスと肩を寄せ合いながら、エクスカリバーをしっかり握る。
「グレイ、あの轟音……! ドラゴンが近い……!」
突然天井から氷柱が落下し、思わずグレイの盾に隠れる。
「アリス、大丈夫……? ほら、もっと私に近くに……」
ドラゴンの咆哮が響き渡り、氷の壁が震える。
「グレイ……! 気をつけて……!」
「分かった。作戦通り行くぞ⋯」
グレイは、ドラゴンシールドを構え、引きつけるために、あえて氷のドラゴンの正面から向かっていった。
氷のドラゴンは、勢いよく凍てつく氷のブレスを吐くが、グレイは引かない。
「盾が、アリスの冷気対策魔法で、一段と強化されているな⋯よし!」
グレイは、そのまま懐まで飛び込み、ドラゴンキラーで斬撃を入れた。
「ギャオオオオーッ!!」
傷が深く、氷のドラゴンが怯んだ。
「今だ! クリス! アリス! 行けっ!!」
クリスは、ドラゴンの咆哮に耳を塞ぎながら、アリスの手を引っ張る。
「アリス、行くわよ……!」
氷の檻に閉じ込められた、青髪の騎士を見つけ、駆け寄る。
「ミネルバ……! 目を開けて……!」
エクスカリバーで氷に亀裂を入れつつ、アリスに合図を送る。
「今よ……! 『フレイム・ブレード』……!」
炎の剣が氷を溶かし、ミネルバの姿が徐々に現れる。
「……っ! 早く……早く……!」
「何!?」
その時、ドラゴンキラーが根本から折れた。
氷のドラゴンの体表は、凄まじい冷気で覆われていて、ドラゴンキラーがたちまち凍りつき、グレイの怪力に剣が耐えられず折れてしまった。
すかさず、氷のドラゴンの鋭い爪がグレイを襲う。
グレイの端正な顔に引っかき傷がつき、赤い血が滴る⋯が、洞窟の冷気ですぐに凍った。
「フッ⋯! ドラゴンはそうでなくてはな!」
クリスは、ミネルバの氷が解けかけた瞬間、背後で剣が折れる音に振り向く。
「グレイ……!?」
アリスにミネルバを託し、エクスカリバーを握りしめる。
「アリス、続けて……! 私が……!」
グレイの傷に胸が締め付けられながら、聖剣を高く掲げる。
「『セイント・フレア』……!」
眩い光が洞窟を包み、ドラゴンの動きを一瞬止める。
「今……! グレイ、これで……!」
必死に剣を構え、グレイとの連携を待つ。
「よし!」
グレイは、氷のドラゴンが怯んだ隙に、ジャマダハル状の剣である、ドラゴンスレイヤーを取り出して装着し、アッパーカットを撃つように飛び上がり、氷のドラゴンの喉元を貫き、額までぶち抜いた。
「ドラゴンアッパー⋯ドラゴン退治の切り札だ」
グレイの背後で、氷のドラゴンの巨体が轟音と共に仰向けに倒れ、洞窟全体が揺れた。
クリスは、ドラゴンの巨体が崩れ落ちる轟音と共に、駆け寄る。
「グレイ……! その傷……!」
震える手で凍った血を溶かそうとする。
「『ヒール・ライト』……! もっと……もっと効け……!」
グレイの傷に光が注がれ、氷が解けていく。
ふと背後でアリスの声が聞こえる。
「姫様……! ミネルバ姉さんが……!」
クリスは、涙ながらに振り向き、青髪の騎士が微かに目を開けるのを見る。
「……ミネルバ……」
三人で抱き合い、グレイの方を振り返る。
「うおおおおーっ!! 感動の再会だ!!」
グレイは、大声を上げてまた男泣き。
アリスを救出した時よりも泣いている。
ドラゴンから受けた傷などなんのその、歓声をあげている。
普段はクールだが、内面は熱い男のようだ。
ミネルバが突然起き上がり、銀の槍を構える。
「……敵は……!?」
アリスが姉に飛びつき、泣きながら説明する。
「姉さん! もう大丈夫! グレイさんがドラゴンを倒して……!」
クリスは、グレイの大声に驚きつつも、涙ぐみながら笑う。
「グレイ……また泣いて……ふふっ……」
ミネルバがグレイをじっと見つめ、深々と頭を下げる。
「……貴殿が我が姫を守ったのですね。感謝します」
突然あなたの傷に気付き、慌てて駆け寄る。
「グレイ! その傷は……!」
三人で自然とグレイを取り囲む。
「……ほんと、心配させないでくださいよ……!」
「グレイ……ありがとう……!」
興奮していたグレイだが、突然クールになる。
「イカン⋯嬉しすぎてついな。傷は大したことは無い。ひとまず脱出しよう」
ミネルバが、グレイの傷を確認し、満足そうに頷く。
「……確かに、騎士としては軽傷だな」
アリスが姉の背中にぴょんと飛び乗る。
「姉さん、元気すぎ……! でも、よかった……」
ふと洞窟の天井が軋む音に耳を澄ます。
「グレイ、ここは危ない……! 早く出口へ……!」
エクスカリバーを掲げ、道を照らしながら。
「みんな……ついてきて……!」
四人で駆け出し、氷の洞窟が崩れ落ちるのを振り返る。
「これで……また一人、仲間が増えた……」
クリスは、グレイの横顔を見て、小さく微笑んだ。
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