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7 ミランダが悪役令嬢になりたい理由

 フレッドの説明にミランダは納得したように頷いた。


「わたくしに頼んだ理由はわかりましたわ。それに、これがあれば、依頼人であるキティ嬢もきっと…」

「ミランダ、キティ嬢は自分の気持ちにケリをつけたかったんだと思うよ」

「そうね、ララ。ありがとう」


 言い淀んだミランダの手をそっと握ったララに、ミランダは薄く微笑む。感謝をこめて握り返せば、ララは嬉しそうに笑った。


「このあとキティ嬢と最後の面談があるんだが、お前も同席するか?」

「え? で、でもわたくしだとバレたら、キティ嬢もよく思わないでしょうし」

「なら、バレなきゃいい。ベン、あれを持ってきてくれ」

「あいあいさ〜」


 戸惑うミランダをよそに、ベンとフレッドは別の部屋から大きな段ボールを持ってきた。ガサゴソと中身をあさる二人を不安げな顔で見つめていると、「あったー!」とベンの大きな声が響き渡った。


「お、それいいな。あと、このマントと」

「こっちの羽付の方がよくない?」

「確かにな」


 なんだか会話をしているような気がする。

 そう思ったミランダが腰をあげたその時、二人は何かをミランダに見せつけた。


「ジャジャーン!」

「…なんですの、これ」


 二人が持っていたのは仮面舞踏会で使いそうな派手な仮面に、真紅のビロードのように滑らかなマントだった。派手を通り越して滑稽ですらあるそれを得意げに見せつけてくる二人に、ミランダはジト目を送る。


「要は、変装ってことだよ。ミラ」

「変装にしては派手すぎませんか?!」

「でもやるならとことんっていうじゃん?」

「3人の中に不審者がいるようにしか思えない気がするんですけど?!」

「まあまあいいから着てみろって」


 半ば押しつけられるような形でそれを受け取ったミランダは、ため息をつきながらも三者を見つめる。正しく三者三様、込み上げる笑いをなんとか押し留めようとしているものが一名、期待に満ちた顔をするものが一名、絶対に似合うと信じてやまないものが一名。

 ミランダはほぼヤケクソのような気持ちで仮面を被り始めた。悲しいことに、仮面舞踏会には行き慣れているため、仮面のつけ方もマントのつけ方もよくわかる。しかし、この仮面はやけに上等なものだ。目の縁は銀色の飾り、ストーンのようなキラキラとした装飾、羽は偽物ではなく本物だし、マントも古びてはいるが高価なものだろう。しまいに、シルクハットまで被せられた。ミランダは自分が今、他人にどう映っているのか考えないことにした。


「できましたわよ、3人とも」


 ミランダの声かけに、一応紳士であった男性2名は振り返る。きっと笑いが湧き上がるに違いないと思っていたミランダは、恥を忍んで固く目を瞑っていたが、なぜか静まり返る皆を不審に感じ、薄く目をあけた。


「ミランダ〜!男装の麗人って感じだよ?!」


 嬉しそうに声をあげたララに、ミランダは面食らったような顔をする。どう考えても変人、もしくは奇人の類になるだろうと思っていたのに、なぜか賞賛を受けた。


「意外と似合うな。ミラ」

「うん! やっぱり似合うと思ったんだよな!!」



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