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33 おわりに


「綾殿、お手紙とお荷物が届いていますよ」

「すぐに行きます」


 弟子に呼ばれ、綾子は部屋を出る。


「あ、姉さま!」

 座敷にはみんな集まっていた。


「何の騒ぎですか?」

 綾子が兄に尋ねる。


「公爵家からだよ。ほら」


 兄に手紙を渡され、中身を見る。お礼と言いながら、高価な反物や装飾品、お菓子まで、様々なものを贈ってきたらしい。


「……またですか」

 綾子は呆れながら、

「返事を書きます」

 と告げる。


「うん、頼むよ。こっちは片付けておくね」

「姉さま、露も書きたいです!」


 荷物の処理は兄に任せ、綾子は妹を連れて部屋に戻る。


「丁寧に書かなければいけませんよ」

「はーい」


 文字の勉強があんなに嫌いだった露子も、公爵家への手紙は書きたいと言い張る。いい勉強になるからと好きにさせていた。


『暖かいお手紙をありがとう。旦那様もとてもお喜びで、お気に入りの文箱に入れていらっしゃったわ。よかったら、またお手紙をいただけないかしら』


 丁寧に書かれた文字からは上品さが漂う。紙にもお香がつけられているのか、かすかにいい匂いがした。


「できました!」

 露子が元気に声をあげる。


『おじいさま、おばあさま、おからだにきをつけて。またあそびにいきます』

 簡単な文章。これでも露子からしたら頑張った方だ。


「これでいいですか?」

「はい!」

 あとは綾子が丁寧な言葉で手紙と贈り物のお礼をさらさらと書けば終わり。この手紙のやりとりも、もう何度目だろう。


「露、これを飛脚の詰め所に届けてきなさい」

「はい! 俊兄さまと一緒に行ってきます!」


 綾子から手紙を受け取り、露子が元気よく飛び出していく。


「寄り道せずに帰ってくるのですよ」

「俊兄さま!」


 もう綾子の声なんて聞こえていないだろう。また伊藤におねだりして団子でも買ってくるのだろうか。


「綾子さん」

 その時、部屋の外から耳になじんだ声がした。

「岩木様、どうなさいましたか?」


 襖を開けた綾子の目に、真面目な岩木の顔が映る。いつも以上に強張っている気がする。どうしたのだろう。


「実は」

 慎重に言葉を紡ぎ出す彼の声に、綾子が耳を傾ける。風に揺れる黒髪の隙間から、赤く染まった耳がのぞいた。


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