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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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60/150

熱の理由

「だから、ブレンダ。僕と一緒に恋をしよう」

「……っ」

 甘く、掠れた声で囁かれた言葉は、頭の中にじんわりと染み込んでくる気がした。染み込んだ甘さで、溶かされてしまいそう。

 

ぐらぐらと溶けそうな思考を纏めるために、一度深呼吸をした。そして――。

「ルドフィル様」

「うん」

「わたし、は――」


 私に恋は無理だと思っていた。恋とは、それ以外の全てがどうでもよくなってしまうだけのものだと。

『私には、全てだ』

 アレクシス殿下の言葉が蘇る。ほら、やっぱり。恋は、怖い。だから――、でも。

『僕に、力をくれるもの』

 ジルバルトは、そう言った。だったら、それだけじゃ、ないのかな。怖いだけ、じゃないのかな。

『僕にとっての恋はね、空かなぁ。――恋には、色んな側面がある。良い所も、悪い所も』

 そっか。私は、恋の悪い面しかみたことがなかった。それが全てだと思い込んでいた。


 だって、恋してるミランは幸せそう。とってもキラキラ輝いてる。


「恋を誤解していました。今までずっと。でも、最近恋について考えるようになって。それで――」

 そんなに悪いものじゃないのかも、と思うようになった。

「恋、をもっと知りたいと思います」

 まだ、したいとまでは思えないけれど。私がそう付け足すとルドフィルは、柔らかく頷いた。

「うん。そう思ってくれるだけでも、嬉しい。でも」

 ――でも?

「これくらいは、赦して欲しいな」

 ルドフィルは、私の手をそっと握った。


 ルドフィルに手を握られたことなんて、何度も、何度もある。それこそ数えきれないほど。

 それなのに。……それなのに、体が沸騰しそうなほど、熱くなる。



 触れているルドフィルには、この熱に気づかれてしまったかな。


 そう思うとよけいに恥ずかしくて、握られた手をぱっと振りほどいてしまう。

「も、申し訳ございません! 私、用事を思い出したので、失礼します」


……嘘。用事なんて特にない。でも、このまま手を握られているのはまずい気がしたから。

「そっか」

 ルドフィルは、失礼な私の態度を気にした様子もなく、微笑んだ。そして、またね、と手を振った。私のついた嘘がバレているときの顔だった。

「はい、また!」


 それでも、嘘を指摘されずに良かった。そう思いながら、走り去る。


 貴族の令嬢だったら、はしたないことだけれど、今の私は平民だから誰に咎められることもない。


 学園の中まで走った。柔らかい風が頬にあたって、心地いい。


「……ふぅ」


 校門をくぐり、走るのをやめ、深呼吸する。

「……走ると、熱いわね」

 熱の理由を全部、走ったせいにして、私はもう一度深呼吸した。


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