僕と一緒に
「僕にとっての、恋……」
ルドフィルは、ひとつ瞬きしてゆっくりと噛み締めるようにそう言った後、柔らかく微笑んだ。
「……そうだね。歩きながら、話そうか」
◇ ◇ ◇
ルドフィルと、歩く。
女子寮から学園までの道のりは通いなれたもののはずなのに、なぜだか新鮮に映った。それは、ルドフィルと一緒だからだろうか。
そう思いながら、ルドフィルを見上げるとルドフィルのアイスグレーの瞳と目があった。
「!」
その慈しむように柔らかくて、けれど熱っぽい視線に思わず、目をそらしてしまう。どうして。いつもこんな風に見つめられていたのに、どうして、私はルドフィルの気持ちに気づかなかったんだろう。
ぼんやりとそう考えていると、ルドフィルは立ち止まった。
「ルドフィル様……?」
「空、綺麗だね」
ルドフィルに言われて、空を見上げる。青い空はどこまでも澄み渡り、雲ひとつない。
「ええ。いい天気でよかったです」
この分だと、しばらく晴れるだろう。
「そうだね」
ルドフィルは、何度か瞬きをして空を眺めた後、再び歩き出した。
「僕にとっての、恋はね──」
思わずごくり、と喉をならす。
ルドフィルにとっての、恋。
「空、かなぁ」
「空……ですか?」
何かの謎かけだろうか。
考えて立ち止まり眉を寄せた私の顔を、ルドフィルは覗き込んだ。
「ふふ。考えてる」
悪戯に成功した子供のような表情で、ルドフィルは笑った。
そして、その細く長い指先で私の頬に触れる。ルドフィルに触れられると以前は安心したはずなのに、今はなぜだか緊張する。
緊張して一歩下がりかけた私の手をもう片方の手で握って、ルドフィルは覗き込んだ顔をさらに近づけてきた。
そうすると、ルドフィルの瞳に映りこんだ私と目があう。
「──ブレンダの瞳とおんなじだね」
内緒話をするときみたいに、低い声でそう囁いて、額をくっつけられる。
なんだか、喉が乾いてきた。
うまく、息ができない。
「……緊張してる?」
「……はい」
嘘をついても仕方ないので、正直に頷く。
「そっか。それなら良かった。ブレンダも僕を異性としてみてくれてるんだね」
「……だって」
だって、だって、といった私に、うん、とルドフィルは頷いた。
「──ずるい」
あまりにも子供じみすぎていて、小さく呟いた言葉はルドフィルに届いてしまったようだった。
「そうだね、僕は……ずるい」
ルドフィルが否定をせずに、簡単に受け入れてしまうから、子供みたいな自分が恥ずかしくて、からだの体温が上がる。
ずるい。
悔しくて再びそう呟きたい言葉を飲み込み、代わりに強気にでる。
「それで、どうして、ルドフィル様にとっての恋は空、なんですか?」
つん、とした態度でそういうと、ルドフィルはくすくす笑った。でも、嫌な感じはしなかった。きっと、ルドフィルの瞳が優しかったから。
「空には、色んな表情があるでしょう?」
それと恋もおんなじだよ。
恋には、色んな側面がある。
良いところも、悪いところも。
そういった後、ルドフィルは、ふとくっつけていた額を離して耳元で囁いた。
「だから、ブレンダ。僕と一緒に恋をしよう」




