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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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58/150

ルドフィルにとって

「……」

 鏡をみる。今日の私の顔色は、悪くなかった。やはり、保健室でしっかりと休めたことが大きい気がする。


 顔色は悪くないけれど、その表情は暗い。

 私は両手の人差し指で頬を上げて、無理やり笑顔を作った。ぎこちないそれは、けれど、私が私として生きている証拠でもあった。感情を殺していた頃にはない表情だからだ。


「よし!」


 意図して大きな声を出す。そうすると、目にも元気が宿った気がした。


 ……そういえば。


 ふと、頬に当てていた指先で、肩よりも長くなった髪をつまむ。

「この髪、どうしようかしら?」


 ジルバルトには、切るつもりだといった。もちろん、今もそのつもり……なんだけれど。

 以前は、クリップで止めるだけだったけど、伸びた髪だと、もう少し色々なアレンジができるんじゃないかしら。

 

 そう、たとえば。この前、お出掛けしたときにみた──……。


 私はルドフィルと出掛けたときのことを思い出しながら、髪を結った。


 数分後。

「!」

 鏡に映った自分に歓声を上げる。なるほど、どうしてなかなかこれは。

「涼しい!!」


 首元がかなり涼しくなった。

 首を振ると、少し遅れて結った毛束もぶん、と揺れる。

「馬のしっぽみたいね……」


 貴族としてはずいぶんと、自由な髪型だ。

 でも、今の私はただのブレンダ。


 髪型なんて、誰かからとやかくいわれる筋合いはない。

 だって、校則にも書いていないもの。


 初めて見る自分の髪型に感動が押さえきれず、胸がどきどきする。

「これが、恋だったらいいのに……」


 この胸の高鳴りを、恋と呼ぶのなら。きっと、楽しい。


 でも、違う。恋は一人ではできないから。

『恋はね──落ちるものなんだよ』

 だって、自分から落とし穴にはまる人はいないもの。



 頬を叩いて気持ちを切り替え、制服のタイを結び直す。

 自室をでる前に鏡に向かって微笑むと、今度はうまく笑えた。


◇ ◇ ◇


「……ルドフィル様?」

 女子寮をでようとすると、門前にルドフィルが立っていた。どうしたんだろう? と首を傾げつつ、名前を呼ぶとルドフィルが私をみて目を細めた。


「ブレンダ」

「……っ!」


 大事そうに名前を呼ばれ、戸惑う。いつも、ルドフィルはあんな風に私を呼んでいただろうか。私が気づかなかっただけ?


 ううん、違う。この呼び方は──まるで。


 自分で考えてしまったことに、赤面する。

 自意識過剰だわ。


「ブレンダ」


 立ち止まった私に、ルドフィルはゆっくりと歩みより、顔を覗き込んできた。

 ルドフィルのアイスグレーの瞳と目が合う。

私がゆっくりと瞬きをする間も、ルドフィルはその瞳をそらさなかった。

「その髪型、似合ってる」

「……あ、ありがとうございます」


 いつもなら、もっと普通にありがとうって言えるはずなのに。なんだか、ルドフィルの様子がいつもと違って、どもってしまう。以前までのルドフィルなら、手に取るようにその感情をわからせてくれたのに。今は、さっぱりわからなかった。


 まるで、ルドフィルが私の知らない男の人になってしまったみたいだった。



「……よかった」


 戸惑う私をよそに、ルドフィルは深く息を吐いた。

「──昨日、生徒会を休んでたから、病気になったのかなって心配で」

「……あ」


 そうだ。一昨日、アレクシス殿下に想いを告げられて、それで昨日は寝不足で。生徒会を休んでしまったのだった。


「心配してくださって、ありがとうございます」

「ううん」


 その優しさはいつもと同じルドフィルのはずなのに。なんで、今日は──。


 考え込んだ私の側から一歩下がると、ルドフィルは微笑んだ。


「ブレンダの考えてること、わかるよ。……お兄ちゃんはもうやめにしたんだ」


 ルドフィルは前も同じようなことをいっていた。でも、きっと、私はちゃんと理解できていなかった。


 もう、私はルドフィルにとって、庇護の対象じゃない。


 共に歩む一人のひととして見られている、そういうことなんだ。


 ルドフィルの瞳は熱っぽくて、どきりとする。その熱の理由は、ルドフィルが恋をしているから。


 恋。


『今の私にとっては、全てだ。どうしても、君がいい』


 アレクシス殿下にとっての恋は、全てを投げ出してまで得たいと思うもの。


 ジルバルトにとっての恋は、

『僕に、力をくれるもの』


 じゃあ、ルドフィルの恋は?

「ルドフィル様」


 私は、ルドフィルを見つめた。

「ルドフィル様にとっての、恋は、なんですか?」

 

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