恋より先に
ルドフィルは、私にとってとても頼りになる従兄だ。
でも、それだけでなくて。
恋愛対象としてのルドフィルは、どういう人だろう。
いつも私の手を引いてくれた人。
ルドフィルが、笑ってくれていると安心するし、嬉しい。
でも、それは、恋とは違う気がする。
私にとっての恋とはもっと──どろどろしたものだ。
それ以外をすべて投げ捨ててしまえるほどのもの。
私にとって、ルドフィルのことは大切だけれど、私はルドフィルだけを選べない。
自分勝手な私が今一番大切にしたいのは、私だから。
それにしても、ルドフィルはなぜ、私に恋を……?
わからない。わからない、けれど。
私が現在、ルドフィルに恋をしていないことは、確かだった。
だから。
明日、そのことをちゃんとルドフィルに伝えよう。
たとえ、それでルドフィルとの関係が変わってしまうのだとしても、ルドフィルに嘘をつきたくはなかった。
◇ ◇ ◇
早めにベッドに入った翌朝、あまり寝付けなかったけれど、支度を整え、図書室に向かう。
その途中でジルバルトと出会った。
「おはようございます」
「……おはよ」
ジルバルトが私の顔を覗き込む。
「?」
どうしたんだろう。首をかしげると、ジルバルトがほっとした顔をした。
「昨日、放課後図書室に来なかったでしょ。だから、何かあったんじゃないかって心配だったんだ」
確かに昨日は、ルドフィルに言われたことで頭が一杯で、放課後図書室に行かなかった。最近、放課後に図書室に行くことは日課だったから、ジルバルトも不審に思ったのだろう。
「ご心配をおかけしました」
「ううん、別に。ボクが勝手に気にしてただけだから。それより、寝不足? あまり根を詰めすぎるとよくないよ」
ジルバルトはどうやら、私の寝不足な原因を勉強をしていたからだと思ったらしく「勉強ならボクが教えるからさ、しっかり休みなよ」と言ってくれた。
「ありがとうございます」
単純にジルバルトが優しいだけだと知っているのに、なぜだか、声が上ずってしまった。最近のジルバルトに対する私は、少しおかしい。
また、風邪でもひいたのだろうか?
思わず自分の額に手をあてていると、図書室についた。
ジルバルトはいつも通りの席に座ったけれど、私はどうしようかときょろきょろと辺りを見回す。
アレクシス殿下はまだ今朝は来ていないようだった。
周囲に誤解されるのを恐れるため、できればアレクシス殿下から遠いところに座りたかったけれど、まだ、来ていない分には仕方がない。
ふぅ、と息を吐き出し、問題集を開く。
けれど、頭の中では、ルドフィルに言われた言葉がぐるぐるとまた回っていた。
『君のことが好きなんだ。……君に恋をしてる』
……ダメだ。集中できそうもない。
私は、自習スペースから立ち、本棚へと向かった。
古今東西、人は恋と言う感情に戸惑い、苦しむと言う。
だったら、先人たちの教えが本と言う形でどこかに残っていないだろうか。
そう思い、背表紙をつらつらと目で追っていると、一冊の本に目が留まった。
「『恋と愛の違い』? 君は、誰かに恋をしているのか?」
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