兄でなくても
振り向く。この声の主は──。
「おはよう、ブレンダ」
「……おはようございます、アレクシス殿下」
思った通り、アレクシス殿下だった。
アレクシス殿下は、それで、と話を続ける。
「君は誰かに恋をしているのか?」
「……いいえ」
首を振る。私は誰にも恋をしていない。
するとアレクシス殿下は、なぜかほっとした顔をした。
「……そうか」
話はそれで終わりだろうか。
私は誰にも恋をしていないけれど、だからこそ恋と愛の違いが気になる。
私はその本を借りることにした。
「ち、ちょっとまて」
アレクシス殿下は本をもって、貸し出しコーナーにいった私を慌てたようにとめる。
「どうなさいました?」
「だったら、なぜ、その本を借りるんだ」
なぜ、と言われたら。
「知りたいからです」
そう。私の知る恋は一つしかない。だからこそ、世間一般の恋と言うものを知りたかったのだった。
◇ ◇ ◇
午前の授業を終えた私は屋上へ向かう。
屋上は今日も気持ちの良い風が吹いていた。
「……ブレンダ」
名前を呼ばれて振り返る。
ルドフィルだ。
「ルドフィル様、昨日の件でお話があります」
私は、深く息を吸い込んだ。そして、ゆっくりと吐き出す。
「私は、ルドフィル様の気持ちには応えられません。私は、ルドフィル様に恋をしていないから」
「……うん」
ルドフィルはゆっくりと、頷いた。
「はっきりと言ってくれてありがとう」
ルドフィルは笑った。
「でも、ブレンダは、他の誰かに恋をしている訳じゃないんだよね」
「……はい」
私は誰にも恋をしていない。恋をしていない、はずだ。
「だったら、赦してくれる?」
赦す?
「僕が君を好きでいることを。そして、君がいつか、僕に恋をしてくれるように努力をすることを」
頷く。赦しなんて必要ない。
私がそういうと、ルドフィルは笑った。
「ありがとう、ブレンダ。……もう、僕は君の兄ではいられないけれど。それでも、君を大切に思う気持ちは変わらない。大好きだよ、ブレンダ」




