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【書籍2巻2/10】感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!【コミカライズ】  作者: 夕立悠理
一章

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10/150

変な人

「……はんぶんこ」

 つまり、どちらも食べられるということ!? 私が思わずごくりと喉をならすと、ジルバルトは少しだけ笑った。

「そ。どうする?」

「お願いします!」



 私たちは、空いている席に向かい合って座った。店員に取り皿をもらい、それぞれを切り分ける。


「はい、どうぞ」

「ありがと。……こっちもどうぞ」


 切り分けた皿をそれぞれ配り、食べ始めた。

「いただきます……、!!!」


 こ! これが特別メニューなのか。

 特別メニューはお肉なのだけれども、お肉の柔らかさもさることながら特徴的なのはそのソースだ。

 酸味のある爽やかな香りが鼻を抜ける。


「ーー!」


 どうしよう。すごく美味しい。手が止まらない──。


 思わずぱくぱくと食べていると、ルビーのように赤い瞳と目があった。

「? 食べないんですか?」


 こんなに美味しいというのにジルバルトのほうは、まったく減っていなかった。

「食べるよ。ただ……」


 ただ?


「あんたが、あんまりにも美味しそうに食べるから驚いただけ」

「だって、とても美味しいですよ」

「知ってる。まさか、氷姫のそんな顔が見られるとは思わなかったから」


 氷姫? なんだその名前は。

 氷姫とやらを探してきょろきょろと辺りを見回すと、ジルバルトはふは、と笑った。

「知らなかったの? あんたのことだよ」


 ……私?

 まぁ、私は確かに父に泣くな、笑うな、怒るな、と感情を表現するのを禁じられてから、表情を動かさないことに集中していたけれど。


 まさか、そのせいで、氷姫なんて呼ばれていたなんて。


「ーーーっ!!!」


 羞恥で頬が熱くなるのを感じる。氷姫だなんて、恥ずかしすぎる。せめて、無表情なやつ程度にとどめておいてほしかった!


「……顔、真っ赤。雪解けだ」


 ジルバルトがからかうように言う。

「っ! からかわないでください!」

「……ふ」


 そういってもなおジルバルトがくすくすと笑うので、睨む。

「……あんた、可愛いね」

「……は?」


 いやいやいや。可愛い要素ゼロだ。

 感情の制御がきかず、冷めた目でジルバルトを見てしまったけれど、ジルバルトはなお楽しそうな顔をしている。



 ジルバルトは人嫌いという噂程度は知っていたけれど。

 ……もしかしたら、結構な変人と知り合ってしまったかもしれない。


 そんなことを思いながら、昼食をとった。

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