Act.3 憧れ
歩けるようになって一週間、大分体が慣れてきた。相棒には申し訳ないが、やっぱり自分の足で歩けると行ける場所が多くて楽しい。母さんの気遣いで一度お世話になった医者に診てもらったが、どこにも異常はないそうだ。僕の回復に驚いていたが、彼に足の回復の事情を説明してもまともに相手してもらえないだろう。
「時人、今日もどこか出かけるの?」
「うん。大分歩くの慣れてきたし、そろそろバイト探そうかなと思って。」
正直、灰族がどこにいるかは分からない。ただ、家の中に居て発見出来るとも思えないので、不特定多数の人が訪れる場所で働ければ、灰族と遭遇する確率も上がるかなと考えていた。ただ母さんはバイトに関してあまり賛成ではないようだ。
「あなた、歩けるようになったばかりでしょう。何もそんなに無理する必要ないんじゃない?」
「いや・・・あ、ほら。二輪の免許も取りたいし、バイクも買いたい。母さんに迷惑かけたくないってのもあるけど、自分の力で手に入れたいんだ。」
咄嗟に適当な理由を言ってしまったが、僕はバイクに乗れるのだろうか。自転車にもほとんど載ったことがないのに。ただ、その息子の意地っ張りに対して母さんは寛容だった。
「分かった。まあ、怪我しないように頑張りなさい。」
僕は小さくうなずいた。やっぱり母さんには見透かされるんだな。意地のことも、決めたら最後までやり通すってことも。僕は朝食の食器を洗った後、外へ出かける準備をした。
「やっぱり、コンビニかな。」
不特定多数の人が訪れる場所かつ僕が好きな場所といえばコンビニだ。今は肉まんやからあげが好みだが、子供の時はよく玩具菓子を見ていた。そういえばその当時憧れていた黒いヒーローの玩具菓子が手が届かない所にあって、それを取ってくれたお兄さんがいたっけな。あの時は多分高校生だろうから、引っ越し前の家の近くにあったコンビニにはもういないだろうな。




