表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

夢の世界で……

伊月裕隆、高二の16歳。

僕は周りから言えば、不幸をいっきに背負った男らしい。

僕には、両親と兄と妹がいた。僕が4歳の時、母を病気で亡くし、父と兄を、僕が小学6年の時に、交通事故で亡くした。

さらに、今から半年前に、放火され、住んでいた家を無くした。犯人はまだ捕まらない。そして、二ヶ月前、最愛の彼女を亡くした。事故だった。美紀は、僕に初めて希望を持たせてくれた。絶望して、絶望して、苦しんでいた僕に、手をさしのべてくれた。

でも、美紀は死んでしまい、僕の希望は、絶望に変わった。


それは突然だった。美紀は僕の元へと戻ってきてくれたのだ。夢の中だけど、はっきりと美紀の温もりを感じる。僕が眠りにつけば、必ず美紀は僕の元へ来てくれた。

僕の希望が、戻ってきたのだ。

「美紀、これからもずっと一緒だよ」

僕がそう答えると

「ええ、ずっと一緒よ」

と言ってくれる。

夢の世界では、僕たちは永遠だった。



ピピピッピピピッ!!

目覚まし時計の音で、目が醒める。

どこにも美紀の姿はない……

「はぁ……」

俺は、深いため息をはいた。夢から現実に戻る、この瞬間が一番辛い。

ドンドンッドンッ!!

誰かが、僕の部屋をノックする音が聞こえた。多分、明日香だろう。

「ひろ〜、起きてる〜」

ほらな!明日香だ。

僕は、家が火事でなくなってから、僕が小さい頃から、お世話になっていた櫻井家にやっかいになっている。

家が火事になり、どうしていいか分からなくなって街をさまよっていた僕に、櫻井家のおじさんとおばさんは

「なにも言わずに、家に来い」

と言ってくれた。

僕もその言葉に甘えて、おじさんの家で暮らすことにした。

明日香は、おじさん達の娘で僕とは小さい頃に、よく遊んだなかだった。明日香は、僕が家に来ることを喜んでくれた。

てっきり反対されると思っていたから、正直嬉しかったのをよく覚えている。

そんな事を考えていたら、明日香が部屋に入ってきた。

「もぉ起きてるなら返事くらいしてよ!」

「悪い。」

「まだ、忘れられないの?」

明日香がなにを言いたいかは分かる。美紀の事だろう。

「なんの事だよ」

僕は答えずに返事をはぐらかした。

僕が答えたくないのが分かったのか、明日香はそれいじょう、追求してこなかった。



朝六時、私は目をさます。習慣とは凄いもので、私は目覚まし時計に頼らなくてもこの時間帯に自然に目がさめる。

とりあえず着替えて、キッチンで朝御飯の用意をしているお母さんの手伝いをする。

時計を見ると、そろそろ七時を回ろうとしていた。

「そろそろおこしに行くか!」

二階でまだ寝ている、裕隆をおこしに行く。ひろの部屋の前まで来ると、私は大きく深呼吸をする。

「ふぅ〜」

毎日、ひろをお越してるけど、やっぱり緊張する。

気持ちが落ち着くと、ドアをノックする。

「ひろ〜、起きてる〜」

返事はない。まだ寝てるのかな?仕方ない、起こしにいきますか!ドアを開けて見ると、ひろはもう起きていた。

ひろは、あの時と同じ、美紀さんが死んだ時と同じ顔をしている。私の嫌いな顔だ。人生に絶望してるかのような顔。

だから私は、少しでもひろが元気になるよう笑顔で、ひろに

「もう起きてるなら、返事くらいしてよ!」と言う。

ひろは

「悪い。」

って私に謝る。ひろはいつも、朝は暗い。私にはその理由が分からないし、教えてもくれない。

私にちょっとぐらい頼りにしてくれたっていいのに……

私には、思い当たるふしがあった。でも、言えない。言うのが怖かった。だって、もし私が言ってしまったら、ひろとの関係が崩れてしまいそうだから。

でも、それじゃ前に進めないよね。

だから私は思いきって聞くことにした。

「まだ、忘れられないの?」

でもひろは

「何の事だよ?」

ひろは答えてくれなかった。やっぱり私は、ひろの中じゃ少しも頼りにされてないんだね。そう思うと涙がでそうになった。

だから

「私、先にいっとくね。寝ちゃだめだよ!」

そう言って部屋をでた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ