↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mother's Diary  作者: A. Mother
PR
2/2

Week 2

【某月某日】


君が家から姿を消して、私の生きる気力も消えているはずなのに、

それでも毎朝、当たり前のように目覚めてしまうことが腹立たしいよ。


今でも、この家のあちこちで君の気配を感じるよ。

君の部屋から、君の寝息が聞こえるし、寝返りや咳払いした瞬間を感じる。

「腹減った。晩飯なに?」と言って、食卓の椅子に座る君の姿が見えそうな気がする。

最後に、一緒に食事をしたのはいつだったかな?何を食べたんだったかな?

その時、私はそれが二人の最後の晩餐になるとは気付かずに、それまで同様、君に対して諸々の苦言を呈していたんだろうね。

最後に、二人が笑顔で食卓を挟んだ時は、さらに遡るんだろうね。

我が家の経済力を考慮しながら、毎日の献立を考えていた頃は、そんな日々から開放されることを夢見ていたけど、実際に開放された今は、ただただ虚しいだけなんだね。


最後に、君の心からの笑顔を見たのはいつだったんだろう?

私が思い出せる笑顔の君は、なぜか少年姿だよ。

以来、君の笑顔を見ていなかったということなのかな。

私を内側から温めてくれた君の笑顔を、もう見ることはできないのかな。

私は、とても幸せだったんだね。そして、もうその時には戻れないんだね。



【某月某日】


昨夜、とても久しぶりにお酒を飲んだよ。

君が中学生の時に、私はやけ酒を飲んで酔いつぶれてしまった事が何度かあるよね。

二人が同時に、大きな心の傷を負った頃だよ。

当時、私には困難を自力で乗り越える強さがなかった。

いつも、誰かに、何かに助けて欲しいと思ってた。

だけど、君はそんな気弱な私の姿に、さらに心を痛めていたみたいだよね。

君に「酔っ払いは嫌いだ。」と言われたんだけど、覚えてるかな?

あれ以来、アルコールはほとんど飲んでなかったんだよ。

私までが、君を悲しませるような事をしてはいけないと思って。

君は辛いことがあっても、お酒を飲める年齢じゃなかったから、じっと耐えていたんだよね。


でも、昨日は、またお酒の力を借りたくなった。

私は、たいした成長をしてないんだね。

本当に久しぶりのお酒だったから、少量でさっさと酔っちゃったよ。

あっという間に、頭の中が朦朧として、何故か声を出して笑ってた。

自分自身が、白塗りの頬に大きな涙の粒を描いたピエロに見えて笑えた。


酔っ払った勢いで、君のベッドに入ってみたんだ。

布団には、まだ君の匂いが残ってる。

それは大人の匂いなんだけど、私が思い出すのは、

両手を広げて抱きついてきてくれた、幼い頃の君の姿だった。

あの頃、君は確かに、私の事を愛してくれていたんだよね?

君が言ってくれた「ママ大好き」は疑わなくても良いんだよね?

今は、君の苛立ちの対象でしかないとしても、心から愛された時があると信じたいよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。