38話 ナイトメア
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「殺すことはできない……どうすればどうすれば……。無視? 命令を?」
どうやら事情があるようだ、とレティシアは察する。
ナイトメアは頭を抱えて呟き続けている。
「しかし、私が消滅する選択など……有り得ん。女を殺して私も逃げるしかない」
「何か事情がありそうね。安心しなさい。あたしがその悩みから解放してあげるわ」
「図に乗るなよ。女。このファンゼル様が夢の世界で負けるはずがない」
レティシアの安っぽい挑発に簡単に乗ってくるナイトメア、ファンゼル。
「使いっ走りのくせによく言うわね。この馬面野郎。」
背後から悪魔の気配が消える。ニャルがレッサーデーモンを倒したのだ。
そしてレティシアの隣にやってくるニャル。
「ご苦労様、ニャル。一斉に仕掛けるわよ」
「了解にゃ!」
【光の精霊よ。この闇を打ち払う光の力を我に。今こそ、その暗黒を打ち消す刻なのにゃ……光霊烈光】
精霊術の詠唱を聞いて、ファンゼルの姿が掻き消える。
夢を操る悪魔だけあって、この世界では何でもできるはずだ。
その時、レティシアの中で微かな違和感が生まれる。
「夢の中はナイトメアの世界ですって?」
ニャルの精霊術によって強烈な光が明滅すると、ファンゼルの悲痛な絶叫が響き渡った。更には隠していた姿も露わになる。
そこを狙ってレティシアの魔術が発動した。
【天地神命】
光の槍が空中で悶えるファンゼルに向かって飛んで行く。流石に喰らう気はないのか、ファンゼルは空間に干渉すると、その光の槍は虚空へ消えた。残るは微かな光の残滓のみ。
そしてファンゼルが空中で何かすると、石畳の床から鋭い錐のようなものが出現し、レティシアとニャルを襲う。辛うじてかわすレティシア、ニャルは空中へと避難する。
「レティ姉ちゃん!」
「大丈夫ッ! ニャルはさっきの精霊術を連発してッ!」
「了解にゃ!」
ニャルを厄介な敵だと認識したファンゼルは虚空からドリル状の魔力弾を生み出すと、ニャルへ向かって解き放つ。
ニャルは器用にも全てのドリルから身をかわすと、精霊術を詠唱する。
【光の精霊よ。この闇を打ち払う光の力を我に。今こそ、その暗黒を打ち消す刻なのにゃ……光霊烈光】
再び、ファンゼルの絶叫が木霊する。
そこへ、ファンゼルの目の前に忽然と出現する光の槍。放ったのはもちろんレティシアだ。それが願った通りの挙動を取ったことで、レティシアは確信する。
「ぐるああああああ! な、な、な、何?」
そして、その困惑の混じった叫び声が収まらない内にニャルが詠唱を始めた。
「ぐううううううう……しつこいッ!」
そして三度、絶叫。
「この精霊獣がぁぁぁぁ!」
ファンゼルは、憤怒の表情でニャルを睨みつけると、詠唱を阻止すべく飛びかかる。更にニャルの四方から剣やナイフが出現した。それに囲まれたニャルは身動きが取れない。
しかし、虚空から突如出現した、その剣やナイフは、突如として消滅してしまった。
「な、何が起こっているッ!?」
ファンゼルは、ニャルに攻撃することすら忘れ、目の前で起こった現実に混乱している。
そこへ四度目の【光霊烈光】がファンゼルの精神を削る。
最早、叫ぶ力も残っていないのか、ファンゼルは困惑したまま虚ろな目をレティシアに向ける。レティシアは空中に浮かび上がると、地面で惨めに這いつくばるファンゼルを見下ろしながら言った。
「ここはあんたの世界であると同時にあたしの世界でもあるのよ」
その言葉の意味を理解したのか、ファンゼルが絶望に満ちた声を上げる。
「馬鹿な……人間風情にそんなことなどできるはずが……」
「どうやら、あたしはただの人間じゃないみたいよ? 攻撃を喰らい続けるのにも飽きたでしょ? あたしがトドメを刺してあげるわ」
夢の悪魔、ファンゼルに死の宣告を下したレティシアは虚空から『未知なる記憶』を呼び出した。レティシアは、夢の中でも『未知なる記憶』を呼び出せることに驚くと同時に、当然かとも思う。能力はレティシアの精神と繋がっていたのだ。
悪魔から素材を入手できる機会など滅多にあるものではない。
レティシアは笑みを深くすると、魂に宿る力に命じた。
「さーて、仕事をしなよ。《星々の加護》。あたしの精神を神星力で満たしなさいッ!」
レティシアの言葉に反応するかのように、神星力の密度が上がっていく。
辺りに満ちる神々しいばかりの光の奔流がファンゼルを飲み込んでゆく。
「ぐがげげぐげげげげげげ」
壊れた玩具のように意味不明な言葉を漏らすファンゼル。
ニャルはレティシアの張った神星力の結界に護られている。
「あたしの世界を奪おうとした罰よッ! 震えて眠れッ!」
その言葉が夢の世界で現実となる。
超高密度の神星力の中で溺れ死んだファンゼルが徐々に黒い塵と化していく。
レティシアは、最早、原型すら留めていない悪魔に対して言い放った。
「あたしの夢はあたしのものよ。自由にできるのはあたしだけと知りなさい」
こうして、何とかナイトメア、ファンゼルを滅ぼしたレティシアはニャルに連れられて夢の世界を脱出したのであった。覚醒してガバッと跳ね起きたレティシアの頭を衝撃が襲う。心配そうに顔を覗き込んでいたファルの頭に頭突きをかましてしまったのだ。
「つつつつ……」
「レティ姉ちゃん大丈夫ー?」
「ててて……。ああ、ニャル、助けに来てくれてありがとね」
そこへ頭をぶつけて悶絶していたファルが復活するや否や、レティシアに向かって怒鳴りつける。
「マスター! 無茶し過ぎだよー! 神星力が暴走するかと思ったよー!」
「ゴメンゴメン。気をつけるよ、ファル」
「《星々の加護》の神星力は所詮、他人である神人の力なんだよー? 精神が崩壊して神星力を生み出し続ける魔物になってたかもなんだよー?」
なおも心配の声を上げるファルに、レティシアは謝り倒して何とか許しを得ることに成功した。そして、酷使した精神の消耗による疲れからか、レティシアは朝までぐっすりと泥のように眠ったのであった。
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