37話 夢中
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「レティ姉ちゃん! 目を覚ましてー!」
薄れゆく意識の中で、聞き覚えのある声を聞いたレティシアは思わず声のする方へ顔を向けた。そこには、人化して幼い女の子の姿をした精霊獣ニャルが宙に浮かんでいた。
「ニャル……?」
事態を全く飲み込めないレティシアが戸惑っていると、ニャルの精霊力が一気に膨らむ。
「精霊獣だとッ!? 外の連中は何をしているッ!」
【おお、偉大なる精霊神よ。大気に満ちる精霊たちよ。我が精霊力をここに献じんなのにゃ。そして悪魔を打ち払う術を我に与えよなのにゃ……霊槍滅魔】
老神官が何か叫ぶ中、ニャルの精霊術が彼に肉迫する。とても老人とは思えない動きで光の槍をかわし続けるも、その槍は老神官を追尾していく。
レティシアがそれを他人事のように眺めていると、ニャルがその隣に降り立った。
「何でこんなところにグフゥッ!」
皆まで言わせず、ニャルの猫パンチがレティシアの腹部にめり込んだ。突然の激痛にレティシアは床に転がって悶絶する。
「レティ姉ちゃん! 悪魔だよー? いい加減目を覚ましてね!」
そして絶叫が響き渡る。老神官が魔術で防御しようとするも、ニャルの放った光の槍がそれを貫き、老神官に突き刺さったのだ。
その瞬間、レティシアの頭の中にかかっていた霧のようなものが晴れ、意識が覚醒する。と同時に、今までレティシアの体を満たしていた魔力も霧散していく。
ニャルは、襲い掛かってきたレティシアの両親を相手に戦い始めた。
空が晴れ渡るように意識がはっきりしたレティシアであったが、何故か両親と戦い始めたニャルを止めようと、声を張り上げる。
「ニャルッ! その二人はあたしの両親よッ! 敵じゃないわッ!」
「まだ寝ぼけてるにゃ! ここは夢の中。こいつらは悪魔なのにゃ!」
そこへ、ダメージを負った老神官が空から降りてくる。そして床に着地すると片膝をついて息を荒げている。レティシアはその顔を見て驚愕する。
「ナイトメアッ!?」
荒々しく呼吸しながら憎々し気にレティシアとニャルを睨みつける馬面をした夢の悪魔。
「うぐう……あと一歩と言うところでぇ……畜生がぁぁぁ!」
「畜生はあんたでしょうがッ! よくもあたしの心に付け込んでくれたわねッ!」
レティシアがニャルの方を見ると、両親もその本性を現したようである。ニャルは、頭に二本の角を生やし、背中に蝙蝠のような羽を持つ悪魔と壮絶な戦いを繰り広げていた。あれはレッサーデーモンである。
レティシアはすぐに精霊術を使う準備に入る。悪魔祓いには古来より精霊の力が行使されてきたのだ。悪魔には精霊術と言うのは、この世界の常識である。
【闇の精霊よ。最早、其を照らす光なし。暗黒なる世界で存分にその力を示せ! 常闇咆哮!】
撃ち出された闇の刃がナイトメアに向かって突き進んでいく。
そこへナイトメアの魔術が完成した。
【魔霊防陣】
闇の刃が防御壁に阻まれて吹き散らされるも、防御壁も耐えられずに崩壊する。
「私は逃げる。お前らは足止めしろッ!」
その言葉にレティシアは違和感を抱いた。
ここはレティシアの夢の世界のはずなのだ。夢の中では圧倒的有利なはずのナイトメアがいきなり撤退するなど考えられない。
何かあるのだ。逃がさない。レティシアは、再び精霊術を行使した。
【闇の精霊よ。最早、其を照らす光なし。暗黒なる世界で存分にその力を示せ! 常闇咆哮!】
ナイトメアに迫る闇の刃は、悪魔を捉える瞬間に虚空へと消え去った。闇の刃が消え去った辺りは空間がたわんだように波打ち、水面に落ちた水滴が起こす波紋のようになっている。やはり強い。レティシアはそう思いつつ、ニャルと連携して倒す方向に考えを切り替えた。そこへナイトメアの焦りの声が響く。
「脱出できないだとッ!? 何が起こっているッ!?」
何が起こっているのかは、レティシアにも分からなかったが、恐らくファルがニャルを夢の世界へ送り込んだ後、現実の世界で何かやったのだろう。ファルも精霊獣である。そんな力があってもおかしくはない。
脱出を諦めたのか、ナイトメアはレティシアに向き直ると、ぶつぶつと呟き出した。
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