34話 再会
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鈴の音と共に喫茶店のドアが開き、一人の男性がゆっくりと入って来た。
「いらっしゃいま……って、あー」
その顔を見たレティシアの表情が驚きからにこやかな笑みに変わる。
「おおッ!? 異世界人の方、先日はどうも。お陰で何とか生きております」
男性もレティシアの姿を見て顔を綻ばせる。
「りんかー?」
「異世界人なんかじゃありませんってば。あたしはレティシア・ナミ・フォルトゥーナ。ここで薬屋と喫茶店を営んでいる、ただの錬金術士です」
「ただの?」
「確か、ダタイ……ブレイクンさんでしたよね?」
「あッはい。ダタイとでも呼んでください」
「まぁ、お掛け下さい」
レティシアが、そう促すと、ダタイはおそるおそるといった感じでカウンターに近づくと、ヨシュアの隣の、そのまた隣の席に腰を下ろした。
「でも、どうして当店に?」
「いやぁ、懐かしい香りに引き寄せられましてね」
「香り……ですか?」
「ええ、コーヒーの香りですよ。あっちの世界ではいつも飲んでいたものです」
「あっちの世界?」
ひたすら疑問の声上げているヨシュアのことは取り敢えず無視する。
「へぇ……。異世界にもコーヒーがあるんですね」
「私からしたらこちらの世界に存在していることが驚きですよ」
「ニーベルンの近くの森に自生していたのを見つけたんです」
「よくそれをコーヒーにしようと思いましたね。やはりあなたは地球と関係があるのでは?」
「ちきゅう……ですか?」
「ええ、私が暮らしていた世界ですよ」
「へぇ……」
レティシアは、異世界のことを聞こうとするが、そうすると自ずと自分の過去や能力にも話が及ぶのではないかと警戒して言葉を切った。その代わりにコーヒーを入れ始める。
そこへ、鈴の音が鳴り、ミレーユとヴィスタインが入って来た。
「あら。いらっしゃい」
レティシアに手を挙げて挨拶を返すと、ミレーユはヨシュアの右隣に腰かける。ヴィスタインはもちろん、ミレーユの隣である。二人はヨシュアとも挨拶を交わしている。
「久しぶりにコーヒーを飲みに来たわッ!」
「それはそれは。ありがとうございます。クッキーも食べるかしら? ミレーユさん」
「んも~! さん付けなんてらしくないわね! カルナック村で共に戦った仲じゃない!」
「そ、そう……ね。じゃあ、ミレーユ。どうするの?」
「もちろん頂くわッ!」
すると、先程からずっと疑問の声を上げ続けていたヨシュアが口を開いた。
「なぁ、りんかーって何なんだ?」
「うーん。私にもよく分かりませんが、この世界と繋がりを持つ、もう一つの世界からやって来た人間と言ったところでしょうか」
「ここ以外に、人間が暮らしてる世界があるってことなのかい?」
「そうですね。もっとも、あちらには人間しかいませんけどね」
「ん? ってぇこたー、エルフとか魔物とかもいないってことか?」
「そうです。他の生物はいますけど、知的生命体は人間だけです」
レティシアがダタイの前にそっとコーヒーを置いた。
「おおッ! 久しぶりのコーヒーです。ありがたい!」
「でも、どうしてそんな世界からわざわざこっちに来たんです?」
レティシアはあまり聞き出すのも迷惑かと思いつつも、好奇心に負けて尋ねてしまう。
「私も好きで来た訳ではありません。気が付いたらこちらにいたのです」
「右も左も分からない世界で良く生きてこれたもんだなぁ」
「親切な方に出会いましてね。何とか……と言ったところです」
「でもお金は大丈夫なんですか?」
恐らくは稀少なアイテムと思われる《命晶石》を金貨五枚で売ろうとしていた程である。ダタイがお金をほとんど所持していないことは明白であった。
「しばらくは日雇い労働でもしようかと……」
「それより異世界についてもっと教えてくれよ!」
「ナニナニ、何なの? いせかいってナニ?」
好奇心の塊であるミレーユが話に喰いついた。
「おお、このおっさんがな。この世界とは違う世界から来たんだってよ」
「おっさん……確かに三十七歳ですが……おっさんとは……」
ヨシュアの何気ない一言に精神的ダメージを受けるダタイ。もちろんヨシュアには悪気など全くないのだろうが。
「異世界って何だか楽しそうな響きがするわッ! 私も行ってみたいッ!」
「ミレーユが行くなら俺も行こう」
ヴィスタインは、ミレーユのイエスマンである。彼に異論があろうはずもない。
「行くのは難しいでしょう。私も帰りたいのですが、帰り方が分からないのです」
「帰り方を探している感じですか?」
「そうですね。しかし、全く手がかりがないので困っています」
「慣れればこの世界も楽しいもんだぜ?」
レティシアは、ヨシュアのお気楽な発言に苦笑いしつつも、もしかしたらダタイ以外にも異世界人がいるかも知れないなと考えを巡らせていた。
「一体、どんな世界なのッ!? 楽しい?」
「うーん。楽しいかと言われると、どうかなと思いますが、少なくとも私は幸せでしたよ。なので今考えると、楽しかったんでしょう。地球には神星術はありませんが、その代わりに科学が発展している世界です」
「神星術がないのッ!? ってことは神様もいないってことッ!?」
「そうですね……。こちらの世界と違って神なんていませんよ。いると信じている人たちもいますけどね」
「かがくとはなんなのだ?」
ヴィスタインまで疑問を口にする。
「えーっと。説明が難しいですね……。術とは違う原理で働く技術とでも言いましょうか。凄い速度で走る鉄の箱や、空を飛ぶ機械なんかもあります。それに生物の生態や自然現象が解明されているので、何故こうしたらこうなるのか、なんて因果関係もはっきりしていて、とにかく何でも分かる世界なんですよ」
「病気も解明されているのかしら?」
「へぇ……。自然現象すらも説明できるのねッ! すごいわッ!」
「術じゃなくても空を飛べんのか……。結構、楽しそうじゃねぇか」
「きかいとはなんなのだ?」
四人の疑問と好奇心は尽きることなく、ダタイへの質問は延々と続いたのであった。
そのお陰か、ダタイはこの日、コーヒーを未だかつてない程飲むこととなった。
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