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ブリミル年代記 <深淵の影に飲み込まれた運命>  作者: a.z.bako
バルダーの使者シャーリンと輝く盾
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2. 影の中の歌: 裏切り者と未知の呼び声

(振動、音楽? 暗闇と静寂に包まれた街と相容れない音だな。

そう、これはまるで人々が戦場へ向かう前、戦意を高めるために演奏される音楽だ)


少年についていって入ったところは、ある建物の地下だった。


狭い道を前に進むほど木の床は揺れ、土が落ち、人々の話し声と音楽が木の床が揺れる音と共に混ざって聞こえて来た。


フレアは静かに聞いた。


「ここはなぜこんなにうるさいの?」


「みんな楽しんでるんだよ。今日の疲れ、明日の不安、ここに来て叫んで発散してる。まあ、よくわからないよ。大人たちがそう言ってた」


(重なり合う金属音、足元から這い上がる震え, 血の匂いがする。この叫び声はそう聞こえないですね。みんな大丈夫ですか?)


(あ、音が変わった。声?)


少年について小さな階段を上がると明るい演舞場が現れた。


そこには澄んだ海色の目で輝く白髪の痩せた老人が歌ていた。

彼の歌声は、懐かしい、それは夜空に神へ捧げるかのような天空の調べで、星々の間を漂う魔法の響きを纏っていた。一方、騒がしい人々の声は、永遠の輝きを持つ月の世界とは隔絶された、地の底の喧騒のようであった。

客席の一番前には、腕に大きな傷を持ち、険しい表情の男が椅子に座っていた。


「うん、ハハ、《リトクス》、これはいい品物だな」


席を立った男が岩のように分厚い両手を高く掲げ、打ち合わせた瞬間、雷鳴を思わせる轟音が響き渡り、同時に荒々しい突風が周囲の空間を席巻した。


(あ?)


瞬く間に大きな音を立てて私たちの周りに壁ができてしまった。


(罠?私たちが閉じ込められたの?ヘル様がいない、どこに行かれたの?バルダーの光よ、闇を照らしてください)


フレアは明るくなると周りを見回しながら剣を抜いて話した。


「あ、シャーリン、ありがとう。よくも私たちを騙したわね。こんなの、燃やしてやる!」


ローレンは床に座り込みながら話した。


「フレア、こんな狭いところでそんなことをしたら私たちはどうなるか考えてみて。考えてごらん。ああ、やっぱりこんな面倒なことになると思ったよ」


フレアは剣を下げながらためらいながら話した。


「あ、そうか。え、ローレンは知ってたの?」


ローレンは自分のカバンを探りながら話した。


「あんな奴をどうして信じられるの。ヘルがいるからどうにかなるだろうという考えだったよ」


フレアは周りを見回しながら驚いて話した。


「え、そういえばヘルは?え、スキブー?」


(音楽の音も人々の声も消えた。足音?私たちを囲んだのかな?)


「ふん、ガキと女が二人か。なかなかの掘り出し物だな。あの女の子は戦わせると良さそうだな」


(剣が襲うときのあなたの力)


「ヒヒ、《スペキ》、私の分はあの奴の剣にしてよ」


(敵はあなたに屈し)


「ハハ、小僧が多くを望むようだな。え?なんだ?」


(あなたは彼らの背を踏みつける)


「ここから私たちを出した方がいいよ」


「キツネだ!」


「ふん!捕まえろ!毛皮が高く売れるぞ」


「え、こんなはずじゃ?一人いない。一番背が高くて一番高く売れそうだったのに」


(助ける盾)


「どこだ?」


「なんてこった!リトクス!ちゃんとやれなかったな!」


(敵を追い散らし、滅ぼし尽くせ)


<ドゴォォン>


「うわっ!シャーリン、すごい。光が壁を押し出したよ。

ふん、こんなもので私たちを閉じ込めようとするなんて!スキブー!」


「ちぇっ、魔法も使えないから本当に不便だな。それより、シャーリン、ありがとう!期待はしてなかったけどな。バルダーの魔法にもこんな魔法があるんだね。面白い」


「魔法ではありません、ローレン」


「魔法?!まさか!魔法使いがいるなんて..もしや、バルダーの使者か?!あぁっ」


男が倒れた後ろにはヘルが立っていた。


フレアは倒れた者たちを見て心配そうに聞いた。


「ヘル?みんな死んだの?」


ヘルは鞘に収まった剣を見せながら話した。


「殺してはいない」


ヘルはいつの間にか《リトクス》と呼ばれる少年を捕まえてきた。


「この少年を信じたことは一度もない。

この建物に入ってからも彼らが話していることも全部聞こえていた。

あまりに浮かれすぎて、バレバレだった」


「こいつ!私たちを騙したわね!」


「おい!おい!森に行く道は本当に知ってるよ!僕も連れて行って」


「こいつ!私の剣を欲しがるなんて!」


「ふん、どうあれ森に行く裏道を教えてもらわないとね」


「ここを抜け出して道に沿って行けば、外壁が崩れた場所に出るよ。

この道は村の人たちが森に入るときに使うんだ。この場所に騎士たちが来ることはないよ」


水たまりに映る月明かりが暗い路を照らしていた。 アーチ型の狭い道は橋の下へと続き、複雑なトンネル群につながっていた。その下には底が見えない深い崖が広がっていた。


(ここに立って下を見下ろすと、アウドハル(謙遜の塔)に登った昔のことを思い出すな。風が激しく吹いていて、《リオス》たちが引き止めたけど、大切なものを探すために、私は最後まで登り切ったんだ。結局後で《フラムリ》たちに叱られたけどね)


少年は周りを見回しながら話した。


「君たちはどうして森に行くの?宝でもあるの?」


フレアは私を見ながら話した。


「うーん、詳しくは話せないけど、冒険中なんだ。

まあ、誰かを救いに行くんだよ」


「あ、つまらない。冒険?

《ヘリルベイナ》は馬鹿者だけが冒険をすると言っていたよ。

婆さんはいつも言ってたね、

若さを冒険に捧げたやつらは一様に《死の神のいけにえ》になったって。

冒険は人々をより欲深くさせ、結局冒険の果てには何も残らないって。

なぜそんなことをするの?」


フレアは少し言葉を詰まらせながら話した。


「うーん、子供の頃からの夢だったの」


「はぁ?夢?

お前は私より年上に見えるけど。

夢がご飯を食べさせてくれるわけじゃないでしょ?」


少年は腕を上げて、手首に巻かれた華やかな装飾の装身具を見せながら話した。


「これを見て。これも前に捕まえた冒険者から奪ったものだよ。

そいつは苦労して冒険して手に入れたんだろうけど、俺はこんなに簡単に手に入れたんだ」


「そ…、その冒険者はどうなったの?」


少年はぶっきらぼうな口調で話した。


「ふん、知らないよ。死んだかな?

まあ、【闘技場】でずっとうまく戦い続けていれば、騎士団に入れる者もいるけどね。

あ、もういいや。

私はここまで道を教えたから戻ってもいい?これで十分でしょ?」


フレアは驚いて話した。


「いや、そんなことになったのに戻っても大丈夫なの?」


「あ、どうせそいつもヘリルベイナの配下だよ。

あのおばあさんのところに戻れば問題ないさ。

彼女も私が未熟で問題だらけだということは知ってるよ。

いつも聞く言葉だからね。

私は自分の仕事をしたんだ、君たちが逃げ出したのは私の仕事じゃない。

あの折れた脛みたいなスペキたちが仕事をうまくできなかっただけさ。

そう言えばいいんだ。 面倒なことは大嫌いなんだよ。ここが楽でいい」


「他の村に行ってみたくはないの?」


「どうせどこも似ってるんじゃないの?

ヘリルベイナもそう言ってた。他の場所はもっと大変だって」


少年は手で一か所を指さしながら話した。


「さあ、いいでしょ?あそこから出れば森に出るはずだよ。

ふむ、あの剣が欲しかったんだけど…残念だな。ひひ」


(鐘の音?違う。この音は...)


フレアは剣を握って少年を見ながら話した。


「おい!それはだめだ!」


ローレンが話した。


「誰の勝手で行こうとしてるんだ。私たちが森に出るまで見張りをしてもらわないと」


「ちっ!けちくさいな」


その瞬間、ヘルは私たちの後ろの方を向いて弓を引きながら話した。


「誰かがこちらに来る」


少年はキラキラした目でヘルの輝く矢を見ながら興奮して話した。


「わぁ!なんだよ!君はすごいものを持ってるじゃないか!

わぁ!惜しい。あいつを捕まえていたら、これも僕のものになったのに」


ローレンが少年に話した。


「やっぱりまた嘘をついたな!

警戒はしていたけど、お前が呼んだんだろう!」


「え?何言ってるの!私も知らないよ!」


(バルダーの光よ、頭から足先まで流れ降り、彼らを包み込みたまえ)


ローレンは空を見上げながら話した。


「鳥?空からか?ヘル、早く森に行った方がいいよ」


「シャーリン?」


それは懐かしくも久しぶりに聞く声だった。

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