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ブリミル年代記 <深淵の影に飲み込まれた運命>  作者: a.z.bako
冒険者フレアと魔法の剣
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14. 銅色の伝説と昔話の書庫


「飛びたい

空高く


速く

風のように



ふむ、おもしろいね、このビドルフという魔法使い」


「フレア、面白い話を探しているわけじゃないよ」


「ふあ、うわぁ、本が飛んでる?!」


ローレンは何気ない表情をして、私が座ってる長いテーブルの反対側に座った。本はまるで羽のように軽くテーブルの上にふんわりと降り立った。


「どんな魔法なの?その魔法では人は飛べないの?」


「人は飛べないね。生きているものには使えない魔法なんだ。この魔法は、毎日毎日、本を運ぶのがあまりにも嫌でたまらなかった図書館の魔法使いが作ったんだよ。あ、あと、あまりにも重すぎるものだと上手く飛べないんだ。だから、こういう本を運ぶのに使われているんだ。それに、複雑な動きはできないからね」


私はローレンが持って来た色んな本を見ながら言った。


「久しぶりにこういう本を読むと面白いね。ローレンはどんな本を持ってきたの?」


「ふむ、私は…、【遺跡・遺物からの推論総合1157年 第2編】、

【バニルの破片発掘調査歴史 第4編】、【失われた時間と出会う遺物】、

【現在の鍵 - 忘れ去られた魔法】、【伝承魔法を通じた忘れ去られた魔法の推測】、【複雑系魔法、認識の体系の特性と展望】、【創られた神】、 【バニルの言葉】、【対称の呪文】、【第51の真実】、【消えゆく物体、消失した1エル】、【虚無と創造が交わる地点】だな」


「うわわぁ、そ、そんなに持ってきたの?」


ローレンは重そうな黒い革表紙の本を開きながら言った。


「ふむ、全部読むわげではないけどね」


私はテーブルの上に散らばっている本の一つを手に取り、ページをめくりながら言った。


「みて。これ、【ドワーフの歌集】だって。そして、これは【伝説と古い物語】だって」


「うーん、それは私も初めてこの図書館に来た時に読んだよ。ふむ、私の記憶ではその本に《黒い門》みたいな話はなかったはずだよ」


私はボロボロの緑の本を見ながら言った。


「この【ビルメイズの旅と物語り】はどう?面白い?」


「あ、その本ね。ビルメイズが世界を旅しながら聞いた話を集めたものだよ。この図書館ができたきっかけにもなった本だね。《スノーリギル》が編集したんだ。彼は旅から戻ってこなかったビルメイズが残した記録をまとめて、最初の本【ビルメイズの旅と物語り】を作ったんだ。それでこの図書館も作られたんだよ。


ふむ、それにしても仕方がないね。フレアが読める【銅色の伝説と古い物語の書庫】には、おとぎ話や物語の本しかないんだ。魔法使いでない人がここに入ったのも、フレアが初めてだよ」


「私もこんなに本がたくさんあるのは初めて、見てワクワクしたの。見て、こんな本を持ってきたんだよ。【トンボが書いた旅の本】と【世界の運行、物語編】、これも面白そう。【魔法使いのいとこ】、他も色々持ってきちゃたよ。どれも面白そうだよ。へへ、それでこんなに持ってきちゃった。うーん、何から読もうかな」


「フレア、そろそろ集中して読もう。今夜はヘルの剣が完成するから、行かないとね。ここで探す時間もそんなにないよ」


「あ、そうだね。ゴメン」


私たちが森から戻って、再び、西へ人々を送り出すための準備で魔法ギルドと商人ギルドは忙しくなった。最初、私たちがシードホートに来た時より、賑やかにんってる気がする。ヘルは帰ってからすぐ工房に行き、鍛冶屋と剣を作り始めた。私も鍛冶屋を手伝ってヘルの剣を作ったが、今日は特にやる事がなかったので、ローレンと図書館で黒い門について調べてる。


(ふふ、スキブーは今頃何してるかな)


森を出て峡谷に入ってもずっと私についてきた。結局、シードホートに戻り時まで私とずっと一緒に歩いだ。帰りはなんか凄く早かった気がする。

そして、スキブーは私たちが泊まってる食堂にシャーリンといる。


(あ、どうな剣に仕上がってるんだろう。早くみたいな)


剣の材料となる珍しい金属を見つけるのは以外と簡単だった。大きなヨツンと戦った後、私たちはさらに深く、森の奥まで入った。そこには洞窟もあったが、日が暮れてきたので休むことにした。

明るく光ってるスキブーとヘルが前に立って歩くのを見るのはなんか子供の頃読んでた物語りを見てるような気分だった。


私たちは休む為にヨツンと戦った広場に戻った。ヨツンとの戦いで倒れてた木がいつかのようにまだ大きくなってた。


『疲れるより、気分が悪くなるヨツンだった』と倒した後、ローレンは言った。


ヨツンが口から吐き出した黒い煙と私の剣から出た炎がぶつかってた。突然再び現れたローレンが手を前に伸ばすと、風の渦がヨトゥンの黒い煙を押し出し始めた。バグナの歌声はもっと高くなり、ヘルの矢がヨツンの口を通過し、その瞬間火炎の風に押し出され、大木と共に倒れた。


その時にはなかったのが、暗くなって戻ったら、スキプーの光で巨大な木と地面から黄色く輝くものが見えた。まるで、輝く花みたいだった。

花びらがゆらゆら落ちるとすぐ黒色になってた。

バグナはそれを見て新しい歌を作ってた。


「ところで、ヨツンが言っていたことは何だったんだろう?怒りに飲み込まれるだろう。すべてを怒りが蹂躙するだろう。6つの欠片…」


「ふん、最後まで口ばかりのヨツンだったよね。フレア、それより本は読んでるの?」


「あ、ごめん」


(ふむ、何から読もうかな。面白そうだから、いっぱい持ってきて選べられないな。ふん、まずはこの本から読もうかな)


私は赤くて前に絵が描いてる本を選んだ。


(おっ、これ面白そう、【3つの準備】か…)


(昔々、ある村に一人の魔法使いがいました。彼は他のどの魔法使いよりも強力な精霊と契約を結びたいと願い、あちこちを旅していました。


ある日、深い森に囲まれた小さな村で、湖に住む精霊の話を聞きました。その精霊と契約を結べた者は、これまで誰一人としていなかったというのです。


魔法使いは村の賢そうな老人に尋ねました。


「どうして誰もその精霊と契約を結べなかったんだ?」


老人は答えました。


「精霊が出す難題を、誰も解けなかったからだ」


「難題?ふん、私のそんなのはないね。よし、私がその問題を解決してみせる。そして精霊と契約を結ぶのだ!」


そう言って魔法使いは精霊の住む湖へ向かいました。


深い森の奥にある小さな湖に辿り着くと精霊が現れました。精霊は《古の王》が作った【3つの条件】を整えよと言いました。


「着てもいない、脱いでもいない服をまとい、昼でも夜でもない時に、己でも他人でもあるものを私に捧げるのだ」


「なんだ、それは簡単な問題か!」と魔法使いは思いました。


彼はすでに《聖なる衣》をまとっていたので、準備は整っていると感じました。そして、昼でも夜でもない夜明け前の時間にもう一度、湖畔へ向かいました。しかし、何を捧げるべきか考え込んでしまいました。


そこで魔法使いは水面に映った自分自身を捧げようと決めましたが、迷いの中、足を滑らせて湖に落ちてしまい、命を失ってしまいました)


(え、なに、この話…ちょっと意味分からないな。ふむ、この話は…【精霊の宝】)


(はるか昔、ある魔法使いが洞窟の奥深くに隠された精霊の宝物を探しに行きました。暗い洞窟を進んでいくと、自分以外の気配を感じた魔法使いは思わず魔法を使ってしまいました。しかし、その魔法は弾けてしまいました。


「これは、精霊の宝物を守る門番か!」


何日も何夜も戦い続けた彼の目の前に現れたのは、自分を映し出していた一枚の盾でした。


その盾の持ち主である精霊が現れ、にこにこと笑いながら言いました。


「面白い見物だったよ。ひとつだけ宝物を君にあげよう」


魔法使いはたくさんの宝物の中から、宝石がきらきら輝く王冠を選び、それを自分の頭にかぶりました。精霊はこう言いました。


「帰るとき、決して後ろを振り返ってはいけないよ。守らないと君はその場で死ぬ」


そして、姿を隠した洞窟には精霊の笑い声が残りました。


しかし、魔法使いは欲深く、もっとたくさんの宝物が欲しいと思いました。帰る途中、どうしても他の宝物が気になり、ついに後ろを振り返ってしまいました。でも何も起こりません。彼は安心し、再び洞窟の中へ戻っていきました。


すると、精霊の声が響きました。


「結局、私の言うことを守らなかったね。愚かな存在だ」


魔法使いが盾に映る自分の姿を見てみると、そこには恐ろしい怪物がいました。彼は自分が怪物になってしまったことに気づいたのです。


こうして、魔法使いは洞窟の中で宝物を守る怪物となってしまいました)


【ルンティル・アティルの伝承童話集】ですね。とても古い物語を集めた本です。私が一番好きな話は【途切れてしまった音】です」


「うわっ!」


「あ、私のことは気にしないでください。本を整理しているだけですから」


いつの間にか私の横に来ていた魔法使いは、本を飛ばしながら言った。彼はこの図書館を管理する人の一人で、さっきまで私が本を選ぶときもそばでじっと見ていた。


「ヘーニルには、闇の時代にも伝わる精霊の話が多く残っています。特にヘーニルの魔法使いたちに多大な影響を与えたと言われていますね。あ、その話もなかなか面白いですよ。【精霊の王の指輪】ですね」


(とある時代、風の精霊の中で最も偉大な《北風の王》がいました。彼はとても大切にしていた指輪を持っていましたが、ある日、一人の魔法使いがその指輪を盗んで逃げ出しました。


魔法使いは風から逃れるために、あちこちをさまよい続けました。

北風の王の怒りを避けるため、頑丈な石でできた家を建てて隠れてみましたが、風は石の壁を崩してしまいました。


次に魔法使いは高い木の上に登ってみましたが、

風はその木をも揺らし、魔法使いを追い詰めました。


それでも魔法使いは逃げ続け、今度は深い洞窟に隠れてみましたが、風は洞窟にまで入り込んで彼を見つけました。


最後に魔法使いは水の中に隠れました。しかし、北風は水を吹き飛ばし、魔法使いの隠れ場所をなくしてしまいました。


ついに魔法使いは炎で壁を作って北風を防ごうとしましたが、その炎に自ら焼かれて命を落としました。


こうして、北風の王の指輪は再び王のもとに戻ったのです)


(ある昔、荒れ果てた村がありました。病が広がり、村の人々が次々と命を落としていきました。その中、一人の幼い子供が亡くなった母親のそばで泣いていました。お腹が空いてどうしようもなく泣いていたその子供の前に、精霊が姿を現しました。


精霊は優しく声をかけましたが、何もできませんでした。


「私は契約を交わさない限り、あなたを助けることはできないんだよ。どうだい?私と契約を結ぶかい?人間の子よ」


その子供は精霊と契約を交わし、精霊の世話を受けながら立派に成長しました。彼は成長すると、世の中を旅して、あちこちで人々を助けて回りました。そして、自分と同じように一人ぼっちになってしまった人たちと共に旅を続けました。


彼は友達となった鍛冶屋に頼んで大きな剣を作りました。それから多くの恐れをもたらす怪物たちと戦いました。強大なドラゴンとも戦い、友人たちはその戦いで命を落としましたが、彼は最後まで諦めず、ついにドラゴンを倒しました。死んだ友達を後にした、彼はまた一人旅へと出かけました。


その旅は、どこまでも続いていくのでした)


「この物語の背景は、剣の時代の終わり、恐らく、800年代あたりだと考えています。へーニルでは、この話を根拠にして幼い子供を《精霊契約》に使おうとする魔法使いの家系もあるそうです。 【子供の泣き声には魔法の力がある】という《迷信》ですね」


「へーニルの魔法使いは精霊と契約するの?」


ローレンがこちらを見て言った。


「明確には私たちも分かっていないよ。本を見てそう信じている魔法使いもいるけどね。それより、いつまでここで邪魔するつもりなの、ヌイ?」


「はは、邪魔したらこめんね、ローレン。しかし、私のことは気にしないでください。 本を整理しているだけですからね」


(太陽の昇る国、深い影の奥に隠れた精霊がいました。


その精霊は他の者から見えない存在でしたが、

「自分も誰かに見られたい」

と心の中で願いました。


精霊の声を聞いた王は、自分に似せた人形を作り、その中に入るようにと精霊に話しかけました。精霊は人形に入り込むと、王を追い出し、自分が本物の王として振る舞い始めました。彼はさらに別の人形を作り、影の扉を開けて、自分の忠実な部下たちを呼び出しました。


その部下たちの名前はこうでした。


「傲慢な目」「嘘をつく舌」「無実の血を流す手」「悪だくみを考える心」「悪事を急いで行おうと走る二足」「陰謀を企てる証人の影」


人形の軍隊を率いる精霊王の前に、他の国々は次々と倒れていきました。


「この世界のすべてを作り出したのは私だ。

私こそがすべての創造主だ。私は帰ってきた。

ブリミルの大地には血があふれ、ブラインたちの骨が積み重なるだろう」


かつて王宮に仕えていた魔法使いマイルスは、こっそりと王の宝を隠すことを決意しました。マイルスは自らをネズミに変えて、王の宝を隠し、自分も姿を消しました。精霊は真の王になるために必要な王の宝を探そうと、6つの影を送り込みましたが、宝を見つけることはできませんでした。


6つの影と王の体を支えていた人形の体は、やがて時が経つにつれて崩れ始め、精霊は呪いを吐きました。


「怒りがすべてを飲み込むだろう」


精霊の呪いにより、王国は闇に覆われ、死者たちが支配する国となってしまいました)


「ん?ローレン、この話、ちょっと見て」


私はヌイと呼ばれた魔法使いに聞いた。


「動物になる魔法って存在するの?」


「残念ながら、幻覚ではなく実際に他の存在に変わることは、魔法使いが夢見る魔法の1つです」


ローレンは私がみてた本を見ながら言った。


「ヌイ、この話、どこの話か知ってる?」


「残念ながら、分かりませんね。しかし、かなり古い時代の話のようです」


ローレンは私が読んでいた本をもっとすばやく読みながら言った。


「ふむ、こんなところで見つけるとは…、この話に似ている話は他にないかな?」


私はあたりを見回しながら言った。


「うわ、それよりここにいると時間が経つのが分からないね」


「図書館は動いています。その動きを見ると時間が分かります。本棚の線が揃って、あの小さな窓が見えたら食事の時間です。そして、あの上にある窓から月の光が差し込み始めたら夜だと分かります」


その話を聞きながら上の窓を見ると、月の光が反射してすべてを照らしていた。


「もうこんな時間なの?」


「本を全部片付けてもいいですか?」


「うん、お願い。行こう、フレア」


私たちが席を立つと同時に魔法使いは本にハンコみないなもので押した。そして、本は踊るようにくるくる回りながら空を飛んで本棚に入っていた。


「わぁ、あの魔法、ローレンも使えるの?」


「いや、あれはあの魔法道具でやっているんだよ。ここの魔法使いもあれがどう動いているのかは知らないんだ。ああ、本を読んでいる時は気づかなかったけど、急に力が抜けたな。歩くのが面倒くさいな。うーん、こんな時こそ《あの門》があればすぐに行けるのにね」

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