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ブリミル年代記 <深淵の影に飲み込まれた運命>  作者: a.z.bako
冒険者フレアと魔法の剣
18/39

1. 星のように輝くものたち

挿絵(By みてみん)


剣を大きく振り回した。


「ヘル、ごめん、そっちに行ってしまった」


ヘルが自分のところに飛んできたヨツンを斬り捨てながら言った。


「フレア、相変わらず最後がずさんだ」


私はヘルを見ながら両手を合わせて言った。


「ごめん、ごめん」


「ほらー、フレアには剣が似合わないんだって」


「何? 私は剣で有名になろうと決めてるの!」


私に剣が似合わないと言うのはシードホートの工房で働く見習い鍛冶屋だ。

この男は私を見てからまもなく私の剣の腕前を見てあのように言った。

率直に言って私の剣の実力はまだ自慢できる水準ではない。

だからといってあきらめるつもりはない。


「ハハ、そうだ、フレア。

剣は捨てて金づちを持った方がいい。君には才能がある」


黒い毛で覆われて体が丸い大きな石のようなドワーフが

私を通り過ぎてヘルの方に大股で歩きながら言った。


遠くから見ると白く輝く目だけが見えて黒い綿の塊のように見える。


彼はシードホートの工房で働く鍛冶屋の一人だ。

最近、この二人は私にずっと冒険家を辞めて鍛冶屋の仕事をしろとしつこく話している。


「ふん、そう言っても、私は変えるつもりはないよ」


彼は自分の金づちで死んだヨツンの胴体を軽く叩いた。

ガラスが割れるような音がして胴体の破片が割れた。


私は作業してるドワーフに近づいて細かい手の動きを見ながら言った。


「へぇ、こうやるんだ。これで魔法の照明を作るって言ったよね?」


青い光を放つ尖った形のヨツンから出た小さな結晶のかけらを持ち上げて日光に照らしながらドワーフが言った。


「そう、こいつらは夜になると光を放つ。

その光に惑わされて近くに行ってこいつらの餌食になるからこんなに昼にこいつらを探さないといけない。しかし、こいつらは昼間は隠れていて探すのがとても面倒だ。それに、逃げるのが早いんだよ」


「あの、師匠…、こいつはどうするんでしたっけ?」


「うーん、まだ感覚がつかめてないのか?できるまで自分でやれ。

台無しにしたらそれはお前の給与から差し引くぞ!」


「えっ!師匠!」


どうしていいか分からず、結晶に手もつけられない様子を見て胸がスッとして一人で笑った。


ドワーフはヘルが倒したヨツンからも結晶のかけらを取り出して言った。


「やっぱりヘルは鋭いね。こうやって結晶に傷一つもないと私たちの仕事が減るから助かるよ。クハハハ」


現在、私たちはシードホートの魔法使いから受けた依頼で働いてっる。

私たちと言っても、ローレンは《黒い門》について調べるためにシードホートの図書館にこもっている。シャーリンは私たちが滞在しているシードホートの宿舎で仕事を手伝っている。私とヘルが主に依頼を受けてヨツンたちから様々な材料を集めてる。


私は熱い日差しが照りつける空を眺めながら言った。


「もうこんな季節になったね。はぁ、だんだん暑くなるな」


私たちは《黒い門》に関係していたギルドの依頼を達成した後、ローレンに従ってシードホートに向かうことにした。 【ローズル】方に行く船に乗る為に、【ガングラード】から【港町パルマグド】に向かった。

しかし、私たちは西へ行く船がしばらくないことを知って再びガングラードに戻った。その間はバルダーの神殿で世話になって船が再び来る時を待った。


あれだけ紆余曲折を経て乗った船だったが、ローレンは大変な思いをした。


「う~うわぁ!うっー、に、二度と船には乗りたくない…」


「ローレン、大丈夫?」


ローレンは青ざめた顔で苦しそうに言った。


「ふぅ、だめだ。フレア、はぁ、はぁ、は、ハーグビルクに着いたら、おー、起こして… うううぅー。す、スバフニール」


ローレンは自分に魔法を掛けた。

青ざめた顔は徐々に生気を取り戻して穏やかな表情で深い眠りについた。


ローズルの港町である【ハーグビルク】に到着してもローレンはすぐに起き上がれなかった。


私がローレンの鼻をくすぐったり、頬をつねったりしたが、

ローレンは起きられなく変な寝言ばかり言った。


数日後、ローレンが目を覚まして、やっと【シードホート】に向かう馬車を探しに出る事ができた。


「あはぁーー、私がそんなに長く寝たなんて」


「本当にね。私はローレンが起きないから心配したよ」


「悪いね、私のせいで時間が遅れちゃった。早くシードホートに行こう。あ、そうだ。ちょっと、その前に立ち寄る所があるんだ」


突然、ローレンはあわてて来た道を曲がって別の道に入った。


シャーリンが言った。


「あ!なんだか心がほぐれるような優しい香りがしますね」


私も目を閉じて香りを深く吸い込みながら言った。


「ふぅんー、本当だ!なに?美味しいそうな匂いだよ」


ローレンが自信がある顔で言った。


「ふっふふ、この街に来た時、偶然見つけたお店だよ。これは絶対ノーブルとトニーおじいさんも喜ぶと思うよ。だから、これは必ず買っていかないと。私たちはここで食べて行こう」


「はい、いいですね」


「私もいいよ」


ヘルは何も言わなかった。


小さなお店だったが、人でいっぱいだった。

私たちは中で食べ物を買って出て、歩きながら食べた。


「うわー、美味しい!これは何だ。 このなめらかなクリーム!

私もここを通ってへーニルに行ったけど、こんな店があるとは知らなかったよ」


柔らかいパンの中には、雲のようななめらかなクリームがいっぱい入っていた。


シャーリンも幸せそうな笑みを浮かべて言った。


「私も知りませんでした。 とてもおいしいですね」


ローレンは口いっぱいにクリームのつけたまま言った。


「私はどこに到着しても、そこにおいしいものが何があるのか探し回るんだ。 ふふ、あの時もあんなに並んでたから、『あれは絶対おいしい』と思って行ったら、正解だったよ」


しかし、すぐにローレンの顔が少し暗くなり、話を続けた。


「前に、へーニルに行く途中で食べようと思ってたくさん買ったけど、

船に乗って食べたら全部吐いちゃったよ」


昔、ハーグビルクに一人で来て、震える気持ちでへーニルに向かう船に乗ったことを思い出しながら、私は言った。


「初めてここに来た時、とても興奮して船のところまで行って待っていたの。そうしているうちに他の船を見たり、荷物を運ぶのを手伝ったりしたよ。また戻ってくるとは思わなかったけど、こうしてあなたたちと一緒に戻って来たね」


シャーリンはあたりを見回して言った。


「ここは初めて来ましたね。

アルダフォードから来た馬車は北の入り口の方に近かったです。

私はそこから下に降りて船に乗りました」


私もやっとあたりを見回しながら言った。


「あーー、そう言われたら私もこっちは初めてだ」


ローレンが言った。


「シードホートはここから西に行かなければならないから、西の入り口の方に集まっているよ。それに、アルダフォードと仲も良くないからね」


いつの間にか私たちは大きな広場に出てきた。

広場の前には、ガングラードで見慣れた建物が目の前にあった。


「え、魔法使いギルドなんだよね?」


「そう、ここにギルドがあって、倉庫も全部こっちにあるの」


周りを見回すと、馬車が荷物を積んで出発の準備をしていた。

ローレンは馬車に向かって歩きながら言った。


「ここには商人ギルドも一緒にいて、魔法使いギルドで整理した品物を商人ギルドの人たちが馬車でシードホートに運ぶんだ」


ローレンは商人ギルドの人らしき人物に近づき、話しかけた。


「私たちは4人でシードホートに行きたいのですが」


商人ギルドの人はローレンを見てから、私たちを一瞥し、微笑みながら答えた。


「はい、魔法使い一人に冒険者三人ですね。ちょうど良い馬車があります。どうぞこちらへ」


私はローレンに追いつき、静かに言った。


「ローレン、どうしてあなたが魔法使いだと分かったの?」


「商人たちは記憶力がいいんだよ。一度見たことのある魔法使いなら、

わざわざ魔法使いの帽子や《グレムニル》を見せなくても分かるんだ」


商人は一台の馬車の前で立ち止まり、私たちに言った。


「はい、ローレンさんは有名ですからね。さて、この馬車です。 冒険者の方々には、この馬車の護衛をお願いしたいと思います。もちろん、ローレンさんもお願いします」


こうして私たちは馬車に乗ってシードホートへ出発することになった。冒険家たちは馬車の護衛を頼まれる代わりに、シードホートへ行く馬車に無料で乗せてもらえるという。もちろん、魔法使いはいつも無料だそうだ。


商人のおじさんは馬車を走らせながら、私たちに話しかけた。


「これはこれは、護衛の皆さん、どうぞよろしくお願いします。私のような商人に、こんなにたくさんの方々が護衛についてくださるなんて、感謝の気持ちでいっぱいです。ハハ」


ローレンは商人を見て言った。


「おじさんは商人ギルドの人ではないみたいですね」


「はい、その通りです」


私は気になって聞いた。


「ローレン、どうしてそんなことがわかったの?」


ローレンは馬車の胴体を指差して言った。


「それは簡単だよ。ギルドの馬車にはギルドの紋様が付いているのよ」


「え、そんな商人もいるんだ」


「はい、商人ギルドは魔法使いと緊密な関係を保ちながら活動してます。

魔法使いとの関係が良くないアルダフォードは、自分たちの領地で商品を販売するための条件として、商人たちに魔法使いとの関係を断つよう求めました。それで、アルダフォードにはギルドの商人たちが入らなくなりましたね。まあ、なので、私たちみたいな独立した商人たちがそこに入って商売をしているんですけどね」


「ふむ、商人たちはどうして魔法使いとの関係を断てないの?」


ローレンが答えた。


「商人ギルドはフルナ(音を忘れた者)たちが始めたんだよ」


「フルナ?何それ?」


商人が言った。


「魔法使いになれなかった者たちです」


ローレンは外を見ながら言った。


「魔法使いが作るものの価値を見出し、それを取引する方法を考えたのが《フルナ》たちなんだ」


「じゃあ、魔法使いたちが彼らに魔法でもかけて、自分たちと契約させたの?」


商人が笑いながら言った。


「ハハハ、魔法ですか? 彼らは商人ですよ。誰と組むのが自分たちにとって利益になるか考えてみると、答えは明白です」


ローレンが言った。


「逆にね。フルナたちが魔法使いに、自分たちだけに供給するように頼んだの。魔法使いはお金に興味がないし、管理も得意じゃないから、全部フルナたちに任せることにしたんだよ」


ローレンは商人を見て言った。


「じゃあ、おじさんはなんでシードホートに行くの?」


商人は私たちに答えた。


「私はこうして商人ギルドが馬車不足の時に助ける仕事をしているんです。そして、その代わりに報酬をいただきます」


商人は意味深な笑みを浮かべて続けた。


「アルダフォードから商人たちは去りましたが、それでもアルダフォードの人々は魔法使いたちが作ったものを欲しがっているんです。私のような者は、音は聞こえませんが、匂いは敏感に嗅ぎ分けますよ」


私は気になって聞いてみた。


「何の匂い?」


商人が答えた。


「お金の匂いです」


「基本的に、質のいい物はアルダフォードでは売れませんね。私がアルダフォードで売る物は、商人ギルドで商品にならなかった物ばかりです。でも、それでもあちらでは高く売れるんですよ。ハハハ」


商人は声を潜めて言った。


「たまに【アルダフォード】の金持ちは【ハーグビルク】までこっそり来て、商人ギルドで物を買うこともあるそうです。ただし、アルダフォードの偉い人たちにバレたら大変なことになりますけどね」


いつの間にか、私は話を聞いている途中で眠ってしまった。


「フレア、起きろ!もうすぐシードホートに着くぞ!」


「えっ!びっくりした…何だよ」


私は驚いて目を覚ました。黒い毛に覆われ、白い目だけが輝いている鍛冶屋が私を見て笑っていた。


「何もしていないくせに、そんなに疲れているのか?クハハハ」


「うぅ、何だよ!私は朝からヘルに剣術を習って、依頼もこなしてるんだよ。そりゃ疲れるでしょ!」


見習いの鍛冶屋が外を見ながら叫んだ。


「おぃー、扉を開けてよ!俺たちが戻ったぞーー!」


私はまばゆい光に包まれたシードホートを見上げて言った。


「わぁー、暗くなったシードホートって、いつ見てもすばらしいな」

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