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スペアは暗い顔の長を見ながら、過去に交わした会話を思い出していた。
『赤ん坊の名前は何というんだ』
『名前はないよ』
『ない?』
『…言っとかないとね。この子はね、名前つけちゃいけないんだってさ。だから決まった名前で呼んだりしたらだめ』
『…?どうして』
『&:#+\』
『あ、本人が教えてくれるみたいよ』
(…確か…あの後すぐに夜盗の襲撃に遭った。彼らには手こずらされたが、近くの町まで移動して役人に引き渡して、そして…そうだ、名無しの理由については、すっかり聞きそびれていた)
赤ん坊は天使であるとだけ聞かされていた。それ以上の素性も過去も、聞いたことがないのだ。
だがスペアが口を開きかけたそのとき、渡り廊下にさっと影が差した。




