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ツイン・タレント  作者: Noi
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プロローグ

見直しが入りました。(不定期です)

 当時、妊婦だったメリアの出産に立ち会ったのが、サラだった。

 サラは産婦人科ではなく、脳外科の医者だ。

 赤ん坊をとりだす経験はなかったが研修員のとき一度、見学をしたことがあり、その時、お世話になった女医にいろいろ聞き込んでいたので、知識はあった。


 

 メリアとの出会いはバーだった。

 妊婦とはいっっちばん関係ない、そして居てはいけない場所に彼女はいた。

 サラがお気に入りの席に座り、酒を飲んでいるとメリアが近づいてきたのだ。

「こんばんは、隣は空いていますか?」

「・・・・・・どうぞ」

 簡単に自己紹介をして友人となった。

 メリアは美しかった。

 だからサラは彼女の顔に見とれ、大きくなっているお腹を優しく撫でている彼女を見たときは驚き、酔いが一気に醒めた。

「今ね、妊娠九ヶ月なんです」嬉しそうにメリアは言う。

「はぁ!?一番大事なときじゃない、なんでここにいるのよ」

「えへへ、私お酒がとても好きなんですけど、今はこんなんだから飲めないでしょう。だから雰囲気と匂いだけでもいいかなーって思って」

「だめ、絶対だめ。もうここ出るよ」


 

 サラはこれ以上メリアにバーの空気を吸わせないようにと、彼女の腕をつかみ店を出た。

 家に送り届けようとメリアに住所を聞いたが、家がないと言う。

 じゃあ今まで、そんな身体で、どこで寝泊まりしていたんだと問い詰めたら、ボソボソと言った。

「なに?聞こえなかったから、もう一度言って」

「知り合いの家です」

 ほとんどの知人の家に泊まり込んでしまい、もう行き場所がないそうだ。

 最後に泊まらせてもらった家では、妊娠していることで気を遣わせたくなかったらしい。

 サラの口からため息がでた。

 目の前にいる女性は美しい。

 しかし妊婦。この後一人にして、何かあれば大変なことになるだろう。

 幸運にもサラは現在ひとり暮らしだ。

「あ、あの」

 一七五センチくらいの身長をもつサラと目線をあわすために、それよりも二十センチ下のメリアは見上げていた。

 一般にいう上目遣いと彼女の美貌のダブルパンチで、女の身であるサラでさえ一瞬クラッときたが、持ちこたえた。

 これをくらったら、男どもはすぐ落ちるな、と予想がつく。

「腕、もういいですか?」少しきつく掴んでいたらしい。ごめんと言い、すぐに放した。

「あの、さ、提案があるんだけどいいかな」

「なんですか?」

「私今ね、ひとり暮らしなんだけど、ウチにこない?医者をやってて結構広いところに住んでるからどうかなって」

「お医者さん?」

「そ、あと家はセキュリティばっちりだし、私はこんな髪型と身長だから外出時はボディガードの役もできるよ。学生の時カラテを習っていたから、自分で言うのもなんだけど意外と強いし」

 

 ぎりぎり女と分かる程度の髪の長さと、着る服がメンズものが多いせいで、サラはよく男に間違われる。

 しかも訳あって伊達メガネをしていることもあり、尚更顔が見えにくいため逆ナンに遭うこともあるほど外見はパッと見、メガネが似合う青年にしか見えない。

 するとメリアが不思議そうに首を傾げながら尋ねた。

「サラさんってもしかしてオネェですか?」

「なっ!私はこれでも一応女だよ。そりゃあ、こんな服と少し低い声じゃあ男か女か分からないかもしれないけど、オネェはないでしょ」

 勤務している病院から直接バーに来たので、紺に近い色のスーツ姿だ。

 下がスカートではなくパンツだったので、余計に疑いの要素となったのかもしれない。

「まぁいいや、慣れてるし。で、返事は」

「お願いします!!」メリアは即答だった。

「オーケー、ここからなら家は遠くないからすぐ着くよ。でも辛くなったら教えて。無理は身体に悪いから」

「はい」妊娠中はあまり体調が悪くならない体質なのだろう。メリアは元気よく頷いた。

 それからは、メリアは知人の間を彷徨うことなくずっとサラの家に住み続けた。

 出産のときも、たった五年の子育ての間も。

 

 

 ただメリアは一度も、お腹の中にいる子供の父親のことは話さなかった。

 サラもあえて聞かずにいた。しかし、子供を産むのには父親となる立場の人間が必要となった。

 それはサラが根気強くメリアを説得し、自分が引き受けることによって解決した。

「サラは本当にいいの?」サラさんからサラに呼び方が変わり、父親役についてサラが承諾した後もメリアは何度も聞いてきた。

 そのたびにサラは言う。

「大丈夫だよ、もともと私には女っ気が少ないんだから。メリアだって最初私と出会ったとき男だと間違えたでしょ。服は基本男もの着ているからそのままでいいし、あとは口調と雰囲気かな。胸も平らだからバレない、バレない」

 多少は不信感を持つ者も出てくるだろう。

 だけど大抵のことを、サラは黙らせることが出来る。

 それをメリアに伝えた時、彼女はひどく怒った。

 どうして自分にそこまでしてくれるのか、危険を冒してまで守ってくれなくていい、と。

 あまり怒ることのないメリアの突然の怒りにサラは驚き、すぐさま誤解を解くため謝った。

 話し合った結果、サラとメリアとお腹の中にいる子どもは家族になった。


 そして一つ、約束を交わした。



 

 サラとバーで出会った約一か月後に、メリアは出産した。彼女の子どもは二人だった。

 左目の下に髑髏(どくろ)のような痣をもつ男の子と、全く同じ痣を右目の下にもつ女の子。

 まだ生まれたばかりなのか痣ははっきりとはしていないが、成長していくごとに色濃く肌にのこるだろう。

 医者または親として、不安はなくならない。

 これからどうしようかと悩んでいる時、一通の手紙が届いた。

 送り主不明、こちらの住所と“サラ、メリア、その子どもたちへ”とだけ書かれた手紙。

 

 

 これが後に大きな歯車になっていくことを、まだ誰も知らない。



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