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第二十六話:高橋さんの自殺未遂

 つらい。

 正直言って、仕事がつらい。

 警備員のバイト生活が懐かしい。


 だいたい、俺、エロ画像には詳しいが、ITには詳しくないんだよな。

 取引会社だけでなくプログラマーやデザイナーとか社内の人とも連絡とらなきゃいけないし、その時、やたら専門用語が飛びかうんだよなあ。


 それで、クライアントの希望を伝えて、進捗状況の確認や管理と大忙し。

 ぼんくらな俺にはかなりつらい作業だ。

 ブラック企業での土下座技など全然通用しない世界。

 勉強、勉強、勉強の連続だ。


 精も根も尽き果てそうだ。

 休みの日は仕事の勉強以外は寝てばかり。

 平日、深夜にヘトヘトで家に帰ったら、スマホが鳴った。

 高橋さんからだ。

 最近、全然会ってない。


「もしもし、佐藤ですが」

「あ、高橋です」

「ご無沙汰です。大変でしたね、お母様の件。高橋さんの体調はいかがですか」

「あ、はい。どうにか過ごしています。あのー、佐藤さんはまだ警備のバイトさんなの」

「いえ、再就職しました」

「あ、それはおめでとうございます。じゃあ、お忙しそうですね……」


 ううむ、撮影会の件だろうか。

 けど、女性からは恥ずかしいよなあ、言い出すのって。

 それに、俺も疲れているんだ。

 結局、さしさわりのない会話で終わった。


 で、翌週の金曜日。

 プライム市場の大企業へ訪問。

 そこの会社の方々と会議。

 この企業の年収は平均一千万以上。

 うらやましい。


 会議室の窓からすぐ近くにスカイツリーが見える。

 うちの会社との最大の取引相手だ。


 その会議の最中、携帯が鳴った。

 病院からだった。


 廊下に出て、内容を聞くと、高橋さんが手首の怪我で運ばれたらしい。

 どうも自殺未遂みたい。

 で、身元保証人として来てほしいと病院の事務員から言われた。


 もう会議も終了寸前だったので上司に断りを入れて、部屋を出ようとしたのだが、あわててたので机に置いてあったお茶をこぼしてしまう。

 相手の会社の方の高級そうなスーツの膝の部分を汚してしまった。


 やばい、相手は重要なクライアントなのに。

 まさか契約破棄か! 

 必殺土下座技を出すかと思っていたら、相手の大企業のさわやかイケメンさんは全然怒らなかった。


「乾けば大丈夫ですよ。気にしないで、佐藤さん」


 白い歯をキラリと光らせて笑う。

 余裕の態度。


 中小企業の社員に文句を言っても仕方がないって感じだな。

 さすがプライム市場の大企業。

 時価総額五兆円越え。


 吹けば飛ぶような俺の会社とはえらい違いやね。

 イケメンで背も高く、身体もスポーツマンタイプ。

 多分、頭もいいんだろうなあ。

 俺とは正反対だね。

 ああ、おれもこんなカッコいい男に生まれたかったなあ。


 おっと、そんなことを考えている場合ではない。

 あわてて、何度も頭を下げつつ、会議室を出てタクシーで病院へ行く。


 病院へ到着すると、手首に包帯を巻いた高橋さんがベッドで上半身を起こしたまま、しょんぼりとしていた。

 俺に気がつく。


「あ、佐藤さん。あの、本当に申し訳ありません。他に頼る人がいなくて。本来は田舎の親族に頼むべきだったんですけど」

「いえ、かまいませんよ。ただ、何でまたこんなことを」

「……」


 高橋さんが黙ってしまう。

 ようやく口を開いた。


「……自分はもう治らないし、この世から消えた方がいいんじゃないかって思って……」

「いや、そんなことないですよ。元気出してくださいよ」

「はい……」


 すっかり表情も暗く落ち込んでいる我が女神様の高橋さん。

 いったい、どこまで落ちていくんだ。


 傷自体はかなり軽いので、精神科医と面接、その結果、次の日の午後に退院となった。

 土曜日、タクシーで高橋さんの家まで付き添うことにした。 


 家まで送ると高橋さんから頼まれる。


「あの、一人で自宅に居ると不安なんで、一緒にいてくれるかしら」

「ああ、いいですよ」

「ありがとう。本当に迷惑をかけてごめんなさい」


 俺に深々と頭を下げた後、高橋さんはまた薬を飲んでいる。

 ソファに座って、視線は虚空を見ている。

 そして、ポツンと独り言のような感じで言った。


「……私、他人に迷惑しかかけないクズ女よね」


 ああ、また自虐空間に入っていく我が女神様。

 なんとか元気づける方法はないかといろいろと考えるが、いい言葉が見つからない。

 高橋さんの手首には軽く包帯が巻いてある。


「あの、傷の方はもう大丈夫なんですか」

「うん。もともとそんなに深い傷じゃないのよ。だいたい、包丁で切った後、怖くなって自分で救急車に電話したんだから、どうしようもない間抜けな女よね。本当に死にたいなら誰にも連絡取れない場所で勝ってに死ねって、佐藤さんもそう思うでしょ」


 うーん、何て答えればいいんだろうか。

「はい」だと、「お前は間抜け女」ってことになる。

「いいえ」だと、じゃあ、なんで間抜けじゃないんだって説明しなくてはならない。


 俺が悩んでいると、「以前の自殺未遂も事前に母に電話してから切ったの。要するに死にたくなかったのよね、この最低のバカ女はね」と言い出す我が女神様。


 ますます自虐空間にはまり込む高橋さん。

 まるで負の自虐スパイラルだ。

 こりゃ、何とかしないと。


「あの、高橋さん。少し、横になった方がいいのでは」

「……うん」


 ソファから立ち上がり、ベッドにそのまま潜り込む。

 目をつぶっているが、どうやら寝ているわけではないようだ。

 たまに目を開けてはぼんやりとしている。


 こちらはただ漫然とソファに座っているだけ。

 ただ、時間が流れていく。

 気がつけば夕方だ。

 ちょっと、冷蔵庫を開けてみたがろくなものがない。


「あの、高橋さん、夕食とかどうするつもりなんですか」

「……あんまり食欲ないの」


 まあ、そうだろうと思いつつ、何も食べないのは身体に悪かろうと思った。


「サンドイッチとかはどうですか。何も食べないのはよくないですよ」

「……そうね」

「俺、コンビニで買ってきましょうか」

「お願いします……」


 てなわけで、近くのコンビニまでパンなどを買いに行くことにした。

 アパートから出て、道路の向かい側にあるトーテムポールを見る。


 思えばこれを撮影しつつ高橋さんを盗み撮りしたのが彼女と親しくなったきっかけだった。

 もしかして、呪いでもかかってんじゃないのか。

 盗撮の神様は盗撮の悪魔だった。


 コンビニから帰ると、高橋さんは起きていてソファに座っている。

 サンドイッチを無言で食べる高橋さん。


 俺もその隣で、適当に買ったおにぎりなんぞを食べている。

 このずーんとした空気。

 なんとかならんかなあ。

 食べ終わって、さて、なにか元気づける言葉はないかなあと俺が考えていると、ご本人様から切りだした。


「あの、聞いてほしいことがあるの」

「はい、わかりました」


 しかし、高橋さんはうつむいてなかなか話そうとしない。

 三十分くらい沈黙。

 辛抱強く待つ。

 愛は忍耐である。

 やっと話始めた。


「……就職して二年目に出会った人なの。直接の上司だったんだけどね。相手に奥さんがいるのは知ってたんだけど、好きになっちゃったの。かっこいいし、優しい人だったから。誘ってきたのは向こうだけど、私は断らず、すぐに身体の関係を持ってしまったの。けど、ある時、奥さんにバレちゃった。それで奥さんに散々罵倒されてね。けど、一番ショックだったのは、その上司が酔っぱらって電話を私の家にかけてきて、お前なんて最初から身体だけが目当てだけだったんだよ、散々お前の身体を嬲りものにして楽しかったって言われたとき」


 ひどい上司だなあ。

 女性を虐待する奴は許せんぞ。


「ただ、私も悪いと言えば悪いのよ」

「どういうことですか」

「相手に奥さんがいるのを知っていたのに付き合ってしまったから……」

「誘ってくる上司もひどくないですか」

「そうなんだけど。ただ、私はあの人に奥さんがいることを知っていたのに拒否しなかったしね。別にその時は暴力とか振るわれたわけじゃないのに。奥さんが怒るのも無理はないと思う。家に呼び出されて、延々と罵倒されてしまった。不潔な女とか言われて。何度か顔にビンタをくらったり殴られたり、もう私、怖くて震えるだけ。土下座しろって言われて、仕方なくそうしたら、顔を踏みつけられちゃった」

「なんか、えらく気性の激しい女性ですね」

「うん。けど、まあ、それはなんとか耐えられたんだけど。あんたは人殺しって罵倒された時はショックだった」

「人殺しってどういうことですか」

「……中絶したからかな」


 中絶か。

 なんか話がますます重くなっていくなあ。


「えっと、……避妊はしなかったんですか」

「あの人、不倫相手のことだけど、普段は優しいのにお酒を飲むと豹変するのよ。酒乱って言うのかしら。ストレスもたまっていたようでね。奥さんは資産家の娘さんで頭が上がらなかったみたい。その奥さんがお酒とタバコが大嫌いで家では禁酒禁煙だったらしいの。だから余計、家の外ではお酒を大量に飲んだりしたり。私は避妊するよう頼んだけど、あの人してくれなくて、それで拒否すると暴力ふるわれて。私、気が弱くて、殴られたりすると怖くて身体が動かなくなっちゃうの。それで、されるがままになったの」


 こんな世界遺産級の美女に暴力を振るう奴がいるなんて信じられん。

 やい、高橋さんの元上司よ、世界遺産を壊すことになるんだぞ。

 全く、世界に誇る我が日本の三友商事もしょうがない社員をかかえているなあ。

 最低でも避妊はすることと研修しとけよ、三友商事!


「なんで、すぐ別れなかったんですか」

「それが酔いがさめると急に元に戻って、私に謝るのよ、何度も。すぐに土下座したり。お詫びにいろいろとブランドバックとかブランド品の洋服とかプレゼントしてくれて。怖いから受け取って、また暴力振るわれてって、そんな関係がずるずると続いて、妊娠しちゃった。で、中絶することになったの」


 あのベッドの下にあるブランドバックは元上司が買ってくれたもんだったのか。

 あと、以前、土下座が嫌いって言ってたなあ。

 これが原因か。


「なんでバレたんですか」

「簡単なことよ。クレジットカードの明細にブランド品購入の明細が載ってたから。あの人がパソコン使ってネットで明細の確認してたら、それを奥さんが見ちゃったのよ」


 なんちゅう、アホな元上司。


「呼び出されても行く必要はなかったんじゃないですか」

「そうなんだけど、奥さんに訴えるって言われて。それに奥さん妊娠中だっていうのに心労をかけてしまったって、申し訳ないと思って謝罪にいったの」


 相手の男が悪いと思うけどなあ。

 しかし、自分が悪いと思ってしまう高橋さん。

 優しすぎる。

 しかし、もっと強気に出る必要があったのではないだろうか。


「それにあの人、中絶の費用も出してくれたしね」

「えーと、手術はうまくいったんですか」

「うん、一応ね」

「あのー、その上司から酷いことを言われたんだから、会社のハラスメント相談室とかで相談すればよかったんじゃないですか。三友商事のような大企業ならそういうことには厳しいんじゃないですか」


 俺の勤めていたブラック企業でもハラスメント防止委員会ってのが人事部にあって、俺のアホ上司も女子社員に対しては結構慎重な態度だったなあ。

 俺には股間蹴りしてきたくせに。

 つーか、ハラスメントって女に対してだけじゃないぞ、アホ上司が。

 おっと、話がそれた。


「……恥ずかしくて、相談できなかったの」


 まあ、この人、気が弱いから無理か。


「あと、まずい動画があって」

「なんですか、その動画って」

「……あの人と、ベッドで寝ている動画。無理矢理撮られたの。顔も身体も全部はっきり写ってる。それで、あの、その動画をテレビ画面に映して、それを見ながら、あの、自分で慰めろって命令されて、それも撮影されて、それから……」

「ああ、もういいですよ、言わなくて」


 しょうがねえ上司だなあ。

 三友商事! ちゃんとしろ。

 完璧なセクハラだぞ、ハラスメント対策室は何やってんだ!


 と俺が怒る資格はないんだよなあ。

 顔は写ってないとはいえ、高橋さんの恥ずかしい写真を散々撮影したんだから、同罪だ。

 しかし、エロ動画か。

 俺、エロ動画とかは全然興味がないんだよな。


「そいつは、その動画でなんか脅迫してきたんですか」

「いえ、それはないのよ。けど、多分、今も持っていると思う。私、あまりインターネットとか詳しくないんだけど、もしその動画がパソコンとかに保存されていて、コンピューターウィルスに感染して流出とかになったらと思うと、その耐えられないと言うか……」


 俺なら流出しちゃったら、それを逆手に取って、AVデビューして大金を稼ぐけどなあ。

 けど、高橋さんにそんなこと出来るわけないな。

 そんな映像がネットで流れて全世界の人が見られる状況になったらマジ自殺しちゃうよ、この人。


 確かネットの記事で見たことあるなあ。

 全裸写真と氏名から経歴まで全部知られてしまった女性の件。

 今、その女性はどうしているのだろうか。

 いまだにその事件の名前で検索すると本人の顔写真の画像が出てくるんだよな。

 何にも悪い事してないのに。

 かわいそうだぞ。

 グーグルさんはなにをしている。

 さっさと削除しろよ。


「今、その人、どうなってんですか」

「そのまま三友商事で働いていると思う。向こうからは一切連絡は無いわ。タワマンに引っ越したって噂くらいしか聞いてなかった。まさか池袋とは思わなかったけど」

「うーん、無理矢理撮影されたとしたら三友商事のセクハラ対策室とかに訴えるとかしたらどうですか。で、動画は取り返すと」

「けど、証拠品として担当者に提出とかされて、他人に中身を見られたりしたら、その恥ずかしくて……」


 そうだよなあ。

 うーん、難しいなあ。


「とりあえず、あまり悩まないほうがいいと思います」


 そう俺は言ったが、実際、高橋さんにとっては悩みの種だろうなあ。

 これも精神状態に悪影響を与えているかもしれないな。


 家に置いてあるのだろうか。

 しかし、奥さんには頭が上がらない人ってことだな。

 すると、三友商事の仕事机かロッカーの中にフラッシュメモリーとかで保存して置いてあるかもしれない。俺がトム・クルーズなら三友商事に忍び込んで回収してくるんだけどな。


「私はただ優しくしてくれればよかったんだけどなあ。お酒が入らなければいい人なんだけど。結局、最初に断らなかった私が悪いのよ」


 散々な目に遭ったのに相手を擁護するこの人はもう優しさを越えて、自らを追い込んでいるとしか思えん。


 その後、俺の顔を見て高橋さんが言った。


「……佐藤さんは私のこと殴ったりしないよね」

「そんなこと絶対しないですよ。高橋さんは俺の女神様ですよ。そんな事するわけないじゃないですか」


 高橋さんが急に黙り込んでしまう。

 そして、うつむいて呟くように言う。


「精神病のどうしようもない最低女でも女神なの……」


 ああ、また自虐発言。

 ほんと、似合わないよ、外見と。

 いや、内面とも似合わないと思う。

 もっと自信を持ってくれ、我が女神様。

 しかし、元気づけようにもいい言葉が見つからない。


「もちろんですよ、高橋さんは俺の女神様です」


 そんだけしか言えなかった。

 少し押し黙る高橋さん。


「あの、朝まで一緒にいてくれる」

「いいですよ。お薬飲んでぐっすりと眠ったほうがいいですよ。俺はソファで寝ますから」


 高橋さんがじっと俺の事を見る。


「あの、朝まで抱きしめてほしいの」


 彼女が抱きついてきた。



 気が付くと、部屋に俺一人。

 ああ、あれはやっぱり夢だったのか。

 当たり前だよなあ。

 あんな美女と俺がするわけないじゃん。


 と思っていたら、小さい机に、「コンビニへ行ってきます。シャワーはご自由にお使いください。タオルも用意しておきました」とのメモがあった。


 ああ、やっぱり夢ではなかったんだなあ。

 シャワーを浴びる。

 漫然と部屋で待つ。

 うーん、いまだに信じられん。

 高橋さんが戻って来た。


「ちょっと、ありあわせのもので朝食作るわね」  

「あ、おかまいなく」


 朝食をごちそうになった。

 ご飯と味噌汁、魚、佃煮とごく普通。

 しかし、美味しいです。

 けど、なんとなく気恥ずかしい。

 そんな雰囲気が流れている。


「ごちそうさまでした。あの、料理得意なんですね」

「そんことないわ。ありあわせでごめんなさい」


 さしさわりのない会話をしながら、どうも 昨夜のことが気になる。

 瞬殺されちゃったもんなあ。


 昨夜のことを思い出す。

 女性の身体って触っていて気持ちがいいなあ。

 それに唇も柔らかい。

 あの従妹のお姉さんを思い出してしまった。


 で、元上司が置いてったコンドームがあった。

 おっと、消費期限を確認。後二年。全然大丈夫。

 しかし、なかなか付けられない。これ、けっこう難しいですね。

 やっと装着して入れた途端出しちゃった。


 一分で発射。

 高橋さんの喘ぎ声一発で瞬殺された。

 さすが最強美女。

 情けない俺。

 おまけにそれが最後の一枚だった。


 コンビニへ買いに行くのもちとダサいのでそのまま抱き合って眠った。

 いや、高橋さんは眠ったが俺は眠れなかった。

 現実とは思えない。


 彼女が眠るまで少し会話したのだが記憶に残ってない。

 あんな美女がぎゅうっと抱きついてくるんだぞ。

 眠れるわけない。


 俺は異世界に行ったんじゃないのか。

 明日、巨大レッドドラゴンが口から出す炎で焼かれて死ぬのではないだろうか。

 いや、それでもかまわない。


 スタイル良い超美人と裸で抱き合っている。

 こんなことが俺の人生に起きるとは夢にも思わなかった。

 結局、眠れん眠れんと言いながら、朝になる寸前で眠ってしまった。


 彼女、どう思っているのだろうか。

 うーん、言っちゃえ。


「あの、昨日はすみません。あっという間に終わって」


 高橋さんはニッコリ微笑んで言った。


「朝まで抱きしめてくれたので大満足よ」


 ホンマかいな。

 実際のところ、高橋さんの方がぎゅうっと俺を抱きしめてくるんだ。

 すぐに眠ったみたいなんだが、眠りながら身体を擦りつけてくるんだよな。

 俺は人間抱き枕かって思ったほど。

 嬉しいけどさあ。


 しかし、こんなキモオタのどこがいいんだろう。

 実はもう病気が治らないので自暴自棄になってるかもしれない。

 もうどうでもいい、相手がキモオタでもいいやって感じかね。

 


 さて、自宅に帰る途中、キャッホー! 二十六才にしてついに童貞卒業だ! 

 瞬殺だったけど、一応、挿入したもんな。

 神聖童貞帝国の皇帝の座は逃したが、そんな事はどうでもいい。

 皇位継承権は他の人に譲ります。


 神聖変態帝国皇帝の地位は継続するつもりだけどな。


 そして、相手は超美人でスタイル最高の女性。

 もう思い残すことはない。

 このまま、トラックにはねられて死亡、異世界でスライムに転生して勇者に瞬殺されてもかまわない!


 と、本来なら盛り上がるとこなんだけどな。


 どうもモヤモヤする。

 中絶か。

 あんな深刻な話を聞かされたらどうも盛り下がってしまう。


『お前なんか身体が目当てだっただけだよ。散々もてあそんでお前の身体を嬲りものにして楽しかったよ』


 ひでー発言だと思う。

 とんでもない奴だ。

 しかし、こういう奴に限って出世するんだよなあ。


 避妊しないなんて信じられん。

 もっと女性を大切にしろよ。

 お前も女性から生まれたんだぞと二十四時間耐久説教をしたくなった。

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