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第二十話:高橋さんと巣鴨のとげぬき地蔵に行く

 さて、撮影も終了。

 そうすると、高橋さんからお誘いを受けた。


「ねえ、また訓練に付き合ってくれないかしら」

「病気克服の訓練ですか」

「うん、今日は地下鉄に乗ってみようと思うの。都営三田線の西巣鴨から巣鴨までの一区間だけどね」

「はい、喜んでご協力いたします」


 高橋さんが着替えるのを外で待つ。

 それにしても、今までは一区間さえ乗れなかったのか。

 辛い病気だなあ。

 マジそう思う。


 だいぶ遅いなあと思っていたら、「お待たせ!」と高橋さんが白いセーター、膝を隠すくらいの白いスカートとかわいい格好で出てきた。


 化粧はさっきの派手なのはやめて、ナチュラルな感じにしてきた。

 なんだか、顔が上気している。

 やはり十代後半くらいに見えないこともないかわいらしさ。

 しかし、脚は黒いストッキング。ありがとうございます。


 西巣鴨駅まで歩きながらちょっとした会話。


「西巣鴨って何もないわよねえ」

「まあ、隣の巣鴨へ行けばいいんじゃないですか」

「うん、だから巣鴨へ行くんだけど、ちょっと遠くて歩くのはけっこうつらいのよねえ。仕方なく歩いてたけど」


 おっと、そうだよな。

 地下鉄に乗るのも一苦労なんだっけ。


「地下鉄なんて、前は簡単に乗れたのに、病気になってから身体が震えて乗ろうとしても怖くて乗れないのよ」

「そうなんですか」

「けど、今日は大丈夫って感じ。薬も飲んでないの」

「写真に撮られて興奮して大丈夫って感じですか」

「やーねー、興奮なんて。けど、そうかも。まあ、いいや。気持ちいいのは事実だもん。今も気分がいいの」


 もう自ら変態宣言した高橋さん。

 怖い者無しって感じ。


 だらだらと十分くらい歩いて、地下鉄都営三田線西巣鴨駅へ到着。

 そのまま、例の無料券を見せてスタスタとカッコいい脚で階段を降りて行く高橋さん。

 やっぱり、つい綺麗な脚に目が行ってしまうなあ。


 俺の視線に気付いたのか、彼女が駅のホームで片足を前に出してちょっとスカートを上げてみせて膝小僧を見せる。

 色っぽく笑う高橋さん。


「今のは無料サービスよ」

「ありがとうございます」


 手を合わせるおれに笑う高橋さん。

 全く、普通の健康な人に見える。

 普通の健康な人が、わざわざスカートを上げて脚を男に見せつける変態行為が普通かどうかは議論の余地がありますが。


「前はホームに立って地下鉄を待つだけで気分が悪くなったの」

「今はどうですか」

「全然、大丈夫。むしろ爽快な気分」


 すぐに巣鴨行きの電車が来た。

 平日の昼間なので乗客はあまり多くない。

 スッと地下鉄に乗る高橋さん。

 俺も彼女の後に乗る。


「気分はどうですか」

「全然オッケーよ」


 気分よさそうな高橋さん。

 あっという間に巣鴨に到着。

 電車から降りるとホームで嬉しそうに俺に振り返る。


「もう全然怖くないし、少しも気分悪くなかった。私、治ったのかな」

「いや、もう全く普通の人ですよ。いや、普通の人じゃないな。超美人ですから」 

「やだー、こんな大勢の人がいるところでそんなこと言わないでよ」

「あ、すみません。けど事実なので」

「そう、ありがとう……」


 ちょっとはにかんだ表情もかわいいな。

 やっぱり高橋さんは清楚系美人だな。

 さっき、オナニー発言した人と同一人物とは思えん。


「さて、では西巣鴨に戻りますか」

「いや、どっかカフェでも行きましょうよ」


 おお、これは二度目のデートと言っていいんでないかい。

 俺ははっきり言って嬉しいぞ。


「そうだ、その前にとげぬき地蔵へ行かない」


 とげぬき地蔵と言えばおじいちゃんおばあちゃんの原宿と言われている場所にあるお寺だな。

 たまにテレビでも放映されたりする場所だ。

 自宅から歩いて行ける距離にあるのだが、爺さんになったら行けばいいと一度も行ったことがなかった。


「行きましょう、行きましょう」

 俺も盛り上がる。


「あ、ちょっと、トイレに行くから待ってて」


 また薬の副作用か。

 まあ、仕方がない。

 それにしても、高橋さん全然元気じゃないか。

 マジ、もう病気治ったんじゃないの。


 巣鴨駅からとげぬき地蔵商店街を目指す。

 すっかり機嫌よさそうな高橋さん。

 実際行ってみると本当にお爺さんお婆さんが多い。

 ウィンドウショッピングしながら歩くが、当然若者向けの商品は少ない。


 とげぬき地蔵に到着。

 洗い観音って小さい像があって、治したい病気の部分に水をかけるようだ。

 高橋さんは頭にかけていた。


 本堂に入ってお賽銭を投げる。

 高橋さんは長々と拝んでいた。


「やっぱり病気が治るよう拝んでいたんですか」

「うん」


 彼女はちょっと真面目な顔に戻っている。

 ネットで見たけど、治ったと思っても再発することは頻繁にあるようだからなあ。


「このまま、まっすぐ歩けば都電の庚申塚駅があるじゃない。確かそこにカフェがあるはず」

「じゃあ、そこまで歩きますか」


 高橋さんはスタスタと歩く。

 彼女は全然元気そうだ。

 本当に治ったんじゃないのかな。

 庚申塚駅に隣接しているカフェに入る。


「おはぎと焼きそばのセットってのがありますね。それにしましょうか」

「うん、私、蕎麦好きなんでそれでかまわないわ」


 高橋さんは蕎麦好き、メモ、メモと。


「佐藤さんはこれからどうするつもりなの。ずっと警備員のバイト続けるつもりじゃないんでしょ」

「今、転職サイトで探しているんですが、なかなかいいのが見つからなくて。やっぱりなるべく給料が高い職場がいいですからね。その方が高橋さんの美しい脚をたくさん撮影できますので」

「やだー! って変態のお前に言われたくないよって感じかしら」


 ころころと笑う高橋さん。

 うーん、かわいすぎ。


 そのまま都電で、庚申塚駅から西ヶ原四丁目駅まで乗った。

 経由駅は一つだけ。

 前回はすごく緊張していた高橋さんが全く平気な顔で乗車。

 五分で到着。


「もう全く大丈夫じゃないですか」

「うん、佐藤さん、今日も本当にありがとうございました」


 駅で別れるとき、「またデートしましょうね」と言って高橋さんが手を振ってくれた。


 ウヒョー! 俺は嬉しいぞ!

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