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プロローグ

 宇宙を席巻する帝国の大艦隊。


 星から星へと略奪を繰り返す、名うての宇宙海賊。


 自由を掲げて帝国へ牙を剥く、反乱軍の名将たち。


 辺境から瞬く間に勢力を広げた覇王と、その精鋭。


 どいつもこいつも、星の海にその名を轟かせた連中だ。


 一声かければ艦隊が動き。


 一度睨めば、ひとつの星が黙り。


 その旗を見ただけで、商船が航路を変える。


 そんな連中を相手に、たった一隻の船で乗り込んでは、散々に引っかき回して帰ってくる男がいた。


 帝国の封鎖艦隊を出し抜き。


 宇宙海賊の宝物庫へ忍び込み。


 反乱軍の名将と酒を酌み交わし。


 覇王から直々に差し出された地位を、笑いながら断った。


 ある時は、失われた星の財宝を見つけ出し。


 ある時は、誰も帰ってこなかった暗礁宙域を突破し。


 またある時は、沈みゆく船へたった一人で乗り込み、取り残された人々を連れ帰った。


 金のためなら、危険な遺跡へも潜る。


 宝のためなら、軍艦にだって喧嘩を売る。


 けれど、泣いている者を見つけると、儲けにならない仕事まで引き受ける。


 帝国は、その男を指名手配した。


 海賊たちは、いつか自分たちの仲間へ引き入れようとした。


 反乱軍は、旗印になってくれと頼み込んだ。


 覇王は、自分の隣へ立つ資格があると認めた。


 それでも男は、どこの国にも属さなかった。


 誰の旗も掲げず。


 誰の命令にも従わず。


 自分の船と、自分の仲間と、自分で選んだ航路だけを信じて、星の海を渡り続けた。


 ある者は、宇宙一の盗人と呼んだ。


 ある者は、最悪の無法者と罵った。


 ある者は、命知らずの大馬鹿者だと笑った。


 けれど、救われた者たちは、こう呼んだ。


 星の海に帆を上げ。


 誰も知らない航路を駆け。


 誰にも奪えない宝を探し続ける――宇宙一の伊達男。


 誰だって?


 そいつの名は――


 キャプテン・ガイ。


 これは、そんな男の物語だ。


 宇宙中に名を轟かせるまでの。


 数えきれない仲間と出会い、数えきれない敵を作り、誰も見たことのない星へたどり着くまでの物語。


 もっとも。


 最初から、キャプテンだったわけじゃない。


 船もなかった。


 仲間もいなかった。


 腰に下げる銃も、胸を張って名乗れる仕事もなかった。


 それどころか――


 彼にはかつて、名前すらなかった。

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