08
二章ラストです。
体も快復した俺はレアの為に、クーリユ公爵家で働くことを選んだ。
反対の声も多かったようだが、そこはレアの一声でなんとかなったようだ。
そして王都にある邸へやってきて少しした頃。
いつもレアの後ろにいたニーナという侍女が死んだ。
こいつも他の騎士や侍女と同じように、俺に対して嫌悪を込めた目をしていた。
他の奴らと同じただのヒトだ。
だが、レアの役に立っていた女だ。
「良かったのか?」
ニーナの遺体を処理した後、レアに尋ねると彼女は首を傾げた。
「ニーナはレアの目的に必要だったんだろう? それなのに処理してよかったのか?」
「あぁ、そのことですね。ニーナはとても良い子でしたよ」
そう言って微笑むと紙の束を手に取る。
「ですけれど、必要な事柄は全部こうして書き残してくれましたからね。そうなると残念ですが」
「そうか」
レアの綺麗な瞳に悲しみの涙が浮かぶ。
「悲しいですが、しょうがないことなのです。ニーナはこことは違う世界を知っている子です。きっと私の目指す平和を彼らのように否定するでしょうから」
時々、レアは難しいことを言う。
「俺はレアを否定することはしない」
「えぇ、わかっていますよザジ。あなたは毒されていないですからね。ザジは私の目指す平和の理解者ですもの」
「そう言ってもらえると嬉しい」
「ふふっ、あなたは正直で好ましいです」
レアの手が俺の頬をなぞる。
レアが笑っている姿を見ると胸がざわめく。
その笑みが俺に向けられていると胸が暖かくなる。
レアに触れられると、病気なのかと不安になるほど顔が熱くなる。
全部初めての感覚。どれもレアにだけ引き起こされる感覚。
嫌ではない。
むしろもっと笑って欲しい。もっと触れて欲しい、と求めてしまう。
「それにニーナは死んでも、私の為に尽くしてくれるのですよ。彼女の死因は毒殺です」
その毒を仕込んだのは俺だ。ニーナとの打ち合わせ前に仕込むようレアから頼まれたのだ。
「もちろん茶葉の方に毒薬は仕込んであるので、本来の狙いは私、レア・クーリエだったと誰もが思うでしょうね」
「?」
狙いはニーナだったはずだ。俺はレアに死んでほしいとは思わない。
「ふふっ、そう悲しそうな顔をしないで。真相を知らない人々はそう考えるだろう、ということですよ。私の命を狙う何者か、もしくは組織が存在するという不安をお父様たちに植え付ければいいのです」
「もし本当にそんな奴らがいるのなら必ず守る」
「ありがとうザジ。信頼していますよ。この先本当にザジに守ってもらうことになりますよ」
「けど難しい。執事長やレアの父親は俺がレアのそばにいることを嫌っている」
「それも大丈夫です。今回の件で公爵邸に暗殺者が忍び込んだ可能性をお父様たちは心配するわ。そこでお父様は人よりも五感が優れ、身体能力も優れているザジを思い出します」
「俺が」
「えぇ、それに、あまり言いたくはないけれど、許しがたいけれど、お父様たちはザジの命を軽んじている。そんなザジだからこそ私の護衛兼毒見役として最適だと考える」
つまり俺がレアの傍にいられるということか。
「今回は私の自作自演だったけれど、きっとこの先私を否定しようとする人たちが出てくるわ」
レアの細い指先が俺の手を包み込む。
「あなたがこれからは守ってくれるのよねザジ」
レアの手をとり、俺の胸に当てる。
「あぁ、もちろんだ。俺の命はレアの物だ」
レアを護りたい。
レアの傍にいたい。
レア。
その名の響きを口にするたび。
その名を考えるたび。
身体中の血が沸き立つ。
レア。
そうだ。いつか君の描く平和な世界が誕生したら教えて欲しい。
この俺の感情は何というのだろうか。
読んでいただきありがとうございます
アドマイヤズームを応援していたので残念です。明日はどの子を応援しましょうか。
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