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ある日、俺は死後の世界で君を知った  作者: 為世 斐文


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第16話「犬猿の共存」

“女性”と“彼女”が混ざってましたね……。時間があるときに直します。

 シャワーを出た俺たちは部屋で会議をすることにした。

「とにかく、今日からは二人で行動する」

「はい……」

 彼女は終始目を斜めに、無表情のままでいる。

「まあ……面倒くさいけど、別々で暮らそうとして苛立ちあうのが一番面倒だと思うから、仕方ないことだって割り切るしかないよ」

「はい……」

 それしか言わない。

 困ったなー……

「仕事はどうしたらいいですか……」

 仕事か……

「お金に余裕は?」

「あります……」

 お金に余裕あり……

「二人でいないといけないのに、それを見られたくは?」

「ないです」

 がばっと体を上げた。好きな人でもいるのだろう。

 好きな人がいるんなら辞めるってのは難しいだろうしな……

「やめる気は」

「できません」

 できません……か。まあ、金に困ることになるしな

「夜船さんは……いいんですか?」

「なにが?」

「これから二人きりでずっと行動することになるんですよ……?」

「べつにどうだっていい」

 そういうと彼女は勢いをなくして、何か言いかけた口を閉ざした。

 俺だって嫌ではある。この人とずっと一緒に居なければいけないなんて制約、普通に考えたら壊したい。だけど、今回は場合が場合だ。

 正直、現実を疑うがそこで停滞しては何も始まらない。

 いち早く抜け出すために、俺たちは奮闘しなければいけないのだ。

「ちょっとだけ質問です……」

「なに」

「トイレって……どうするんですか」

 あー……

 その生理現象を忘れていた。

 確かに、シャワーくらいなら別に問題はない。隣同士で隔離されているだけでそんなに離れることはないからだ。

 でもトイレは小部屋一つだ。つまりどちらかが入っているときに、外で待っていなければいけないことになる。それも近くでだ。

「近場に公共施設のトイレはないですよ……そこまで歩くんですか」

 仕方ないだろう……

「外で待っている方は、イヤホンでもして待っていればいいんじゃない」

「い、嫌です……!」

「もう仕方ないだろ。これくらいしか方法はない」

「それでもです!」

「わがまま言うな」

「だって仕方ないじゃないですか!」

「じゃあ、八重代さんの言う通り、なん十分もかけてトイレまで行くのか?」

「それは……」

 彼女は頭に手を置いて、膝に顔をうずめた。

「仕方ないだろ。こればかしは」

 黙り込んでしまったようだ。

 はぁ……

「じゃあせめて、どのくらいまで離れられるのか検証するからそこで座っとけ」

 そう言い残して部屋から出た。

「それくらい我慢しろよな……」

 愚痴をこぼしながら歩いていると、途中で後ろに引っ張られた。

 後ろには下を向いたままの彼女がいた。

「どうだった」

「……二部屋分くらい」

 不貞腐れたような声を上げて、前で手を組んだ。

「二部屋分、か……」

 突っ立っているだけの彼女を無視して部屋に戻ろうとすると、彼女が俺の腕を取った。

「なに?」

「トイレ……行きたいです」

「じゃあイヤホン取ってくるから」

「……はい」

 もじもじとして、赤い顔を上げた彼女は両手で顔を隠しながら歩き出した。

 いつもそうやってかわいくしてくれればいいんだけどな……

 なんて言葉を思い浮かべながら、俺もそのあとを追って部屋に戻った。


 彼女が部屋にいるというのは実に厄介である。

「私はドラマが見たいんです」

「さっき交代制だって言っただろ」

「でも、今の時間帯にあるドラマがあるんです」

「いつもは仕事行ってて追えてないだろ」

「サブスクで追ってます」

「それならそっちで見ろよ」

 こんな感じで、彼女のしたいことと俺のしたいことがぶつかりあうと、どっちみに喧嘩が起こる。

 これじゃあまるで趣味の合わないカップルみたいだな……

 彼女は頬を膨らませ、俺を一発殴ってから部屋の隅で座った。

 めんどくさい……

「使うぞ?」

 そういっても知らんぷりして黙り込む。

 もういいや……

 俺も無視してテレビの電源を付けた。

 いつも通り、何ら変わりない世界の不思議な現象を解説する動画、アニマル動画、心霊系、ゲーム実況、楽器演奏、曲、作曲ライブ。それらを見ていると、彼女が隣に座った。

「なに、まだ三十分残ってるけど?」

 そういうと、彼女はまだ黙ってただ横に座ったまま微動だにしない。

 早く変われといいたいのだろうか。それとも、気まぐれに見ようとでも思ったのか。

「死ぬって言ってる割には、普通に動画見るんですね」

「そんなもんだろ。人生のゴールを自殺にしてるだけで、他はなんら変わりない」

「そうですか」

 いちゃもんつけに来ただけかよ

 だが彼女はそのまま隣で、黙って動画を眺めていた。

 何がしたいんだか……

 ずっと隣に座っているもんだから、俺は途中で折れて場所を変わった。

 彼女はそれを横目に見ながらも、すぐにサブスクを開いていた。

 ギター弾いたら流石に怒るか……

 俺もそこまで鬼じゃない。この後も二人で過ごさないといけないのであれば、ここでむやみに彼女を怒らすのも違うだろう。

 仕方ない……

 自分のパソコンを開き、イヤホンを刺して、小さい音量で小さい画面で動画の続きを見た。

 面白い部分で不意に笑みをこぼしたときだった。

 気づけば隣に彼女がいた。

「なに? もう使わないの?」

 彼女はまた黙ってただ隣に座っている。

 んー……

「言ってくれないと分かんないんだけど?」

 動画を一時停止させると、彼女は再生ボタンを押して音量を上げた。

 ばかやろ……!

 音量はイヤホンを外していても聞こえるくらいの音量になっていた。

「嫌がらせしたいのも分かるけど、やりすぎだろ!」

 怒鳴ると彼女は不服そうな顔でイヤホンを抜いた。

「無視すんな?」

 彼女の顔を覗き込むように見ると、彼女は俺の見ていた動画にしか目を動かさなかった。

 なんなんだよ……

「おい。一言くらい謝れ。仮にもこれから過ごさなきゃいけない相手だぞ。互いの機嫌を悪くしてどうすんだよ」

「うるさい……」

 そう言って彼女はパソコンの音量を上げた。

 こいつっ……!

 パソコンを閉じて、彼女の肩を持った。

「お前、そろそろ怒るぞ?」

 それでも彼女は黙っている。

 あーもう!!

「お前な!」

 そう大声を出すと、彼女は唇を震わせて涙を流し始めた。

 な、なんだ……?

 雫がぽろぽろと床に落ちる。

 彼女の静かに鼻を啜る音が頭に痛いほど入ってくる。

 その顔を見ていると、どんどん体が熱くなってくる。

 怒りじゃない。別の感情だ。

 体が勝手に動き始める。今ままで動いていなかったのに、勝手に俺の体が動く。

 やめろ……!

 そう言っても、俺の体は止まらなかった。

 俺の手は、彼女の涙を拭い始めた。

 何してんだよ……!!

 動かせない体にイラつく。

「ごめんなさい……」

 彼女はぽつりと謝った。

 俺の手を掴み、自分の服で涙を拭い、またテレビの方へと引き換えしていった。

 その時、俺の体がやっと自由に戻った。

 はぁー……

 濡れた手を服で拭い、またイヤホンを付けてパソコンを開いた。

 今は何も喋りたくない。顔も見たくなければ声も聞きたくない。

 さっきよりも大きい音量で、動画を流した。


 しばらくして辺りが暗くなってきた。

 彼女はあの後からずっと横になって寝ている。その顔はどこか儚くて痛々しい顔だ。

 腹空いたけど、起こすのもな……

 そう考えた俺も、次第に目を閉じていた。


「起きてください……!」

 誰かに体を揺さぶられて目が覚めた。

 ん……?

 どうやら俺を起こしたのは寝ていたはずの彼女だった。

 何時になったんだ……

 寝ぼけた体でスマホを見ると、もう既に九時を回っていた。

「もう……私お腹が空いて倒れそうです。なんで寝てられるんですか……」

 そう愚痴を入れられた俺の脳は、一瞬にして起き上がった。

「それはこっちのセリフだ」

「はい? もう、早くコンビニ行きましょう。怒ってても食べれない時間が増えるだけです」

 色々と怒りたい要素が多いことにつまずきながらも、俺もお腹は空いているしさっさと支度を済ませた。

「そういえば……夜船さん。お金の問題についてお話をしたいんですけど」

「……なに」

 コンビニに向かう道中、彼女が話しかけてきた。

 正直、今度は俺が無口で居たくなる。あんなけ面倒を押し付けてきた上に、全て飲み込んでやった結果が怒られるなんて、傲慢極まりない。

 まあ言いたいことはお金がない俺と、お金がある八重代さん、俺にお金を恵むのかどうかって話だろうな……

 彼女が説明を始める前に、俺は杭を打っておくことにした。

「金ならいらない。餓死の場合のこの体の変化も試せそうだし」

 きっぱりとそういうと、彼女はまんざらでもない表情で頷いた。

 つまり、最初から貸すのではなく、貸したくないですよの表れだったということだ。

 いちいち鼻につく……

 結局俺はおにぎり一つ。彼女は二個のパンと野菜を買って帰った。

「あげませんからね」

「いらん」

 本当に嫌な奴だ。

 この後の暮らしに絶望を描きながら、俺はまた眠りについた。

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