FIRST
何かを求める男の旅が 今 はじまる
朝が来た。また一日が始まる。
俺は何を求めて生きているのだろうか。
:「FIRST」
頭の中に声が聞こえた。いや幻聴だろう。
極限状態下にここ数日置かれていたためそうなってしまったのだろう。
ここはファグニット監獄、、、世界で最も厳しい監獄だ。一日一食、しかもくそ不味い最悪な施設だ。
俺がここにいる理由は俺にもわからない。入る前に基本的な生活方法以外の記憶を奪われてしまうからだ。
この監獄は必ず出ることはできるが、出ても記憶を持たない俺たちは、誰にも相手されず自ら死を選ぶほかない。そのため懲役が寿命であってタイムリミットだ。死のうとしても無駄だ。どんな方法でもこの女神が作った聖域では死ねない。死のうとしても苦しむだけだ。
ここでは生きることが罰なんだ。
そう理解した。
今日は5日目の朝、これからあと何年続くのだろうか。下手すればあと80年くらいあるかもしれない。今更ながら置かれている状況を整理すると我慢できなかった。
「なんて糞みたいなルールだ」
気づけば小さくつぶやいていた。か細く何の力も感じない俺の声は灰色だった。
?
そう灰色だったのである
何なんだこれ。
目の前には先ほど言った言葉が宙に浮かんでいる。それは今にも消えそうな灰色の煙のようだった。
何も考えずそれに触れてみる。すると本当の煙のように掻き消えた。
昨日まではこんなこと起きなかったのに、、、
心の奥底にかすかで薄っぺらな希望が少し芽吹いた気がした。
俺はもう一言つぶやいた。ほんの少しの期待を込めて
「あ」
その言葉はさっきよりも少し大きく、薄い黄色をしていた。
それに「あ」は触れることができた。
水のようだった。触れると落ちた。しかし、水たまりとなって残った。
俺は目を輝かせた。記憶を失い、ここ4日間の退屈な思い出しかない俺は、気づけば涙を流していた。そしてこう言った。
「面白い」
その言葉は七色に輝き、この寂しい独房を温かく包むように照らし、その光景はこの世の言葉では言い表せないくらいに美しかった、そして、俺の心を眩いくらいに光らせた。
轟々とした光に誘われ、触れてみると、とても温かく硬かった。
そして、それは持つことができた。持ってみて分かったが文字同士繋がっていて離すことはできなさそうだった。
これは一体全体何なのだろうか、、、見当もつかず、しばらく考え込み、3つの仮説を立てた。
1,俺の幻覚
2,俺に何らかの能力がある
3,もともとこんな世界だった
しかし1はこの触れている質感、感触からして違うだろう。2と3の場合なら何か条件があるはずだ。
そうでないと昨日まで起きなかった説明がつかない。
俺は非常にワクワクしていた。もしかしたらこういうわからないことを追及したり、実験したりするのが好きだったのかもしれない。
なんにせよ試してみないと始まらない。そう思い、まずはできるだけ言葉を出してみる。
「孤独、地獄、罰、死にたい、女神、お前のせいだ、くそやろー、返せー、俺の人生ー」
ほとんど恨み言になってしまったが本心なので仕方がない。
出てきた文字を観察すると、最初のほうこそ小さく青っぽい灰色だが、後半になるにつれ、赤く染まっていき、大きさもだんだんでかくなっている。
これから察するに感情で色、声量で大きさが変わっていると仮設を立てる。そして実験を繰り返す。
まずは大きさだ。
「あ あ あ あ」
少しづつ声量を上げながら声を出す。すると見える文字もだんだん大きくなっていく。
こちらの仮説は正しかったようだ。
次に感情を
「楽しい、悲しい、好き、嫌い」
できる限り感情をこめて、同じくらいの声量でつぶやく。
すると「楽しい」は橙色、「悲しい」は深い青、「好き」は桃色、「嫌い」は先ほどの赤い色のような色で出てきた。これだけでは仮説を証明できないため、同じ言葉を全部怒りながら言ってみた。
それがすべて赤色となったため、こちらの仮説も正しかった。
この実験で感触についていろいろ気が付いたが、ある程度の声量があれば全部固体になる。逆に言えば、小さいと最初の二言のように液体や気体になってしまう。
また感情によって形や質感が全く違う。
わくわくの感情だと抑えられない気持ちがあふれるような弾力があり、基本角なども丸くなっている。怒りの感情は、とても荒々しくとげとげしていて触りにくい。
こうなると次に気になるのはこの物質の根源だ。
簡単に言うと何からできているのってことだ。確かに触れるし、見えるが、無から何かを生成することはできない。知識として理解はしているが、この世界では本当にできないのかどうかを、記憶をいじられている俺は判断できない。考えられる仮説は4つ。
1,無から生み出せる世界である
2,代わりに何かを消費して生み出している
3,どこかから転移してきたものの形を変えている
4,実体はなくその本質に俺が触れたり見たりしている
1は今の俺には判断できない、2か3だった場合は使い続ければ何かわかるかもしれない、4ならばこの力に可能性はないかもしれない。ただこれは簡単に判断できる、これで何かを壊してみればいい。
そう思い俺は近くにあった「くそやろー」を手に取り檻を全力で殴った。すると少しだけ格子が曲がった。これで実体があることは確認できた。しかしまずいこととなった。
滅茶苦茶ビービー鳴っている。。。
更新はとても不定期になると思います




