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010話「意外な1日」




 あっという間に日常が過ぎていって学園祭前日。今まで水面下で動いていたあるとあらゆるクラブや部活動、そしてサークルたちが一斉に表だった準備に動き出す。この日は学園全体が授業がなく、学園祭の準備にその1日を費やす、計画段階で用意されていたテントなどには様々な木箱が置かれたり明日の催しのために人が忙しなく動いている。

教室を使って何かをするクラブや、テントを設置して自分たちの成果物を発表しようと貼り付けている部活動、皆やることがそれぞれだ、かくいう私はこういう日はすることがない、別にどこかに所属しているわけでもないため早い時間にまっすぐ帰宅するかクリスの様子を見にいくことくらいだ。


そう本来その程度のはずなんだけど。


 「ラナさーーん!こっちもお願いします!」


 「はい!」


毎度恒例になっているのか、私はいろんな人たちから貸出を受けている。別に誰の彼のものとかそんなルールは全くなくなぜかこの学園祭前日になると毎年決まって私は準備の助っ人として駆り出される。

ちなみに元から交流があったとかなかったとか関係なしに同級生からも上級生からも下級生からもひっきりなしで応援を頼まれる。

それが飾り付けであったり純粋にリハーサルだったりは別々だが、どちらにしても何故かこの日は本当に忙しくなる。


 「ラナさん、もし良かったらこちらの方後で手伝ってくれませんか?」


 「はい、」


 「ラナさん、こっちの荷物運びもお願いします。」


 「はいはい。」


 「ラナさん!」


 「わかってます!」


いや本当に、、頼られるのは嫌いじゃない。むしろ助けたい気持ちまで湧いてくるのだが、だからといってなんでこの日に限ってこうも私を引く手数多なのか知りたい。

いや本当に。


 「疲れた。」


かと言っても休憩は必要だ。もこうはこっちの気を知らずに色々頼んできてくれるが、私は普通の獣人族と違ってハーフだ、その能力も持続性も本当の超人には遠く及ばない、運動不足の同族に比べれば動けたりできるかもしれないが、この身体能力は人間にも寄ってすこし落ちている。


休憩する時、私は人がいないところに行って水を飲む。そして落ち着いたらまた表に顔を出すのだ。この感じ、なったことはないが追われる有名人のような気分になる、まぁ私の立場的にどう有名になってもそこまでだなっとしみじみ思うけど。


 「………。」


水を片手に、冷めた体を起き上がらせて再び陽の元に歩き出す。多分私の姿を見たものは幸運に思うだろう、私もその期待に応えたいと思う。できる限りではあるが、無力のままただ黙って見ていたり弾かれるよりかは、何かと協力した方が気分がいい。


私はただ黙って見ているだけというのが根本的に嫌いなのだ。


 「………よいっしょ。」


 大きな荷物を下ろした私は手を叩き、仕事を終える。大きな声で何度も感謝の言葉を伝えられるなにかお礼を渡される前にそそくさとどこかに逃げた。気づけば時刻は夕暮れ、もしセオリー通り私が寮に帰っていたのなら今頃のんびり昼寝をしている頃なのかもしれない。今日の天気は快晴、ハーフの私は意外にも体力の消費が早い、獣人特有の能力を半分だけ受け継いでいるせいか、人にも獣人にも取れるような短期的長期的な睡眠時間が当てはまらない。

そのせいでたまに急激に眠くなることが起こる。


最近になってからようやくこの自分の不規則性ある睡眠時間をコントロールできるようになったのだが、幼い頃はよく変なところで目が覚めたり変なところで眠くなったりと大変だった。

多分記憶にもない頃の私は母や父に相当な迷惑をかけたのだろう。っと心の中で反省する。


 私はこの特異体質に振り回されてばっかりだと改めて思う。予知夢もそうだが、体力の消費もそう、産んでくれた母にはとても申し訳ないがこの体はいささか不便だと思ってしまう。それも他の獣人や人間を見た時の比較対象に過ぎないが、だって私は母には感謝しているし人間由来の部分で魔法や魔術が使えることだって普通の人から見たらかなりすごい才能に見られる。誰かにチヤホヤされるのが好きなわけではない、ただ便利なのはいいことだとそれだけだ。


 「おや、お疲れ様ですねラナさん。」


 「!クリス……」


ベンチで休んでいる私にクリスが話しかけてきた。服装はこの学園特有の体操服という奴だ。緑色のジャージに反して彼女の髪色は特に目立っている、奥に見える同じジャージを身につけている人に比べたら、この髪色はすぐに見つかるだろう。


 「ラナさんは毎年のように?」


 「うん。いっぱい頼られた。」


 「それはたいへんでしたね。」


 「本当に。どうして私を頼ってくるのやら。」


 「いざとなったら頼れる相手という方ですから、」


 「そうかな?」


 「そうですわ。間違いありません。あとは猫の手でも借りたい状況なのです。」


 「…………。」


学園祭の準備はわずか一日だ。毎日をハツラツに生きている学生たちからすればこの準備時間はかなり短い、人数も多いがそれに伴うクラブや部活、サークルなどもバカにならない。数的な面で言えば一人が最低二つの部活やサークルなどの兼員であるはずだ。


それほどまでに多い、だから私のような何もしてない人に白羽の矢が立つのはある意味必然かもしれない。だとさても勘弁願いたいのはおかしいだろうか。


 「私だってほら、助っ人として呼び出されなければ今頃ラナさんのように引っ張りだこでしたから。」


 「そうかな?クリスは人間でしょ?」


 「人間でも物体移動系魔術は習得済みですから。」


 「あれできるだ。」


 「えぇ、初歩的なものですが。長くやると消費がバカにはならないですからね。」


物体移動系魔術は近年考案されたものだ。純粋な魔力操作によってものを動かすのだが如何せん、術式らしい術式が中途半端でまだ完成してない。なんならゴーレムなどを製作できる傀儡魔術の方がこれよりはるかに低燃費で使いやすい。


 「あれやってると混乱するんですよ。たまに頭の中がメチャクチャになって。」


 「考えることが多いもんね。たしか集点と連結だっけ?」


 「リアルタイムで術式化されてないものを使うのは、微細な魔力操作が必要ですから。やるだけ損ですわ。」


 「のに覚えてるんだ?」


 「えぇ、無駄ではないと思ったので。」


クリスは魔術の多くを会得している。得意な魔術が炎系統だというが、実際のところは四大属性も使える、それ以外にも副属性も使えるのだから素養があったとしてもかなりの努力家だ。

魔術はその構築だけでそもそもが違う、炎には炎の術式があり、水には専用の術式がある。それぞれを頭の中に叩き込んでいないとイメージだけでは足りず、発動することができない。


魔術の厄介な点はテストで100点を取れるほどの理解度がないとまず発動すらできないほどだということ。


だから暗記と見ていいのか、理解と見ていいのかクリスの技量は相当なものに変わり無い。


 「クリスはおわった?」


 「はい。あとは着替えるだけでいつでも帰れますわ。」


 「じゃあ帰ろっか。」


 「はい!」


私はクリスと共にヘトヘトの状態で共に帰って行った。クリスが馬車に乗せてくれたおかげで帰りはかなり楽ができたと思う。

寮に帰りいつも通り夕食と体の洗浄を終えたらかなり疲れていたのかすぐに眠ってしまった。悪夢はいつも通り見なかった、だが少しの不安から僅かでもいいから見たかったとらしくないふうに思った。




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