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オーディション

三日坊主になってない自分を褒めたい。


女神様が弁財天様と知った日から5日後。


鮎美に連れられ私はオーディションなるものを受ける為、ある事務所へと来ていた。

オーディションとは面接みたいなものだと思っていたけど違うみたい。


なぜそう思うかというと……………………最初に案内されたのは更衣室。

もうこの時点で頭には?が一つ。

準備してあった衣装?は制服だった。この前まで着ていたらしいけど、俺だった私には初の服装。女性物の服にもさすがに慣れてきていたから無事に着替えを済ませて鏡を見ると、とても新鮮な姿にちょっと感動した。制服の作りのせいか胸の辺りが窮屈に感じたけどね。


着替えが終わり次こそは面接なのかと思ったけどまた違った。

メイク室?部屋には大きな鏡と化粧の匂い。2人の女性が待っていた。

2人とも一瞬気圧されたみたいに後ろに下がったけど、すぐに目をキラキラさせて私を見ている様に見えた。右側の女性に至っては手を震わせる様に触りたいみたいな行動をしていた。それはちょっと怖いんですけど!


まさにされるがままの状態でメイクをして貰い伊達メガネを掛けた。

あぁ~そういう事か!地味っ子設定だからこの姿でオーディションを受けるのか。

何となく意味がわかってホッとしていると。


「え~と優紀。姿勢は前のめりぐらい猫背で髪で顔を隠す様にって、それから『事件』って言葉が聞えたら演技をして欲しいって。」


鮎美がメイクの人から渡されたのか台本みたいなのをも見ながら説明してくれた。


「演技?演技っていきなりなの?どんな演技すればいいのかも聞いてないんだけど!」


どんな事が書いてあるのか気になり鮎美の隣へ行き台本みたなのを覗いてみるとそこには…………


------------------------------

設定に従い演技をしてください。


設定

  ・姿勢は前のめりぐらいで猫背。普段髪で顔を隠している娘役。

  ・幼少期のトラウマにより人の顔(特に男)を見る事が出来ない娘役。 

  ・亡くなった父は生前「胸を張って顔を上げて堂々と生きろ!」が口癖。

  ・キーワード『事件』で憑依により父親役。

  ・憑依後のセリフ「俺が解決してみせる!」

  

------------------------------  


は?

え~と猫背で髪で顔を隠す様にしてトラウマで顔を見れないって事はオドオドした感じかな?

自分の中で設定に基づいて私が演技をしているイメージを作っていくと頭にスーと役ができていった。


自然に猫背になり髪で顔を隠すと安心してくる。

それと隣にいる鮎美の顔を見るのも怖さと不安が入り混じった気持ちになってきた。

そして背後には父の霊がいる様な気にもなってきた。

イメージ通りの私が作られていく。


「……………………じゅ、準備が出来たみたいね。じゃ、い、行ってもいいよね?」


私は髪の間からチラッと鮎美を見て頷いた。

それから鮎美の足元を見て追う様に部屋を出て別の部屋へ向かった。


着いた部屋の前で鮎美がドアにノックしたみたいで耳にコンコンと音が聞えた。

部屋の中から「どうぞ!」との声に男性だとわかると恐怖で不安になった。


「失礼致します。」


鮎美が部屋に入ると私も部屋へと恐る恐る入ってみて、チラッと髪の間から部屋の奥を見ると男性4人、女性1人がテーブル越しに座っていた。男性の1人は勿論知っている。橘 雅史マネージャーだ。

そしてテーブル前には一つの椅子が準備されていた。


「どうぞ座ってください。」


別人の様に感じる橘さんが進行役なのか指示をされたので言われた通りに椅子に座ると、そんな私を見て。


「どうも彼女はもう始めているみたいですね。どうですか皆さん?イメージ通りでしょ?」


「……………………そうみたいですな、しかし素でこんな感じの子なんじゃないんでしょうね?今回のドラマの印象的な驚く様な変身は出来るのか心配ですがね。」


小肥りの男が批判的な声をあげた。


「そうです!今の所イメージ通りだと思いますけどこれから撮影していく途中で出来ないとかなったらどうするんですか?やはりここは少し名前と実績のある演技派女優にしてみては?今ならうちの美見(ミミ)とかどうでしょう?」


次に批判的な意見を言ってきたのは細身で変な髪型の男だった。ナルシストぽい男。


「待ちなさいな。演技力も大事な部分なのはわかりますけどね。声も大事な要素なのよ、まだ彼女の声を聴いてないわ。声を聴かせて貰えないかしら?」


1人だけの女性で髪が長く色気がある女性の意見


「そうだな。俺も声を聴いてみたい、あれしかない設定で今のイメージ通りの演技をしているのは信じられんがな。見てみろ!普通なら緊張しているはずなのに何処も体が硬直していない、なのにトラウマの設定通りに怖がっている様子が伝わってくる。」


無精髭に筋肉質な男


「そうですね。では何かセリフでも言って貰いましょうか。あれしかない設定ですけどアドリブでお願いしますかね。優紀さんお願いします。」


と橘さんから指示。

アドリブ?そんなの必要ない!今の彼女の気持ちは…………


「ち、父は刑事をしていました、とても尊敬していました。でも……………………でも亡くなりました。急にいなくなるなんて……………………どうして父は亡くなったんですか?」


小さな声で、でもちゃんと聞こえるぐらいの悲しい感情を込めて私は泣きそうな声で言葉を伝えた。


「クッ……………………なんて演技力だ。マジか…………俺はもう何も言う事はねぇ。」

「……………………そ、そうね。声を聴かせて貰えたし私もないわ。正直早く他の演技も見てみたいわ。」


「そ、そうだな。演技力は認めるが、変身した時の印象がここから出せるものですかね。」

「そうですよ。演技力だけじゃダメダメ、それに綺麗な子や可愛い子なら沢山いるんです。魅力を持った子じゃないとドラマの主役なんてできませんよ。そこの所橘さん大丈夫なんですか?」


「曽我さんと源川さんから了承を得られましたし、3対2で決まりと思うんですけど…………未だに小山さんと林田さんは納得出来ないとそうおっしゃっるんですね?」


「そうだ。」

「私も同意見です。」


「そうですか……………………では優紀さんいいですかね?『事件』ですよ。」


事件との言葉を聞いた私は身体を一度大きくビクッと震わせ、俯いたままゆっくりと立ち上がった。わざと腕をだらんと垂らした状態を意識させてあらかじめ細工をした伊達メガネを、触らずに床に落としてみせた。それから右手で髪を上げると同時に身体をそして顔を猫背から解放し、胸を張って堂々と5人を見ると胸の辺りでプチンと音がした気がするが気にせずに私は「俺が解決してみせる!」と力強く自信のある大きな声で言った。


先程までの恐怖や不安など今は感じない。でも自分が解決するんだとやる気だけは心から溢れてくるようだ。



ん?ここで演技は終了のはずだけど、勝手に止めていいのかな?

ポーズを決めたまま待つこと1分。

ようやく橘さんが声を掛けてくれた。


「完璧だ!僕のイメージ通りだよ、さすが優紀さん。あっ、まだ入ってる?OKだよ。」


ふぅ~やっと終わった~この胸を張った体勢ちょっときつくなってきてたんだよね。


「お疲れ様でした。今の演技で良かったんですね?設定あれしかないから焦りましたよ。」


「いや本当にごめんね。皆さんに優紀さんの実力を知って欲しくてね。それであのメガネ落とすとか優紀さんのアイデア?」


「あっ、気がついてくれました?憑依って不思議な事じゃないですか、だからちょっと細工をして演出してみました。すいません勝手な事してしまって。」


「あのぐらいなら全然大丈夫だよ。それとそれも演出なの?」


と指を差された。

それも?1つしか準備してないけど、何だろう?鮎美ならわかるかな?と思い振り返って鮎美を見ると、

振り返った私に一瞬驚いた後、指差して「む、胸っ!」。


胸?そういえ少しスースーする気がする………ゆっくりと胸を確認すると、わぉ!胸の谷間を強調するように出ているじゃないか、まぁ全部ポロリしている訳じゃないし上ちょっとだからセーフでしょ。


「偶然です、すいません。見せるつもりはなかったんです。」


私は恥ずかしがることなく淡々と答えた。


「では小山さん、林田さん。まだ反対しますか?」


そんな橘さんの声に2人は首を横に振るだけだった。

それから橘さんの指示で退出した。これから評価とか纏めるんだろうな~。


読んで頂きありがとうございます。

誤字脱字ありましたら訂正よろしくお願いします。

あと、感想・評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] そのオーディションに居合わせたかった………
[一言] ボタンは無事か?
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