表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
U:niON《ユニオン》  作者: 藤華 紫希


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/21

コレクションの合間に

 練習室に入るとなぜかバックダンサー達も集まっていた。

「そんな予定でしたか?先生……」

 一際楽しそうにこちらを見遣る仲野先生に聞いてみた。

「ちょうど打ち合わせしたいって教室終わりに連絡したらゆきも練習に今から加わるっていうじゃない。この子達にも伝えたら行きたいって言うから連れてきた」

 なにもそんなにタイミング良く無くても……。

「明日も撮影ですから、そんなにはやりませんよ?」

「もちろん、こっちもまだ高校生いるしね」

「短時間でしっかり練習致しまっす!」

 高校生二人が敬礼しながらいつもより真剣な顔をして言う。そこへ、

「おー、間に合った間に合った」

 そう言って社長を筆頭に他グループメンバー、事務所関係者がぞろぞろ入ってきた。

「いったい何事ですか?!社長まで……」

「U:niONが柚木君のパート練習に付き合うって聞いたら仲野先生もダンサー引き連れて合流するって言うじゃないか。そんな見物なかなか無いだろう?」

「更に聞きつけて僕達もお邪魔させて頂くことにしました。噂には聞いてたんだけど、見る機会がないじゃん?」

 先輩グループが楽しそうに説明してくれる。

「ゆきさん忙しくてダンス指導中々来てくれないんだもーん!せめて踊ってるとこみたいなーって!」

 U:niON以外の指導は無理だと言っても諦めずに食らいついてくる、モデル出身のガールズグループダンスリーダーの彩織ちゃんは腕を絡めてきて、やっと捕まえたー!と嬉々としている。

「うわー!彩織さんだー!」

 それを見て喜ぶ高校生に……。

「わかりました!とにかく早くやって、早く休ませないといけませんので!」

 そう声を張ると、高橋さんがボソッとそうだった、と言って慌てて動く。

「皆さん、邪魔にならない所で見学を!U:niONとダンサーの皆さんはすぐに準備を!」

 未練たっぷりで絡めた腕を解いて彩織ちゃんが離れると、アイテム組は連絡の後ちゃんと休んでたから心配しないで、とナツが耳打ちしてくれる。

「ほら、早くゆきさんも着替えて!」


 何時になく狭い練習室に、さすがに緊張して深呼吸する。

「珍しいわね。ゆき、緊張してる?」

 仲間先生はお見通しだ。

「しばらくまともに練習出来てなかったんですから当然です。早く休ませないといけないし。失敗できないんです!」

 ぽんぽん、と肩を優しく叩いて自分のポジションに向かって行った。

 周りを見渡すと、私の緊張が伝わったのか、U:niONの表情が硬い。

「皆さん、私より練習してるんですから、ちゃんとリードしていってくださいね。本番以上に気を張ってできるチャンスなんですから」

「うわー、そんな事言わんといてー!余計緊張するわー」

 リツはわざとそう言って、笑いを取る。

「仕方ないな。リツは俺らと居残り練習だな」

 リュウも空気を読んで会話に参加する。そしてナツも。ソウタも。

「まぁ、そうだね。ソウタと僕はしっかり終わらせて先に休ませて貰うよ」

「リツ君ごめんなぁ、さすがに付き合われへんくて」

「うわー!アイテム組冷たっ」

 笑い声が響いたところで、タイミングを見計らっていた高橋さんがスタートの合図をする。

「音楽準備OKです!」

 皆それぞれのポジションで集中する。

 前奏が始まる。まずは新曲のalways…be with you から。

 中心で動き始めたゆきにまずどよめきが起きる。CM使用部分でもあるので、この辺りは完璧だ。この後ダンサー達も入ってきてスピード感が上がる。

 振り入れした頃よりも更に精査され、広がりもあるので、魅せられるようになっている。

 続けてknight 。今度は右後ろから、MVで砂浜を歩いたように左前方にいるU:niONに近づいて行く所から始める。本番では月明かりや、海を照明や、ステージで演出する。その後はYUHKIとして目立つダンスはせずに、バックダンサーに紛れる。とは言え、アクロバティックな動きを仲野先生と繰り出したり、ダンサーも派手な動きがあるだけに、その度に歓声が上がっていた。

 音楽番組でゆきに向けていた君を護るポーズは今度はファンに向けて行う。今日は見に来ていた先輩達に大いに愛嬌を振りまいて喜んで貰っていた。

 最後にLOVEを勢い良く踊る。所々でメンバー二人とダンサーが止まるシーンを作って、なるほど!とブックレットを見た人にわかる演出を仕掛けた。見学者の中でも半数以上がブックレットを見ていたようで、仕掛けに気づいて盛り上がっていた。見ていない見学者には高橋さんがちゃっかり持ってきていたブックレットを回して見て貰っている。

 ライブ会場ではブックレットをまだ見ていない人に手に取って貰えるよう、ちゃんとCD販売もする。改めてCDの売り上げの起爆剤として、今回はYUHKIを利用する。U:niONに貢献できなければ、YUHKIを復活させた意味が無い。

 一通り踊って最後に大きなハートを皆で作り上げて終わると、大きな拍手とアンコールの声……さすがにチェックもしたいので、見学者の皆様にはお帰り頂くことにした。何か気づいた事があればと聞いてみても、ゆきさん、ゆきさんと変に目に付いてしまって、もう少しでもみくちゃにされる所だった。

「はいはいはい!ゆきさんは早く終わらせて休ませないといけませんので!!」

 高橋さんが大声で制止して、U:niONがそれに続いてありがとうございました!と挨拶をし、解散を促してくれた。最後には、さすがに社長が各グループのダンスリーダーを務める者以外は退出するよう言ってくれた。どちらにとっても勉強になると、判断をすぐに下せる社長はさすがすぎる。

「こっちのチェックは終わったわよ」

 事務所関係者達と騒がしくしている間、自分達の出る幕ではないと判断した仲野先生が、ダンサーを集めてビデオチェックを終わらせてくれていたようだ。

「仲野先生ありがとうございます」

「私達の仕事はこれだから。それで、全体の事について意見が欲しいんだけど……」

 他のグループのリーダーも呼び寄せて、意見を乞う。面識があるだけに、リーダーもすぐ対応してくれる。やっぱり仲野先生は心強い味方だ。こちらは先生に任せて、U:niONと共に自分達のチェックに取り掛かった。

「 CM部分小さくなりすぎてる?」

 「この後の広がりの為にメリハリあって良くね?」

「中心に固まってる時に小さく見えないようにさ、振りはもう少し大きくしようよ」

「そうだな。気をつけるよ」

「いっそゆきさんリフトする?」

「いいやーん!」

 次々と出てくる意見にうんうん、と頷いていると、急に自分が更に目立つ構成にしようとされていた。

「……え?私が目立っても……」

 そう言ってもメンバー達の声は大きくて、全く聞いていない。

「高さ出すのいいね。少しだけポジション開いて……こじんまり感は払拭出来るよね」

「俺ら二人が隣だから持ち上げるよ」

「任せてやー!」

 リュウとリツという、高身長二人にリフトされることが決定したらしい……。

「まあ、諦めなさい。こっちでも出てた意見だから、構成としては正解だと思うよ?」

 いつの間にか後ろから肩を組んで、嬉しそうにそう仲野先生が言う。目の前にはこれまたしっぽがあればブンブン振ってそうな、キラキラと目を輝かせて今見たい、すぐ見たい、やろう♪やろう♪と歌う奈留久美がいた。

「そこ二人もポジション確認しにおいで」

 そうカイに呼ばれて、大はしゃぎで二人は向かう。

「なんだかしっぽが見えたわ」

「私は随分前から見えてます……私達も行きますか」

 肩を組まれたまま、先生と二人皆の輪に入って行く。

「てことで。ここでリフト、キープ、降ろす」

 手拍子でリズムを取りながらナツが説明している。

 「ポジションはちょっと広がる感じやねー」

 ふむふむ、とソウタは少し離れてダンスしながら、移動の距離感を確認している。

「で、ゆきさんはリフトされようが、そのままの振りで。ちょっとリフトされてくれる?」

 隣には二人が既にスタンバっていて、否応なく持ち上げられた。

「急に持ち上げられてんのに体幹ヤバ」

 他グループのメンバーがざわめいている。

「ナツ、高さこんなもん?」

 持ち上げながら調整し始める。

「うーん、そうだね。てか、ほぼ一人で上げてない?」

「せやねん。おまえ支えればいいからって」

 その言葉を聞いて、U:niONがリュウくんズルい!と騒ぎ出す。

「ちょっと、人を持ち上げたまま逃げないで!」

「リュウ!早く終わらせないといけないの忘れてるだろ!」

 マネージャー二人から注意が入ったところでやっと降ろしてくれた。

「この方が安定すると思ったんだよ」

 メンバーに睨まれて、不貞腐れながら言う。

「子供かよ」

 ナツがそう言って笑うと、周りもだよな!と笑い出した。

「ほら、リツとよく話し合って決めろよ」

「ホンマやわー。それならそうで降りる時のサポートなり上手く行く方法考えるねんで?」

「悪い。踊ること考えると、二人で持ち上げる方がいいと思う」

 年下のメンバーに言われて、バツが悪そうにしている。

「一人で持ち上げてみて、踊れないことに気づいたんでしょ?バランス悪いんだから当たり前よ」

 仲野先生が追い打ちをかける。

「すみませんでした!」

 これ以上言われては堪らないと、素直に謝ることにしたらしい。

「ほら!早く始めるよ!」

 ナツがそれを見て満足気に練習再開を促した。

「ダンサー二人リフトのコツ教えてやって」

 先生に呼ばれて男子二人が隣に来てリフトをする。振り入れの時にリュウとリツを踊っていた二人はリフトしながな難なく踊った。

「ちゃんとすればリュウみたいに筋肉自慢じゃなくても簡単に持ち上がるのよ」

「お互いタイミング良くね。ほら、練習するよ」

「はい!」

 いつもの返事だ。

「それじゃ、立ち位置はここで、腕はここ……そう。せーの、リフト、キープ、降ろす!」

「リフトはいいね。振り大丈夫?」

「なんとか。歌のパートじゃ無くて良かった……」

 リツが本音をポロッと零している。その歌のパートもあるリュウはさすがにいっぱいいっぱいだったようだ。

「まあ、一人で無理して持ち上げた時よりは踊れたんじゃない?」

「……精進します」

 さすがに素直に受け入れたらしい。

「そう?じゃあもう一度だけ練習させてください!その後合わせます!」

「OK!こっちも一発で決められるようにしっかり確認しようか!」

「はい!!」



 修正箇所を中心に30分ほど練習をして、改めてさっきと同じ順で通す。

 他グループダンスリーダー達は結局最後まで付き合うと言って、練習に付き合ってくれている。U:niONは独特な事をして見ていて面白いと言われた。

「まずもってゆきさんが踊ってるのがもう、面白い!」

 事務所内で会うと良く話をする彩織ちゃんは、以前からYUHKIのダンスのファンだったらしい。高橋さん以上にダンス動画を集めていたらしく、待ち時間に高橋さんと意気投合していた。

「多分ね、私達の振り入れ動画に何本かゆきさん入ってると思うの」

「それは是非見たいです!」

 とんでもない会話が聞こえて、見間違いだからやめるようにとだけ言っておいた。

「えー、見学者の皆さん、お付き合い頂きありがとうございました!感想伺ってもいいですか?」

 ここはダンスリーダー同士付き合いが多いナツが聞く。

「めっちゃ良くなったよ!リフト最高だね」

「ダンサーのレベル高い分メンバー頑張らねえと喰われるぞ!ゆきさん上手すぎだわ」

「だよな、こっちにも教えに来てよ」

 やっぱり変な目立ち方をしてしまっている。

「私のことはいいですから。それに、レッスンはU:niONで手一杯ですので」

「そうよね。それにゆきさんもこっち側の人なんだから無理に決まってるでしょ!」

「そうだったわ、タレント側なの忘れてた」

「はいはい!タレント側だと気づいたのなら、YUHKIは明日朝早いんで、さっくり感想述べて自分のグループにお帰りください」

 そう言って高橋さんがリーダー達を急かす。

「この場所で見る分には十分だと思うよ」

「だよな。あとは会場のサイズに合わせて微調整だよな」

 さすがリーダー達。

「そこは先生もゆきさんもいるから逆に心配いらないわよ」

「最強だよな。いい勉強になったよ」

「んじゃぁ、俺らはこの辺で失礼するわ」

 先輩らしく、颯爽と帰って行く。

「ありがとうございました!」

 こちらもU:niONらしく挨拶をして見送る。と、ガールズリーダーが戻ってきて、

「奈留久美ちゃん!ガールズダンスグループ後輩ができて私達めっちゃ喜んでるの!早くコイツらのバックダンサー卒業しておいでね!」

 と、わざわざ二人に声を掛けていってくれた。

「きゃー!ありがとうございますー!」

 見事にハモってお礼を言って、お互い大きく手を振って別れた。

「うわーっ。こんなの頑張るしかないっしょー!」

「だよね!だよね!」

 かなり気合いが入ったようだ。

「では始めましょうか」

 高橋さんが撮影用タブレットを持ってチェックをするようナツに渡した。

「よし、確認しようか」

 みんながナツの周りに集まる。

「ゆきさんもね?」

 ナツがそう言うと、いつの間にか後ろにいたリュウが背中を押してみんなの輪の中に入れてくれる。

「ほらほら、もっと見えるところにどうぞ」

 トウヤが空けてくれていたスペースに招き入れてくれる。仲間達がみんなで迎え入れてくれる。

「ありがとう」

「それじゃ再生するよ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ