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U:niON《ユニオン》  作者: 藤華 紫希


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20/21

春夏コレクション 1-2

 その後の撮影はいつも通り賑やかに、順調に進み、元木君がようやく自由に動き回っていた。

「YUHKI、助かったよ」

「元木君を助けたつもりは無いわよ。ブランド側に迷惑をかけないように注意しただけ」

 セットの端でメイクを直しながらそう言っているとカイが隣にきてニコニコと、

「ブランド側に配慮しただけですよ、元木さん♪」

 そう言って通り過ぎて行く。

「あ、こら!そういうことはやめなさい!」

 さすがに慌てて注意しても、知らん顔をしている。

「ゆきさん、無理だよ。散々変なマウント取ったり、ゆきさんに迷惑掛けたりしてるからね?」

「そうそう。そんな人すぐに許せるわけないでしょ?」

「リュウ……ナツ……」

 私の目の前……元木君の後ろに二人で立ち塞がって、圧を掛けている……。

「いや、それに関しては反省は大いにしてる。けど、言い訳する気は無いよ。当然だと思ってるよ。逆にプロとして仕事だと割り切って態度を変えてくれて感謝してる」

 若干やりにくそうにしながらも、メイクをする手は止めない。こっちもプロだと言うことか。

「次、僕達もよろしくね?弟達がアシスタントさん達の方行ったから」

 わざわざ圧をかける為に二人がこちらへ残るようにしたわけか……。

「もちろん。他のメンバーも最終チェックはさせて頂きます……おし、できた。YUHKIは撮影へどうぞ」

「ありがとう。二人をよろしく」

 もう色々言葉は必要無い。二人の肩にぽん、と手を置いて、行ってくるね、と言って元木君に任せて行く。

「全く、君たちのマネージャーは良いマネージャーだね?」

「当然でしょ」

「まあ、ちょっとマネージャーの仕事までさせてるのはこっちも反省してるんで、改めてお願いします」

「リーダーもしっかりしてるな。ま、おあいこって事で。ほら、どっちからメイクするの?」



「アパレル組、アイテム組の皆さんお疲れ様でした。コスメ組の皆さん引き続きよろしくお願いします。明日はアパレル組とアイテム組の撮影がメインです。明後日は予定通りCMとMV撮影の同時進行となります。YUHKIさんは長丁場となりますが、引き続きよろしくお願いします」

 奥田さんからスケジュールの確認と、初日の労いがあると、

「お疲れ様でした!残りのメンバーとゆきさんをよろしくお願いします!」

 先に帰るリュウ達が挨拶をした。

「ツアー練習しっかりね。高橋さん、よろしくお願いします。三人は終了次第連れて帰ります」

「大丈夫。撮影終わるまめはYUHKIに集中して。メンバーももういい年なんだから。案外今日はしっかり者だしね」

「そうそう。オレしっかりしてるで!」

「いやいや、この中じゃ一番子供でしょ」

 胸を張って主張するジュンに、トウヤがさらっとそう言うとハルも、だよねーと同意する。このまま騒ぎ出しそうなのを先に釘を刺す事にする。

「せっかくしっかりしてるって言われたんですよ?からかい合いはもう十分ですから、撮影に集中してくださいね?」

 そう言うと、ナツも続けて、

「ほら、頼むよ?撮影押したりしたら練習困るんだからね?」

 と言ってパフォーマンスリーダーらしく脅すと、さすがに気合いを入れ直して、

「冗談だって!ほら、行くぞ!」

 と、ハルのひと言で撮影に戻って行った。



 コスメ組はお互いにメイクをし合ったり、見ている方がドキドキするような艶めかしい色っぽい大人を表現する。

「メイク指導を元木さんにお願いします」

「よろしく」

 奥田さんにそう紹介された元木君は、かなり緊張している。

「そんなに、緊張せんでいいよ。仕事やって割り切ってるって」

「そうそう。マウント取られようが?スタッフにSNSで何をされてもね?仕事だからね?」

「メイク指導よろしくお願いします」

 目の笑ってない笑顔ほど怖いものは無いとはこのことだろうな……。

「ホントに割り切ってよ?冗談でも空気悪くなるからやめてください」

 ここはマネージャーとして、しっかり言っておく。すると、三人で声を上げて笑い出した。

「もう、ほんま冗談やって」

「なんだか皆さんいつも以上にそのあたり厳しく言われてるって聞いてます」

「俺らが帰った後もゆきさんは残るからさ。心配じゃん?だからちょっと意地悪しとこうかって」

「俺が格好の標的にされたわけか」

 周りもそれは仕方無いと言う空気に変わる。

「ありがたいですが、そこまで心配頂かなくてもこの現場は何より安全な場所ですから。三人共撮影に集中してください」

「もちろん」

 顔つきが変わって、メイクの手順や、カメラワークに合わせた写り方を打ち合わせていく。

「CMに使うかはまだ決めていないんですが、コンテンツ用に動画撮影もしますので、セリフもつけましょうか」


「リップはこうして……アイシャドウはこうして……」

 元木君がカメラ映えするメイクを教えてくれる。そのタイミングを見ながら監督がカメラワークを指示していく。

「そこで目を閉じて……こちらにカメラ目線で目を開く」

「ほんならそこでセリフ言う?」

 ジュンが早速意見を出すと、ハルが続ける。

「いいね。やっぱそこは『あなたを輝かせる』かな?」

 続いてトウヤも、

「僕を輝かせるでも良さそうじゃない?」

 そう言うと、ハルがまとめる。

「それぞれ自分をメイクして『僕(私)を輝かせる』ゆきさんを三人でメイクして『あなたを輝かせる』はどう?」

「良いですね!それで行きましょう」

 奥田さんがハルのまとめにゴーサインを出してくれた。

「それならそれぞれ役割分担するってことだな?YUHKIを練習台にするわけにはいかないから、マネキンでも用意するか……」

 準備に向かおうとする元木君に念を押す。

「しっかり指導してよね」

「わかってるよ」

 すり替えればいいだけの話ではあるが、とんでもないメイクになるのはさすがにゴメンだ。

「ゆきさん任せてぇな」

「そうそう。そのまま使って貰えるように頑張るからさ」

「ゆきさんに無茶はしないから安心して?」

 自分で選出した三人を信じるしかない。

「いいか?時間も無いからしっかり覚えろよ?」

「はい!」

「このブランドは発色がいいんだ。でも濃すぎるくらいがYUHKIは映える。特に衣装の主張が激しいから、思い切って行け。で、しっかりぼかして馴染ませる」

「こう?」

「筆はこうやって動かす」

「なるほど」

 一人ひとりに指導して、マネキンを使ってリハーサルをしている。その後に教えて貰ったメイクを自分に施して、ソロショットの練習もして、派手な顔を創っている……。

「絶対私の顔でやらないでよ?」

「ほら、時間無いぞ。メイク直す……より始めっからやった方が早いな……クレンジング持ってきて!」

「俺らが行きます!」

「自分らで顔洗います!」

 そう言うと颯爽と控室へ走って、衣装部が慌てる。

「待って!衣装汚れないようにしてやって!」

 呆れ果てたのか、元木君は大笑いしている。

「手がかかると言うか、見てて飽きない奴らだな」

「大変だけどね。楽しいわよ?」

「だろうな。前より断然楽しそうだもんな」

 同じ裏方仕事と言っても、以前は色々なものにがんじがらめに縛られていたのだと、今の場所から眺めてみて改めて思う。

「YUHKIさん、先にカメラテストお願いします!」

「呼び出しだ。行ってこい」

「行ってきます」



「オッケー!お疲れ様でしたー!いやぁ、思った以上の出来になりましたよ。始めはどうなるかと思ったけどね」

 撮影監督が充実した顔でそう言って、今日の撮了と労いをしながら笑いを取る。

「ありがとうございました!お疲れ様でした!」

 いつも通りU:niONらしく挨拶をして、三人はスタッフに促されて着替えに向かう。

「ありがとうございました。明日もよろしくお願いします」

 私がそう言うと、

「今のは"ゆきさん"だったね」

「私も思ったー!いつものマネージャーさんの挨拶!」

 とスタッフさん達に言われた。

「さあさあ、YUHKIは着替えてからゆきさんに戻ってね?」

「酒井さんまで……!」

 一気に笑いの渦が広がる。

「メイクも変えるんだろ?早くしろよ?」

 早く休ませようと、周りが急かしてくれている。

「ありがとうございました!」

 U:niONばりに挨拶をして、控室へ向かった。




 迎えに来たメンバー車の中でパソコンを広げていると、真後ろに座ったジュンに覗き込まれた。

「ゆきさん何してんの?」

「今日の報告と明日のスケジュールを皆さんに送ってます」

「うん、今連絡来たね」

 LINEを確認して、通路を挟んだ隣に座ったハルがそう言いながらトウヤとジュンにスマホを見せている。

「仕事早いよね。てか、すっかりゆきさんだね」

「……どういう事ですか?」

「YUHKIさんじゃ無いねってことやろ?」

 トウヤの言葉に首を傾げていると、ジュンがそう言った。

「ずっと私は私です」

 なんだそんなことかと思いながらパソコン作業を進めていると、

「ぜんっっぜんちゃうから!」

 ジュンが力強くそう言って、残り二人も深く頷いている。

「ちゃんとしなきゃってカメラの前で切り替えはしますけど、それがマネージャーであれ、モデルであれ、仕事に変わりはないので、やっぱり私は私ですよ。それこそメイクや衣装の影響って凄いってことでしょうか」

 作業を終えてパソコンを閉じてそう言うと、三人はゆきとYUHKIの違いを検証し始めた。

「確かにね。マネージャーのゆきさんは主張しないけど存在感はいつだって大きいよね」

「モデルのゆきさんはメイクや衣装で主張してるし存在感もあるよね」

「まあ、まとめたらゆきさんはやっぱサイコーやってことや!」

「どんなまとめ方だよ」

 大雑把にまとまったところで、電話が鳴る。高橋さんからだ。

「お疲れ様です。……はい。順調に進んでます。そちらは?……了解です。あと10分程かと……はい、では後ほど」

「高橋さん?なんて?」

「帰ったメンバーも順調に練習してるそうです。余裕があれば三人も練習に参加しますか?」

 今日のスケジュール的には、この三人はもう仕事は終了だ。

「えー、マジか」

「参加で。当たり前でしょ」

 ボソッと呟いたトウヤにハルが間髪入れずに言う。

「嫌っていうんじゃ無くて!みんなまだやってんのかっていう意味!」

「それなー。明日撮影やのにね」

 思わず苦笑する。確かに撮影への配慮は必要かも。

「そうですね。先に撮影に入るアイテム組には休むように連絡します」

 スマホから高橋さんに連絡を入れておく。

「ゆきさんも、俺たちに付き合ってないで休んでよね。最近いつも以上に肌の手入れ時間かけてるでしょ?」

 さすが美容男子、手を抜くと一発でバレるんだろうな。

「気にかけて下さりありがとうございます。そこまで変わらないので、ご心配には及びません。それより私も少し練習しないと」

 そう言うと、

 「ほんなら話は別や」

 「すぐに連絡……」

 「もうしてる……あ、もしもし?ゆきさんも練習したいって。うん、しっかり二回ほど通したらゆきさん連れて休んで。うん、よろしく」

 あっという間に明日の撮影組の休み時間が遠のいてしまったようだ。

 「なにも全員揃わなくても大丈夫ですよ? 」

 「あかんあかん。ゆきさんがやるなら絶対皆でやらなあかん」

「ま、そういうこと。みんなも待ってるってさ」




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