名無しの忍者ヒシくん
今回は、大水槽に来る前の庭の水鉢でのことのご紹介。
2021年の10月末、職場の池から掬って、庭の水鉢に5匹の金魚を入れました。
まだ天気は穏やかで、沈めた植木鉢と木賊《とくさ》の茎の間を思い思いに泳いでいた黒い稚魚たち。
私が水鉢に近づくと一旦は隠れますが、しゃがみこんで静かにしていると、1匹2匹と顔を見せます。
「安全だぞ」とサインを送り合っているのかどうかわからないのですが、ひとりが安心すると、5匹ともが代わる代わるやって来て。
秋の日差しが浮草や水草を透して底まで照らして、いつまででも眺めていられました。
家の中の小水槽のダイとギンより長く眺めていたと思う。
水面に上がってきて元気に泳ぎ回る限り、まだまだ冬眠する気はないのでしょう、餌を少しあげることにしました。
最低気温は12℃前後、「10℃を切ったら餌はやめたほうがいい」というアドバイスもネットにありましたが、うちの子たちあまりに活発、もらった餌を食べ残すつもりもなさそう。
毎朝午前8時半。
水鉢の横に座り込んで数えること30。
今日は誰が一番に上がってくるかな?
似たように黒い5匹のうち、最初に区別がついたのはリロワンです。
体長2センチちょっと、外での冬越しが可哀想かもと思うほど小さい。
でも好奇心旺盛で、「ご飯が浮いてる?」とちゅっと水面に上がってくる時に、メダカのように目がきらりんと輝いたりして。
そんな日は何か素敵なことがありそうで、一日いい気分。
次に覚えたのはテンコ。
5匹とも黒い中で、額の右に赤い点があると気づいたから。
その上テンコは食い意地が張っていて、よく水面に現れたのです。
「コイツ、ふてぶてしくない?」ともうその頃から感じてました。
テンコよりちょっと大きくて点が無いのがヌシ。
物事に動じない感じがして「親分」という意味でヌシに任命しました。
スリムで、餌をパクッと口にすると、すぐくるりと方向転換して背中を向けるのがシャーク。背びれを水面からぴんと出してくれたらそっくりだろうな。
「5匹いるはずだから、みんなが餌を口にしたら仕事に行こう」と思っているのに、いつも最後の1匹が未確認。他の誰かと混同してしまっているらしい。
ーーーーもしかして、忍者なの?
身体のサイズが一回り違うので、リロワンと見間違えることはなかったのですが、他の4匹は、すっと泳がれると識別できないことも多くて。
そうこうするうちに寒さも厳しくなって、餌をあげるのは止めてしまい、金魚たちも底に沈んだまま。
(鉢の深さは27センチ程度)
それで忍者魚には名前をつけられないまま春を迎えることに。
冬眠中は身体中黒かった5匹も、春が来ると少しずつまだらに赤味が増してきました。
5匹を水鉢から大水槽に引っ越した時、ほとんど初めて(職場からの輸送中以外)横から魚たちを眺めました。
ビックリしました。
ヌシはとにかく太い。
テンコはしっぽが長い! 上から見てる時は気付いてなかった。
シャークは横から見てもスリム。
リロワンは小さいくせに既にかなり濃いオレンジ色。
そして、忍者。
横から見たら、形がチガウ。
流線形というよりも、菱形。
シャークと長さは同じくらいでも、横から見たら見間違えるはずもない。
「よし、君はヒシくんだ!」
忍者魚に初めて名前が付いたのでした。




