ひねくれたいクロヒレくん
大水槽でテンコがいじめられるなんて全くの予想外だったのです。
だって、私がいつも心配していたのはクロヒレくんのことなんですから。
彼はどうも、「ぼっち系」でして。
誰かと一緒にいるよりも、ひとり遊びが多い。
例えば、隠れ家ドームの中に3匹ちっちゃい魚が寄り添っているとして、クロヒレくんは同じサイズなのにその中の一員にはなりたがらないのです。
どこにいるかというと、そのドームの外側、裏で何かをついばんでいるのが常。
朝の合同ご飯ダンスに参加はするのですが、「え~踊らなきゃダメ~?」とでもいいたげに、大抵最後に合流します。
写真を撮ろうにも、どうも映りたがらないというか、グループから外れてるから画面に入ってない。
(エピソード「登場金魚紹介」ページの写真でさえ、クロヒレくんは入ってない。下の離れ気味な写真も見てね)
当初、シロヒレくん、シッポナガサンと一緒にうちに来た時は、濃い赤の身体に真っ黒のヒレがとっても格好よかったんです。
小さいくせに鋭い、絞りに絞った空手家みたいなイメージ。
でもすぐにヒレの黒さが抜けてしまって、ちゃっかりもののシロヒレくんがどんどん大きくなるのに比べてクロヒレは成長度が遅いので、幸せじゃないんじゃないか、私の見ていないところでいじめられているんじゃないかと心配でした。
ギンちゃんのように威張っている一匹狼なら心配しません。
周囲についていけなくてぼっちになっちゃってるんじゃ?
なんか存在が寂しそう。
リロワンなんて身体は一番小さいくせに、いつも生き生き楽しそうに泳いでるよ?
いずれ、体長抜かされるんじゃない?
そんなある日、「うわぁ、ヤバい!」という事件が起こりました。
クロヒレくんの背びれが縦に4ミリくらい裂けているのです。
1センチあるかないかの背びれが半分近く。
うそ、尾ぐされ病とかじゃないよね?!
やっぱりいじめられてストレスで、免疫力が低下して病気になっちゃった?
でも本魚、クロヒレくんは全く気にもしてない様子で、切れていても背びれはピンと張っているし、泳ぎに支障はなさそうで、餌はまず水面に食べに来て、水底のも食べて、普段と生活態度が違うわけでもない。
怪我しただけ?
何か手当てをしてあげるべきなの?
悩みながら翌日になり、今度は!
ヒレの切れ込みの元部に白い点々が!!
ダメだ、これはきっと白点病だ!!
日本でだって、イギリスの庭の池でだってイヤというほど見かけた、金魚の大敵白点病!
薬浴だ、掴まえて、隔離して、薬を。
テンコが中水槽に引っ越したので、小水槽が空いてる、隔離はできる。
でももしみんなにうつってたら、大水槽ごと薬投入?
メチレンブルーだっけ、マラカイトグリーンだっけ?
こっちで売ってるの、White Spot Treatment としか書いてないけど、どれがいいのかな?
何ミリリットル必要なわけ?
うん、ちょっと落ち着こう。
白い点があってもクロヒレくんは元気に泳ぎ回っていて、大水槽から彼だけを掬いあげるのは大層難しそう。
今のところ他の子たちに白い点はないから、大水槽全体に薬を入れるには、みんなの体調をよく見て、必要量を計算してから。
腰を据えてかからないといけない案件なのだから、焦らず休日まで待とう。
そしてさらに翌日。
え。
クロヒレくん、背びれの切れ込み、2ミリになってる。
白い点々も背中よりも背びれの先に近くなってる。
そして、クロヒレくんを隔離しようという心づもりでいた休日になると。
クロヒレくんの背びれにはもう切れ込みも白点もなくなっていたのでした。
君、手品師なの?
もしかして、すべてが私の見た幻?
君の背びれ、確かに切れてたよね? よね?
白点に見えたのは、自然治癒中の粘液だったのでしょうか?
ああ、クロヒレくん、クロヒレくん。
ひねくれてても、ぼっちでもいいよ。
君の力量を心から信じてるから。
これからも、この愚かな飼い主を驚かせてくださいませ。




