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月光と漁火〜転生オタク女子は魔法に沼る〜  作者: かず@神戸トア
成人したオタク女子

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トラモンヌダンジョン

 事前に聞いていたように、街の南から2つの城門を通り過ぎると広い敷地の真ん中に小さな丘のような岩場がある。

 夜になったところだというのに、まだ人はいる。多くは当日の冒険を終えて街に戻る冒険者のようである。


 他にも冒険者を相手にする売り子も残っているようである。

「地図あるよ!安く売るよ!」


「あれが、当たり外れがあるから注意するように言われている地図屋か。ギルド内でも居たけれど、屋外のこっちの方が大きな声だね」

「確かに毎月で構造が変わるならば商売になるわね」

「でも冒険者ギルドでも販売しているのに、商売になるのかしら」

「物を知らない相手に偽物を売ったり、相場より高く売ったりすることもあれば、自分では不要になった中古を売ることもあるだろうし。お互いに上手く利用できれば良いのだろうけれど」

 少なくとも初心者の自分達が買う相手ではないことは確かであるので、その呼び声は無視して進む。


「あれが初回受付じゃないか?」

 岩場の一部に初回の旨の看板が出た場所がある。運動会のテントを常設にしたような、屋根と柱だけのガレージのような簡易な作りのものである。


「ここは冒険者しか受付できません。冒険者の証明をご提示ください」

 6人それぞれ銅の証明札を提示する。

「あら、銅級の方々ですか。よその街から来られたのですね」

 そう言いながら、壁面に並ぶ無色透明の魔石のような小指程度の大きさの“魔水晶”を1人1つずつ取るように指示される。

 壁から生えた水晶のようなものは手に取るとポキっと簡単に根本から取れる。


「はい、これをどうぞ」

 その魔水晶をペンダントとしてはめる金具付きの首紐を渡される。

「なるほど、これが魔水晶か。まだ無色透明だな」

「これを持ってダンジョンに入ると色がつくのね」


「ミミ?」

「分かっているわよ。1階にちょっと入るだけよ」

「流石はミミ!」

 ミミ本人もここまで来て無色透明のまま帰るつもりはない。


「こちらが入口です」

 先ほどの初回受付とは別に、ダンジョンの入口と出口がそれぞれあるようで、その入口と出口と案内されたところは地面に光る魔法陣が存在している。


「無色透明なので初めてですよね。もし各階層で出口を見つけられなければ、この入口で入ったところに戻ってきてくださいね。そこの光る床で出口と念じると、あの出口に戻ってきます」

「何人で入っても大丈夫ですか?」

「同時にあの光る床に乗れる人数であれば。皆さんが行きたい階層を念じるのですが、1人でも違っていればいつまでも転移されませんのでご注意ください」

「すごいですね」

「あ、もちろん1人でも行ったことのない階層であれば、全員が念じても行けませんので」

「なるほど」


「じゃあ、6人くらいなら大丈夫だな。まずは1階に行ってみよう」

 ジョフレッドも新しいことに我慢がならないようで、入口への列に並ぶ。

 この時間でも少しは並ぶ人がいることが驚きである。

 ただ、そのような人が居るからギルド職員が夜でも対応するために働いているのだと思う。



「よし、じゃあ1階って念じるのよね」

 6人揃って光る床、円形の魔法陣の上に集まって念じる。

 ルナリーナは興味津々で目を開きながら念じていたが、別空間に転移させられるのは一瞬であった。


「何これ!すごい!」

 皆も転移魔法の経験は初めてであり、一瞬で別の場所に移動することに驚く。

「ダンジョンの罠の一つで転移があるらしいわね。地図を書くのも大変で、とても攻略が難しいようだけれど」

「それはそうだよな」

「ねぇ、あの空も偽物なのよね?」

「イグ、この前にジャイアントスコーピオンなどのダンジョンでも経験しただろう?」

「でも改めてダンジョンの不思議を感じるわ」

「これ、きっと昼間は明るい空なんだろうな。中と外で時間はあっていると言うことかな」


「見て、明るい茶色になったわね」

 自分のペンダントの魔水晶の色を確認し、お互いのペンダントも見せ合う。


 各自、初めて来たダンジョンで色々なことが気になるようである。

「あっちに、魔物の気配があるわ」

 ルナリーナが念の為に発動した≪探知≫魔法の結果である。


「Eランク魔物ということだけど、迷子になっても面倒だし6人揃って移動するわよ。もし何かあったら、あそこから出口に出て、そこで待機すること」

「流石はリーダー。了解!」

 暗い中なので、草原とはいえ何があるか分からないので≪灯≫の魔法を発動して、足元を照らしながら移動する。


「あ、角兎(ホーンラビット)!」

 暗い中で灯りを連れて移動していたからか、その奥にいた魔物が突進してくる。

「俺が」

 ボリスが前に出て、左手でヒーターシールドを構えて突進を受け止め、右手のロングソードでとどめをさす。


「特に魔物の強さが上がっているわけでもない、単なる角兎だったかな」

「いや、こんなに好戦的なのはもしかするとダンジョンだからかも」

「あ、その可能性はあるわね。普通の街道だと、見かけただけでは襲ってこないわよね」


「さぁ、ダンジョンのことも経験したし、宿に戻りましょう」

 ミミが声をかけてくれないといつまでもここに居てしまいそうである。

「そうね。明日もお店を見て回らないといけないし、帰りましょう」

 自分に言い聞かせるように、ミミの言葉に従って、先ほど転移して来た魔法陣に向かって移動する。出口への転移も早く経験したいのもあるルナリーナである。



「今度は出口と念じるのよね」

「これなら一緒に出なくても良いわね。バラバラで迷子になってしまっても何とかなりそうね」

 ダンジョンから出るときも一瞬であり、周りを見渡すと先ほど入ってきた岩場である。


 興奮は冷めないままであるが宿に戻り、その夜はおとなしく眠りにつく一行。




「さぁ、今日はいろんな店舗に行くわよ」

「ルナ、俺たちはどこから行く?」

「そうね、神頼みでもないけれど、まずは神殿からかしら」

 その言葉通り、ルナリーナとアルフォンスは神殿に向かう。この迷宮都市では有名な神は個別の神殿があるようで、そうなると向かうのは豊穣の女神デメテルと知恵と神秘の女神ミネルバのところになる。



「なるほど、ナンティア王国からですか。遠い道のりでしたね。旅のご安全のお祈りをどうぞ」

 デメテル神殿の神職は、侵略のことを知らないのか知っていてもその素振りなのか分からない感じで祈りをすすめてくる。

 ルナリーナは魔力を納める祈りをするが、アルフォンスは形だけ真似ている。


「こちらで神霊魔法を教わることはできるのでしょうか?」

「はい。ですが希望される方も多いですし、素質にもよりますが」

「デメテル様の神霊魔法として、初級の≪治≫、中級の≪回復≫≪解毒≫を習得しております」

「それは素晴らしいことですね。それ以外となりますと、中級では≪軽病治癒≫、上級では≪上回復≫と≪病治癒≫になりますね。特に上級は女神様への信仰の強さをお示しいただく必要があります」

「いかほどの奉納をさせて頂ければよろしいのでしょうか」

「金額だけではないのですが」

 しばらく神殿での奉仕なども行った上でかなりの金貨が必要となることを教わる。


「では、≪軽病治癒≫について」

 こちらは別の街で≪解毒≫を教わったときと同じく金貨を支払うだけで教わることができた。個室で魔導書を貸し与えられたので、自作の魔導書に必要箇所を書き写すことも行う。


「こちらの≪軽病治癒≫、もちろん軽い風邪なども治すことができますが、二日酔いなども治すことができますので、意外と重宝されるのですよ。治癒をされたときには、デメテル様に感謝することを伝えてあげてくださいね」

「はい。もちろんです」


「幸先が良かったな」

「本当」

 その気持ちのままミネルバ神殿に向かったルナリーナたち。

 しかし、その神殿を出る時には全く反対の気分であった。

「なんてお金にがめつい人なのかしら」

「この迷宮都市だからかな」

 未習得の魔法を教わるには、初級魔法であっても金貨を何枚も必要とすると言われたのである。


「もしかして魔導書も、かしら」

 その悪い予測は当たっており、初級の魔術でも同じく金貨何枚もするのが相場であると魔導具店や書店で言われてしまう。

「需要と供給?そうか、この迷宮都市には魔法使いもそれなりの数がいて、しかもそのお金を払える人たちがいるということね」

「よく分からないけれど、今までは買う人も少なかったから安かったということか?」

「ま、そういう感じね。残念だけど」

「じゃあ、この迷宮都市はそれだけ稼ぐこともできるということだよな?」

 アルフォンスの発想の転換には驚かされる。


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