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ガーデンパラズマは倒され、彼が街中にばら撒き人々に植え付けた花はパラズマの撃破と同時に消え去った。残された被害はせいぜいモーリスが盾代わりにして速攻破壊されたテーブルと、フレイベルが最後の一撃を放つ際に空けた地面の穴くらいである。
事件は解決。フレイベルとトトゥーナの二人が何かしていたらしい仕事は自分には関係ないのでモーリスはそのままギルド本部に帰っても良かったが、その前にどうしてもやっておきたいことがあった。
「……それで、どうして僕が手伝わなきゃいけないのかな」
「しょうがないだろ宿主が衛兵に連れていかれちゃったんだからさ」
呆れたように言うリュードを適当に受け流しながら、モーリスはジョウロで花に水をやっていた。ハス口で細かに分かれた水が通り雨のようにカラフルな花たちを濡らしていく。
花壇の手入れである。
宿主だった男が如何にして花を愛でることに囚われてしまったのかは知る由もない。悪霊に取り憑かれてしまう人にはそれぞれ個人的な事情があったりするもので、赤の他人に過ぎないモーリスが容易に踏み込んでいい領域でもない気がする。
それでも、せめてこうすることで彼の気持ちを少しだけでも理解してみたかったのだ。
まあそれはモーリスが一人で勝手に思っていることなので、
「いつまで続けるんだ? 出来ればさっさと帰りたいんだけども」
……横にいる、ジョウロを片手で気だるげに傾けている少年にはその真意など伝わっていないわけだが。
「ダメだ! せめてこのエリアの花壇は全部コンプリートしよう」
目の前の花壇の花に一通り水をかけ終えたモーリスはジョウロを手に次の花壇を目指して歩き出した。リュードは肩を落として彼の後をついていく。
「おい、あれモーリスじゃねえか?」
そしてゼイデンは自身のチームメイトが歩いているのを見かけた。盾を背負った大柄な青年はこちらに気づくことなく、視線の先を通り過ぎて行った。
「ほんとだ」アーチーも反応した。「一緒にいるのは確か……そうだ、リュードって奴だ。あいつ、さっき一人で特訓するとか言ってたと思うんだけどなあ」
最近めっきり見なくなったような楽しそうな顔で歩くチームメイトの姿を、ゼイデンは睨むような目つきでそれが建物に隠れて見えなくなるまで追いかけた。
○
ギルドの食堂にて。
「私としては見たことを唯一打ち明けたっていう女の子との関係が気になるんだけどな」
「今までの話を聞いて出てきた感想がそれ?」
ありえない……とトトゥーナは椅子の背もたれに寄りかかって首を傾げた。この受付嬢、歳が違えば価値観も違う。
「ベルが天使だったんだよ? もっと驚いたりしないの?」
「驚くってか納得。天気塔を壊したのもあの子だしね」
「あの噂本当だったんだ……」
「それで当の天使様だけど」
言って、エミリーは遠くを見やった。食堂のカウンターで料理を受け取ったフレイベルが何やらニコニコしながらこちらに歩いてくるところだ。まだ食事時ではないはずなのにトレイに乗った料理がやたらと多い。
「なんであんなにゴキゲンなの?」
「さあね。子供たちに応援されて調子いいんじゃない?」




