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お久しぶりです!!
エリーに何か起きている可能性も考えていたアルベルトは彼女の無傷な様子にホッと胸を撫で下ろした。
倒れていたらしいが何かの気配を察知して起きたのだろう。
着ている服はゆったりとした白のワンピースで、いつも黒のローブに覆われている状態と比較すると庇護欲をそそらせた。アルベルトは無意識に伸ばしていた手を慌てて離す。
「アルベルト、私、フード無いんだけどね」
「魔女だろ、知っているよ」
「え、な、なんで!?」
寝ている時に見たなどと言って変態だと思われないだろうかとアルベルトは口を閉じた。しかし今は緊急事態である。
「気になっていたから」
「…………え」
アルベルトはしかし、自分の言葉に驚いていた。慌てて開いた口からは、まだ言うつもりも無かった言葉が溢れ出たからだ。
だが、死ぬかもしれないこの状況で伝えてから死ぬ方が後悔が無い気がした。
ずっと求めていた彼女自身が目の前に居るなんて、こんなに愛おしいと思えるなんて。
「廊下でぶつかった時からずっと……気になっていた」
「……廊下?まさか、メガネの?……」
「そうだよ、それなのにエリーという人物は居ないし金色の髪を持つ女性で該当者は居なかった」
「……うう、だって」
本当はここでしっかりと話し合って正式な形で好きだと伝えたい。
だが、あの女の魔物の気配が徐々に近づいているのは分かっていた。
「エリー」
「なに」
手を握り締め、何かを悟ったような顔をして見つめてくる彼女にゆっくりと顔を近づけた。
生まれて初めて触れ合ったそれは、想像よりも柔らかい。
少しだけ顔を離すと瞳を潤ませた彼女がこちらを見上げていた。
彼女への愛おしさが募った瞬間、胸の辺りに感じたことのない熱が込み上げてくる。
「うぅっ……」
「ちょっと、アルベルト!?」
激痛も伴い、膝から崩れ落ちていた。
息が乱れ、熱が身体中を駆け回るように全身に広がっていく。
自分の奥底に眠る無限の力が噴き出てくるようだ、アルベルトは心の中でなるほど、と呟いた。
熱が治り、呼吸が落ち着いた時これが今まで馬鹿にしていた愛の力なんだと、本能が理解する。
顔を上げると心配そうに自分を見つめるエリーの姿があった。
「エリー」
「な、なによ!」
「愛してるよ」
「はぁ!?」
チュッと彼女のおでこにキスをすると、アルベルトは立ち上がった。
エリーは驚いた顔で彼を見る。
アルベルトの全身が金色の粒子が舞い、灰色だった瞳も黄金色に色を変えていたためである。
「行ってくるよ」
そこには恐らく、人間からは一線を超えた戦士がいた。
随分と柔らかい表情になった彼の足が床を蹴り、一瞬にしてあの化物の元へ駆けていく。
茫然としていたエリーも意を決したように立ち上がった。
自分も、できる事を行おうと。
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