第0章 「小説家になろう」は最初から異世界転生ではなかった
今では「小説家になろう」、あるいは「なろう系」と聞くと、
「異世界転生」
「異世界転移」
「チート」
「俺TUEEE」
といった言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
アニメや漫画でも、毎シーズンのように異世界を舞台にした作品を見かけるようになり、今ではすっかり一つのジャンルとして定着したように思います。
しかし当然ながら、「小説家になろう」は最初から異世界転生を中心とした投稿サイトだったわけではありません。
「小説家になろう」が始まったのは2004年4月2日。
当初から様々なジャンルの小説が投稿されており、それは現在でも変わりません。
恋愛、学園、ヒューマンドラマ、歴史、推理、ホラー、SFなど、異世界もの以外にも実に多種多様な作品があります。
ですので、この読み物で扱う内容を正確に言えば、
「小説家になろうの歴史」そのものではありません。
私が長年読んできた、
「小説家になろうを中心として発展してきた、いわゆる“なろう系”Web小説の変遷」
についてのお話になります。
そして途中からは「小説家になろう」だけではなく、「ノクターンノベルズ」や「カクヨム」などで読んだ作品についても取り上げていく予定です。
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では、いつ頃から現在につながる「なろう系」が始まったのでしょうか。
私自身、正確に「何年何月何日から小説家になろうを読み始めた」という記憶があるわけではありません。
気がつけば読んでいました。
そして、気がつけば主人公たちは異世界へ飛ばされ、勇者として召喚され、別人として転生し、ステータスを開き、スキルを覚え、鑑定を使い、アイテムボックスに大量の荷物を放り込むようになっていました。
今ではあまりにも当たり前になったこれらの要素も、最初から全部揃っていたわけではありません。
振り返ってみると、少しずつ流行が変化しているのです。
最初の頃は、
「現代人が異世界へ行く」
それ自体が物語の大きな出来事でした。
ある日突然、見知らぬ世界へ飛ばされる。
勇者として召喚される。
日本で持っていた知識を使って、異世界で生き延びる。
この頃は「転生」よりも、「転移」や「召喚」という形をよく見かけたように記憶しています。
ところが作品が増えるにつれて、
「どうやって異世界へ行くのか」
だけではなく、
「異世界へ行って、何をするのか」
が重要になっていきます。
剣と魔法で冒険する。
圧倒的な力で無双する。
現代知識を使って商売する。
料理をする。
物を作る。
国や村を発展させる。
農業をする。
のんびり暮らす。
そして、その流れの中から「転生」「ゲーム世界」「ステータス」「スキル」「チート」といった、現在ではお馴染みとなった様々な要素が広がっていきました。
さらに長い年月が経つと、異世界へ行く必要すらなくなってきます。
現代日本にダンジョンが現れたり、
異世界から勇者が帰ってきたり、
その活躍を動画配信したり、
VTuberになったり、
芸能界で無双したり……。
最近では、過去に流行した様々な「お約束」を組み合わせたり、そのお約束自体をネタにした作品まで珍しくありません。
こうして振り返ってみると、ずいぶん遠くまで来たものです。
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ただし、この読み物では、
「この作品が元祖である」
「この作品からこのジャンルが始まった」
といったことを厳密に断定するつもりはありません。
Web小説は同時期に似た発想の作品が数多く生まれますし、私自身が当時すべての作品を読んでいたわけでもありません。
あくまで、
「当時こんな作品を読んでいた」
「そういえば、この頃からこんな作品が増えてきた気がする」
という一読者の記憶を、現在確認できる年代や当時の人気作品などと照らし合わせながら振り返っていきます。
ですから、
「いや、その前にこんな作品があったよ」
「当時はこっちの方が流行っていたよ」
ということも当然あると思います。
そんな時は、ぜひ教えてください。
私自身、
「ああ! それも読んでた!」
となる可能性が非常に高いです。
なにしろ長いこと読んできましたので、タイトルを見せてもらうまで完全に忘れている作品もかなりあります。
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さて。
そんな「なろう系」の歴史を振り返るにあたって、まず最初に見ていきたいのが、
異世界転移・召喚が目立っていた時代です。
まだ「異世界に行ったら、まずステータスオープン!」が当然ではなかった頃。
『ログ・ホライズン』や『宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する』などが登場し、その少し前後にも様々な異世界作品が人気を集めていました。
ここから十数年。
主人公たちは転移し、転生し、ゲームの世界へ入り、追放され、農業を始め、料理を作り、ダンジョンを配信し、とうとう異世界転生そのものをネタにするところまでやってきます。
では、最初の頃は一体どんな世界だったのか。
まずはそこから、私の記憶とともに振り返ってみたいと思います。




