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「そうか。その手もあるのか。
千歳も居ないし先に神子に変わり、ある程度の話しが終わるまでは行けるかな。
ただ腕輪が天音に合うかを確認しないといけないから、神子が腕輪を受け取って問題がなかったから天音に変わる。という形で後から出てきて、そのまま蛇の一族の者に挨拶をして氷河が確認という感じでだとどう思う?」
「それでもいいかも知れぬな。
だが、神子はいきなり表に出て来れるのか?」
「できます!変わります!変わらせてください!!」
食い気味に天音は宣言すると一瞬の間があり、天音の表情が変わった。
そしてゆっくりと視線を巡らし、紅闇たちに向けると頭を軽く下げ話し出した。
「お初にお目にかかります。名を紫苑と申します。
此度はご尽力を賜り、また並々ならぬご配慮を賜りましたこと、誠にありがたく存じます。
また前回わたくしが狩られました事により生じた惨事で、天界の皆さまにも多大なるご迷惑をお掛けいたしましたこと、誠に申し開きもございません。」
いつもの天音より少し低く感じる声でゆっくりとそう話すのは神子君、紫苑君で天音のはずなのに全く天音の気配がない。
「ああ、畏まらないで。頭を上げて。
君に畏まられると蛇の一族に睨まれてしまうよ。
挨拶が遅れたね。狐の星の位の紅闇だ。紫苑君と呼んでいいかい?
ここでは蛇の者ではなく私が君と天音の保護者のような立場になる宿でも一緒だから何かあれば声を掛けて欲しい。」
「狼の空の位の氷河だ。あれは不可抗力だろう。
紅闇が言ったが必要以上に我らに畏まらなくていい。
蛇が煩いのもあるがそれよりも君はここで結果を出し、天音の生が終われば蛇の月の位に上がるだろう。
他の国や下位の者との付き合い方や関係もここで覚えていくといい」
そう話す紅闇と氷河に「お気遣いありがとう御座います。」と礼儀正しく返している。
「ああ、でも蛇の一族の者にはその態度の方が良いだろう。
今日は初対面だし、あと蛇の主神が暴走したことは知らなかったのだから君が責任を持たなくていいし、謝罪はしたければしてもいいけど気にしなくてもいいから、挨拶は考えておきなさい」
紅闇も氷河もやはり目下の者を使うのに慣れているのだろう。
あとから自分たちと対等以上になると分かっていても現状その扱いも出来ず、またそんな扱いをされれば紫苑君が困るとの気遣いも感じられる。
翔太がそんなことを考えている間に紫苑は頷き、目を閉じて挨拶の内容を考え出している。
そんな紫苑の傍らに居た翔太を紅闇が呼び寄せる。そして小声で
「ごめんね。多分彼は今ものすごく余裕がないと思うから挨拶はまたの機会でいいかい?」
意外なことを言われ「もちろん」と頷く。
先ほどまでの落ち着かなかった天音が嘘のように紫苑はじっと固まったままになり、大丈夫なのか気にはなる。
だが自分が何かできることもないと翔太は紅闇の隣に腰掛ける。
「翔太は力を通すのに慣れたかい?」
「ええ、ずいぶん昨日より楽に手を離せるようになってきました。
まだ目を開けて最初から動かすと放すタイミングが掴めなくなったりしますが…」
「それでも十分早いと思うぞ。
紅闇、少し使う道具を考えた方がいいかもしれない。
力の動き的に予定していた物より別の陣を使う方が帰還させる人も翔太にも負担が少ないだろう。」
「ああ、そうだな…蛇の者との話が終わったら紫暈に相談してみるか」
紅闇と氷河が蛇の一族との対話後の話をどんどんと進めていく。
彼等の話を耳に入れながら視線はどうしても天音…いや紫苑に引き寄せられる。
天音を通して会話をしていたが、もしかしたら直接彼に聞いた方が天音に聞くよりも自分の心理的ハードルが下がるのではと、ふと気づく。
天音相手だと人同士とどうしても思ってしまうが、彼であれば蛇の主神の子どもという立場な訳で思考や発想が異なっても自分への負担が少ない気がする…。
天音や紫苑に提案する前に紅闇に天音ではなく紫苑をフロントにして会話することでの問題点や注意点を確認して、問題がなければ彼らに提案してみようと考えると思わず少し気が抜けた。
天音相手だと年齢差と種族で自分の方がしっかりしなくてはと無意識に強く考えていたことを強く実感する。
それが、人ではない相手と変わるだけで精神的に楽になると思うこと自体が正しいとかそういう話ではなく、違っていいと思えることに重きを置いている自分にこの空間、世界線にどんどん染まっているのか、それとも逆に元居た価値観に囚われているのか…
紅闇と氷河がまだ打ち合わせをしている傍で翔太はそんなことを取り留めとなく考えどう紅闇に話を切り出すか、頭の中で纏めていく。
どれだけ経ったのだろう。扉をノックする音と共に声が聞こえる。
「氷河様。蛇の一族の空の位 玄璃様到着致しました。」
いつも読んでくれてありがとうございます。
これで1章終了です。
2章が書き溜まったらまたアップしていきます。
…臨場感を文字で表すというのは本当に難しい…
ではまた。




