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第一話 無職とOLゾンビの戦いが始まる

元社畜の主人公に与えられたのは、

5キロまで物を出し入れできるだけの微妙スキル『亜空間ロッカー』。

この世界、どうもおかしい。

ゾンビはいるのに数が少ないし、

何かと設定が雑すぎる。

それはさておき、やることは決まっている。

ルールを把握し、裏を読んで、

このクソゲーをエンディングまで生き残る。

社畜が分析と実験で終末世界を攻略していく、

ギャグ多めのゾンビサバイバル。

ブラック企業の事務所。

その一角で、二人の男と一人の女が仕事をしている。

課長の大鳥、部下の村田と楠本。

村田蔵五が突然叫び出す。


「…ぬああああ!」


楠本が自分のスマホをいじりながら言う。


「…村田さんうるさい」

「ぬああああ!」


大鳥がキーボードを叩きながら注意する。


「蔵五、黙れ。気が散る」

「ぬああぁっ!100連勤!毎日15時間労働!給料23万円!時給510円!」


楠本が鼻で笑う。


「時給510円(笑)」

「繰り返すなっ!そういうお前はいくつなんだ!」

「うわあ、こわーい。セクハラー」

「セセセ、セクハラっ!?あれ、ええっ!?」

「二人とも黙りなさい」

「でも課長!100連勤!毎日…」


大鳥が突如、怒り出す。


「黙れっ!黙れ黙れ!ああああもう嫌っ!もう嫌だぁぁ俺はもう辞める!俺なんか150連勤!毎日17時間労働!時給530円」

「時給530円(笑)」

「繰り返すなっ!辞める!帰る!寝る!一週間、自宅で酒飲んでひたすら寝る」


蔵五と楠本が同調する。


「じゃあ俺も辞めます!とにかく酒飲んで寝てやる!コンビニで食い物と酒を買い込む!」

「じゃあ私も辞めまーす。ワインとか飲みまーす」


三人は常時携帯している辞表を取り出す。そして部長に迫る。


「「「部長!今から辞めます!」」」



―――



1週間後。

村田蔵五は床で目を覚ます。

ワンルームの狭い部屋。薄暗い室内は発泡酒やストロングチューハイ、つまみの袋や空のカップ麺が辺りに散乱している。


「…みず」


呟いて起き上がる。

台所へ行く。コップが見当たらないので、蛇口から直接水を飲む。

心置きなく水を飲み、その場に座り込む。

ひとり呟く。


「あーあ、無職かあ。貯金は少しはあるけどいつまでも保たないし。失業保険がいるな。ハローワークに行くんだっけ。あと…労基に訴えてやろうか」


訴えるにも仲間が欲しい。

そこで、一緒に辞めた女性事務員の楠本に連絡を取ろうと思いつく。


「あいつは陰険なクズ人間だから、労基とか事前に調べてるだろ。会社の悪事もメモやら録音やら残してるかもしれん。なにしろ、ネット炎上の魚拓を取って研究してる陰湿人間だからなぁ。敵にしたら地獄だけど、味方にしたら頼りになるぞ」


蔵五は台所から出て、スマホの電源を入れる。現実逃避のためにスマホの電源を切っていたのだ。


「うわ、なんだコレ」


電源を入れて驚く。おびただしい着信履歴。実家からが大半だった。課長と楠本からもあった。


「会社が実家に電話したんかな。そんでオカンが慌てて電話したってことか。ひどいことしやがる。でもまあ、もういいや。とりあえずオカンに電話するか…あれ?」


携帯は圏外だった。部屋の中を歩き回るが、圏外は直らない。


「会社を辞めたからとかか?そんな馬鹿な話はないな。これは俺個人の携帯だし」


蔵六はカーテンを開き窓を空開け、携帯の電波を確認しようとする。

そして、固まる。

マンションの二階。そこから見下ろす表の通りはひどい状態だった。

窓ガラスが割られた車、地面には飛び散る黒い血痕、そして…。


「ゾンビ!?」


青い顔の女。スーツ姿だった。歳は20代前半。片足を引きずるように、ゆっくりと通りを歩いている。靴は右しか履いていない。

蔵五の声に、ゾンビが反応した。

うつろな表情でゾンビがこちらを見上げる。2人は目が合った。

5秒ほどして蔵五が言う。


「…こんにちは!?」

「うがああああ!」

「ひいいいいい」


叫び出すゾンビ。蔵五は慌てて窓を閉める。そして鍵をかけ、カーテンも閉じる。


「なんだよこれ、映画の撮影とかかよ、なんだよこれ、どうしようどうしよう、とりあえず…うんこしよう」


突然に便意を感じた蔵五はトイレに向かう。

トイレの電気は点かない。

電気が通っていないのか。震える手でドアを閉めて鍵をかける。便器に座り、暗闇の中、用を足す。


「なんか、夢を見た記憶がある。確か声だけが聴こえてきて…」


『人類の皆さん、こんにちは』

『私は神様みたいなもんです』

『突然ですが、飽きました』

『ライオンを繁栄させたかったのに、お前らときたら…』

『とりあえず、お前らを滅ぼすからよろしく』

『そうそう、君たちの作った映画っていうやつ、そこそこ面白かったよ』

『ゾンビ映画とか楽しめたから、最後にゾンビ形式で君たちを滅ぼすね』

『あと、なろう系?だっけな、それもちょっと面白かった。デスゲームも捨てがたいよね』

『ランダムな人間にスキルをあげるから、終末世界で俺ツエーやってみて』

『では、ナレーションさん、あとは宜しくお願いしまーす』


『おめでとうございます』

『あなたはスキル取得者に選ばれました』

『あなたが得たスキルは亜空間ロッカーです』

『念じながら手で触れた物質を任意で亜空間に収納し、任意で取り出すことができます』

『容量は5キロからスタートです』

『ゾンビを倒すとレベルが上がっていき、スキルが強化されます』

『強敵を倒すと大幅にレベルがあがります』

『では、がんばってください』


「思いだした。すげえ、スキルが当選したんか俺」


蔵五はとりあえず亜空間ロッカーを試す事にする。トイレットペーパーをカラカラと回し切り手に乗せ、念じる。


「ええと、入れ!」


トイレットペーパーが一瞬で消えた。


「おお、すげえ。マジだわ。パチパチ」


思わず拍手をする蔵五だった。


「じゃあ次は…出ろ!」


目の前の空間にトイレットペーパーが現れる。慌ててそれを両手でつかむ。


「いやあ、すごいわこれ。手ぶらで外出できるじゃん。でも問題は…」


蔵五は腕を組む。


「出すときの決めゼリフにこだわりたいんだよな。やっぱ英語かな。入れるときはストレージ!がいいな。いや消えろとかでもいいかな。命令形はカッコいいかもしれんな。でも出すときに出ろ!はなんか安直だし。それよりも換気扇が回らなくて臭いからとりあえずトイレから出よう」


蔵五がトイレから出た瞬間、当然玄関のドアが鳴った。


「ドンッ!ドンッ!」

「ええ!?なになになに?」


怯えながら蔵五はドアスコープを覗き込む。

ドアの向こう側には、先程見たOLゾンビがいた。



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