S,9『木崎、船の設計をする。』
誤字脱字が多いと思います。ご了承下さい。
船長に新しい船の設計を任された。設計チームは、木崎、ラルゴ、警備係長のワグド、装備係長のジゼル、格納庫係長のノーマンである。
「え~と・・・、条件1船体の長さが100メートル以上あること。条件2厳しい航海や戦闘に耐えられること。条件3漢のロマンの塊であること。」
条件が滅茶苦茶・・・なんかもう、足下すら見えないぐらいお先真っ暗である。
配管の位置や排水設備などは造船所の技師がやってくれるらしいが、大まかな設計はしなければならない。
「条件1と2は分かるんだけどさ、漢のロマンって何だい?女の私にはわからくてねぇ。」
装備係長のジゼルが男3人にのんびりと聞く。ジゼルはセクシーで落ち着いた大人の女性と言うよりは、セクシーでのんびりとし大人の女性といったかんじだ。
「巨大ロボット」
「トランスフォーム」
「戦隊ヒーロー」
男3人の意見を聞き、ラルゴとジゼルは「理解不能」と、いった顔をする。
女には漢のロマンはわからないらしい。
「100メートルとなると、竜骨自身の重さで竜骨が曲がっちゃうけど・・・」
「強度以前に、形を保つのさえ難しいとなると・・・船長もキツい注文するねぇ。」
漢のロマンはスルーして長さと強度の問題に取りかかる。
まぁ漢のロマンは、後からでっかい大砲でも載せれば解決するか・・・。
結局、案が出ないまま3日が過ぎた。
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その後、半壊したマミヤの食堂で食事を済ませてからもう一度、設計会議を行った部屋へ入る。時間は8時半ぐらいだろうか?
-誰もいない、まぁ今日の設計会議は終わったし、当たり前か。-
そんな事を思いつつ、机の上に放置された白紙のままの設計図を見ながら椅子に座る。
ひび割れた窓に月明かりがふんわりと、差し込む。
「はぁ・・・どうしよう・・・」
こっちの世界に来て1ヶ月経たないのに、船の設計とか厳しすぎる。
「溜め息ばかりだと、お前の少ない幸運が逃げるぞ。」
ラルゴが入って来るなりそんなこと言いながら向かい側の席に座った。
「余計なお世話だ。」
「船の案、何か浮かんだ?」
「竜骨を鉄にできないか?」
「鉄・・・予算とか大丈夫なの?」
「船長からは、何も言われてない。」
本当に何も言われてないが大丈夫なのだろうか?少し不安はあるが、気にしていては話が進まないのでそれは一旦放置しておく。
「竜骨を鉄で造るとしてどんな感じにするの?」
「いや、正確には一本の長い竜骨じゃなくて、船底外板にする。」
中心線に位置する船底外板にする。その方が今回のように竜骨の損傷で船を丸々換えなくても、破損した船底外板を交換すればいいだけである。
そのメリットをラルゴに説明し、そこから紙の中で船を組み立ていく。
ふと、ラルゴと目が合う。月明かりが横から当たり、彼女肌が透き通って見える。元々整った顔立ちではあるが、何故かいつもより大人っぽくみえた。
「綺麗だな・・・」と、感じてしまった。ラルゴなのに・・・
「何?」
「いや、いつもより綺麗に見えるなって・・・」
「ッ!?」
それを聞いたラルゴの顔がみるみる赤くなっていく。
-ドカッ-
「痛だッ」
ラルゴにスネを蹴られた。どうやら照れたり、恥ずかしかったりすると実力行使に出るタイプらしい。
「そんな事言う暇があったら、さっさと設計を終わらせろ。アホ」
「痛ッつ~やり過ぎだろ。」
-ドカッ-
さらに蹴られた。
タイプとか以前に、見た目が二十歳でも精神年齢はいじわるしてきた男子に反撃する女子中学生レベルなのかも知れない。
「うぐ・・・」
凄く痛い、瞬間的な痛みでは恐らく暫定一位だ。
「仕事しろ!気持ち悪い。」
ラルゴは顔をさらに赤くして言う。
まあ、照れてるってことは、少なくとも悪くは思っていないはず・・・
そんなやりとりをしながら、白紙の紙を設計図に変えていく。
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-翌日-
設計会議で昨日の夜に出た案を発表し、ジゼルやノーマン、ワグドの意見を聞きながら設計を進める。
「まぁ、こんなもんか。」
出来上がった設計図を見ながらノーマンが言う。
船型は三島型と呼ばれる上部構造物が船の中央に設置されたタイプで、甲板が広く取れるのが特徴だ。
後方甲板には旋回可能の荷出し用のクレーン、前方甲板には5インチの二連装気砲が収まった旋回砲塔が二門。
この世界は蒸気機関が存在するが、メカニックな問題点が多く出力が上がらないと言う理由から、軽量化のため殆どの船が木製だ。
5インチの砲でも、十分な威力がある。
エンジンは、これまでと同じ蒸気機関式だが、二機載せる。
そうすれば、全長112メートルの船を前と変わらない速さで走らせることができる。
船体の装甲に関しても全体的に厚くなっている。重要な部分には木材だけでなく、布や金属をサンドして複合装甲のようになっている。
「後は、船長に見せてOK貰えばいいわけだ。」
ワグドが設計図を描くのに使った定規やペンを片付けながら言う。
「ところでさ、昨日の夜2人でこれ描いたって言ってたけど、本当にそれだけ?」
ジゼルがニヤニヤ笑いながら聞いてくる。
「「何もありません!!」」
木崎とラルゴの声が重なる。
「怪しいねぇ。フフフ、」
ジゼルは不気味に笑う
「いや、本当に何もありませから!」
「何かしてきたなら、コイツは今頃コンクリ詰めの寒中水泳です!!」
ラルゴが脅迫ともとれる物騒なことを言う。・・・ヤ●ザかよ・・・
「ムキになるところがますます怪しいねぇ。フハハ」
ジゼルの不気味な笑い声は船中に響く。
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「おお、なかなかいいじやないか。」
船長が設計図を見ながらニヤニヤと笑う、ジゼルの笑い方と重なって不気味に見える。
「何よりこの大砲がいい。『マミヤ改』だな。」
「船長、予算とか大丈夫なのでしょうか?」
予算のことを言われなかったのでかなり贅沢にしてしまったが、大丈夫なのだろうか。
「ハハハッ気にするな。何とかなるさ。」
すごくテケトーな返答に一抹の不安を覚えたが、何かあっても正確な予算を言わなかったこの人の責任である。
「キザキ、少し休んだらどうだ?疲れているんだろ。」
確かにこのところ船の設計などであまり休んでいなかった。
「はい、あまり寝ていません。」
「まぁ、少しの間ゆっくりするといい。」
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-翌日-
3日間の休暇がとれた。船の中でじっとしているのも退屈なので、アール・シュタイナーにアルメリアの街を案内してもらうことにした。
次回はアルメリアの街を紹介します。多分・・・