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S,29『日常と平和ボケとその反動』

投稿遅れてすみません!


 「(パンパン)・・・・・」


木崎は昨日この船の薬師、キリナに貰った神棚に手を合わせる。

お供え物は小さな瓶に入ったエールとライ麦パン2つ。

願うのは死した者への冥福と今日一日の平和。


日本に居た時は平和について深く考えたことはなかった。ただぼんやりと『平和っていいな』と思う程度だった。むしろ時々つまらないと思うことだってあった。

だか、この世界に来て人の死を見て怖くなり、何も起こらない事を願うようになった。


日本の葬式場で見るようなきれいな身体で残るとは限らない

身体中に穴が開いていたり、片腕や片足が無かったり、下手をすれば遺体すら残らない。

そんな遺体をこの数ヶ月、何度も見た。

本当は数回だったかも知れない、けれど一度見ただけで何度も見たと思える程強く脳裏に張り付く。

戦争映画で偽物の手足が吹き飛ぶのとは訳が違う。


記憶の奥底に根を張って取れなくなったショッキングな映像。

もしかしたらそれが明日の自分かも知れない。


もう一度神棚へと向き願う。


-願わくば、今日1日何事もなく明日を迎えられますように・・・・・-


「キザキ、朝っぱらからロッカー相手にぼっちトークか?」


アールだった。


「違う、今日1日どっかの誰かさんが悪フラグ立てませんようにって神様にお願いしてたんだ。」

「いや、フラグなんて無いって偶然だって」

「偶然が重なればそれはもう必然なんだよ、あと綿カビの事まだ許した訳じゃないからな?」


昨日、鎮痛薬として貰った綿カビ、結果的に脚の痛みは治ったが、あんな物を口にしたと思うと気分が悪い、いつか同じことを仕返してやるつもりだ。


「治ったんだから許せよ、結果オーライ、終わり良ければ全てよしだ」

「コノヤロウ」


「ところで船の修理はどんな感じだ?」


この前の貴族護衛の件で、海賊からの攻撃により船の一部が壊れた

木崎は怪我が治るまでの間保育室でベビーシッターをしているため、正確な損壊の具合や修理の進行度がわからい


「ああ、もう少しで終わるよ、根元からポッキリいったクレーンを直すのは骨が折れたな、まぁなんとか直ったけどよ」

「またマミヤの借金増えたんじゃないか?」

「ああ、更に船長が小遣い稼ぎにバクチやって結構すったらしい、お陰でユエさん泣きながら船長簀巻きにして船橋から吊り下げてたぞ、新世界の扉を開く日も近いかもしれん」

「だな」


どうなっても船長は船長なので、もしそうなっても生暖かい目で見守ってあげようと思う


「そっちはどうだ?怪我の具合は」

「ああ、どっかの棉カビのお蔭で順調だ、それに保育室は半ハーレム状態だからな」


保育室には当然男の子もいるのだが、成人している人のみを数えれば、男は城崎一人だった


「オーし、ちょと今から自分の脚気砲ぶち抜いてくるはわ」

「おい真面目な顔で言うなよ、真剣でやりそうで怖いんだが、」

「オレは本気だ、オレが入ってお前のハーレムぶっ壊す!」

「嫉妬かよ!」

「嫉妬だよ!!」


嫉妬の炎は一つ間違えると恐ろしく燃え上がる



そんなくだらない話をした後アールは船の修理のため甲板へ、木崎は子供達の世話をするため保育室へ向かった、


保育室では週に3回、勉強会がある。

この時間は子ども達に足し算、引き算、かけ算、割り算などの簡単な計算や文字の読み書き、歴史、道徳など社会で必要な事を学ぶ


「・・・・で、中央暦1173年に起きたカーライル王国によるネイヴ殲滅作戦でこの国は返り討ちに合って無政府状態になっちゃったの、キザキここまでは分かった?」


「は、はい・・・」


木崎はこの世界の歴史を勉強している

先生はメグだった

木崎も科学と数学くらいは教えることが出来るものの、ここは日本ではなく異世界、世界が違えば地理や歴史、文字も違う

科学と数学は変わりないため少しくらいなら先生として教える事が出来るが、地理や歴史を知る分けないし、文法も違う、英語に関しては元々この世界に存在しない、


船乗りの仕事にも慣れて、この世界のこともそこそこ分かるようになってきたのでこの機会に教えてもらおうと勉強会に混ぜてもらった、メグが教えているのはメグ自身の勉強の為でもある


ちなみに中央暦というとはこの世界で一番メジャーな暦年で殆どの人がこれを元に生活をしているという

今は、中央暦1924年らしい


「さて、この出来事をなんと言うでしょう?」

「1173カーライル王国崩壊事件」

「正解」

「よし、」

「答えられて当たり前の問題よ?」


木崎の固い脳味噌ではなかなか内容が入ってこず、『分からない』を連発するせいで教えているメグもイライラていた


「は、はい、解りましたごめんなさい」


何というか、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、自然に敬語になる


「んじゃあ・・・・次はネイヴはいつ頃からその存在を正式に確認されているか・・・・」


 -ガシャン

    バキッ・・・-


 メグが問題を途中まで読み上げたところで上から何かが落ちる音と木材が割れる音が聞こえた


一瞬、貴族護衛の時の銃弾が飛び交う映像が脳裏にフラッシュバックした

木崎は軽い眩暈を感じたが、これではいけないと逸れを振り払うように頭を振った


何の音だろか?

海賊などの攻撃なら直ぐに伝声管を通してアナウンスが流れるハズだ

それが無いなら事故だろうか・・・・


「ちょっと見てくる、」

「分かった・・・・あと、思い出すようなら言ってよ?話くらいは聴くから・・・」


片手にペンを持ったラルゴが言った

心配してくれているのだろう、正直ちょっと嬉しい


「わかった・・・・長く続くようなら言うよ」

「あ、あの、もし良かったら私も相談にのりますよ・・・」


エレナが心配そうに言う

こういう時に人の優しさを感じられる

とても温かい、


「それじゃ、行ってくる」


保育室のドアを閉めて廊下を進み、階段を上がる



「な、何があったんだ!?」


見ると長さ3メートル程の鉄骨が甲板に突き刺さっている、埋まって見えない部分を含める7メートルはありそうだ。

とそれを大男達が懸命に引き抜こうとしており、更にその隣でら何故か船長がユエさんの前で土下座し、頭を踏みつけられている

近くにアールがいたので何があったか聞いた


「ああ、クレーンの上滑車に船長の帽子が挟まってな、自分で取りに行ったら間違えてネジ取っちまったんだと」

「それで吊り荷の鉄骨が落ちて甲板に刺さったと」

「そそ」


よく見ると、船長がいつも被っている派手な帽子がワイヤーに絡まっている。

何であんな所に帽子が詰まるんだ?という疑問は敢えて持たない事にした。


「アナタという人は何回バカやれば気が済むのですか?貴族護衛での損害は仕方ありませんが、博打で120万もすった後に甲板に穴あけるとかどれだけ借金増やすつもりですか?どうするつもりですか?」


ユエさんはヒールで船長の頭を踏みつけてその足を半回転させながら言った

般若とは正にあれの事だ


ユエさんがキレるのも無理は無い、いくら賭けたかった分からないが120万もすった後にせっかく直した甲板に穴開けたのだ

もう呆れるしかなかった


『甲板修理担当は集まれ!それ以外も手の開いてる者は甲板だ』

『損傷を確認して来い』

『了解っ!』


損傷を確認する声があちらこちらから聞こえる


『女子更衣室と西トイレまで突き抜けてる!』

『突き抜けた鉄骨が便器とロッカーに当たってどちらも粉砕しています』

『誰のロッカーだ!?』

『判りませんが、もっさいヤツと紐みたいな下着です!確認のため持って来ました!』

『グッジョブだ、終わったら一杯奢ってやろう。』

『勝手にアタシのブラ持ってくんなボケェ!』


少しおかしいのも混ざっているが、


「アール、お前直すの手伝わなくていいのか?」

「だって俺甲板担当じゃねぇもん、船体担当。」

「そうか・・・」


木崎は確認が終わったので保育室に戻る事にした

何か妙に疲れた。



保育室に戻ると皆の視線はトイレのドアに集まっていた

エレナが「大丈夫ですか?」とドアに向かって声をかけ続けている

微かに焦げた臭いがした


「どうしたんだ?」

「マナがトイレに閉じこもって出てこない」


詳しく聞くと、おやつの時間に子供達に食べさせるパンケーキを作っていたマナは鉄骨が落ちる音を聞いて急にトイレに駆け込んだらしい、

焦げ臭かったのはパンケーキが焼けた匂いだった


マナが一人で作業をしており、音に気を取られて直ぐに気づけなかった


「おい、大丈夫か?返事してくれ」


少し押すとドアは動いた、

よほど急いだのかロックはかかっていなかった


「開けてもいいか?」


ゆっくりとドアを開ける

マナは床にうずくまり、何かに怯える様に耳を塞いで震えていた


「大丈夫か!?気分悪のなら医・・・・」

「あ“・・・ああ・・・ぁぁぁあああぁあッ!!」


ヒステリックに叫びだした。


その叫びを聞いてさっきまで遊んでいたり勉強していたりした子供たちの中の何人かは泣き始め、先ほどまで私は関係無いとばかりに本を読んでいたメグも流石に驚いた顔をしていた


マナは叫び終わると糸の切れた操り人形のようにクッタリとして動かなくなった


「おい!おい!」

「と、取り敢えず医務室に運びましょう!」

「そうしよう、ラルゴ、ユエさんに知らせくれ!甲板に居るはずだ」

「分かった!」


ラルゴもどこぞアル中はないと思っているのか、指示は素直に通った


木崎はグッタリと動かないマナを背負って医務室へ向かう

今思えばアルメリアで彼女が友人を亡くした辺りから異変は始まっていたのかも知れない

もしそれが原因ならあの時鉄砲玉みたく考えなしに飛び出した自分にも否はある

木崎そう思ったが今は原因を考えるより医務室へ急ぐしかなかった。

















































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