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5月下旬、校外学習として国会議事堂へ行った。
学校では一番上と言えど小学生。俺達が生きた証を刻め!と手摺や柱、壁に触りまくった。
これだから子供は、と呆れつつ俺も便乗して手垢をつけておく。俺も子供だし。
ただ普通と違って「ここお父さんがいるんだー」と言う子がそこそこいたりするのは流石金持ち学校なだけある。
その後はまた中間テストの時期だ。
いつも通り勉強会を始め……るつもりだったのだが、今回は誠の体調が優れず、学校を殆ど休んでいたため一人で勉強することになった。
誠は結局テスト当日も欠席だった。前もそうだったが一度体調を崩すと長引くらしい。
俺は誠の将来を思って心配になった。将来というよりは、もっと近い未来、高等部に上がってからの生活だ。
攻略キャラかもしれないのに、こんなに弱くてどうするんだ。
立ち絵が常に風邪を引いている状態なのだろうか。選択肢間違えると行き倒れになるとか?
そこまで病弱だとシャレにならない気がするが、まあ、開発側のさじ加減で上手く行って看病イベントに繋がるのだろう。
身体が弱いのは生まれ持ったもの(設定)なのである程度は仕方がない。
それは抜きにして、あの真ん中から折れそうなほど細い身体つきは何とかならないのか。
山吹君は成長期だから気にするなと言ったがあの路線で成長しても待っているのは流行りの中性イケメン。洗剤か。
誠は男としてもっと強くなるべきだと思う。
これはあれだな。親父……いや、兄貴、いや姉貴として鍛えてやらなきゃいけないわ。
そう決意した俺は、誠の回復を待った。
元気百倍になって復活した彼に俺が最初にかけた言葉は「身体改造しようか」だった。
誠は「人造人間になるの」と不安そうにしていた。違うよ、マッスルを手に入れるんだよ。
協力してくれそうな面々に声を掛け、後日、放課後に震える誠を連れて集合場所へ向かった。
「誠に元気を与えよう企画第一弾。今日は運動大好きな皆さんに集まってもらいました!ありがとうございまーす!」
「イエーイ!!」
「いや、島崎に無理矢理引っ張られただけだから」
「できれば俺野球したいなー」
「僕そんなに運動好きでもないよ」
俺による掛け声に元気よく答えたのはすーちゃんだけで久藤少年、南ちゃん、山吹君は各々思うことを口にした。
身体を鍛えるなら運動が一番だと思ったのでまずは体育大好き少女すーちゃんに協力を仰ぎ、続いて彼女が認めるスポーツマン・南ちゃんと久藤少年にも「一緒に遊ぼう」と話を通した。
久藤少年は最初から乗り気じゃなかったので来てくれるか微妙だったが、無事にすーちゃんが引っ張って来てくれたらしい。
けど、なんで山吹君もいるんだ?と思ったら廊下で偶然見かけてキラキラしていたので連れてきちゃったとすーちゃんが親指を立てて答えた。カラスみたいなことを言うな。
ちなみにその時山吹君は真田君と一緒に歩いていたらしいが彼は普通に置いてきたそうだ。一番誘ってほしい相手なのだが、流石すーちゃんはブレない。
とりあえず6年を代表するスポーツマンと攻略キャラ候補が集まったので面識のない相手とはお互いに自己紹介をしてもらう。
誠はよく知らない先輩方に囲まれ、すっかり圧倒されていた。よく考えたら外見的にも内面的にもちょっとキャラ濃い子達が集まっちゃったな。
「で、皆さん。ここからさらに移動するのでうちの車に乗り込んでください」
「え?なんで?」
全員の挨拶が済んだところで場所を移すべく手を叩いて皆を車へ誘導する。
なんで、って金持ち学校と近隣でも有名な花霞学園初等部の制服姿で外をうろつくなんて危険すぎるからだ。
高等部生なら未だしも初等部生。一番狙われやすい年代である。
最初は高学年用のグラウンドでも良いかと思っていたのだが、放課後になると同じような考えで遊ぶ子達が多いし、低学年の頃と比べて設置してある遊具も少ない。体育館は基本的にクラブ活動以外では使用禁止となっている。
そのため、学校以外で皆が安心して運動ができる “安全な場所”を確保しておいた。
皆を車に乗せて向かった先は高い塀に囲まれた大きなお屋敷。表札には由良と彫られていた。
「というわけで、こちら場所を提供してくださった由良俊彦先輩です。はい、全員拍手」
「どうも」
体育会系な小学生達の全力の拍手に迎えられた由良少年が照れつつも片手を上げて応える。
安全な場所、ということで親の金持ちネットワークで連絡先を調べてもらい、由良少年に頼んで彼の家の敷地内にある広場を提供して頂いた。
ありがとうございます、と頭を下げて用意していた手土産を渡す。
家に来たのは初めてだが相当な名家だろうという俺の想察は外れておらず、個人住宅とは思えない邸宅には親近感を懐いた。うちもこんな感じ。
由良少年の案内でアスレチックのある広場へ向かう。
途中、誠が「なんで百合香の家じゃないの?」と尤もな疑問を口にしたので「うちは久藤君が出禁になっているからダメなの」と教えておいた。
件の殴り合いで久藤少年は一度も来たことがないのに出禁となっている。我が家であの赤毛は要注意人物扱いなのだ。
「で、具体的に何するの?」
運動前に準備体操をしながら山吹君が言った。
誠の身体改造をするためにこの面々を集めたわけだが、それは長い目で見た時の目標であり、第一回の今日は元気を与えよう(体力をつけよう)ということをメインとした企画なので、まずは軽く体力作りが出来れば良い。
という話をしたらアスレチックで遊ぶのはもちろん、腹筋運動とかランニングだとか、とにかく単純に体を動かすべきだと由良少年から意見が上がった。
じゃあ鉄棒は?体操は?キャッチボールもいいんじゃないか?それならドッジやろう等と様々な意見が飛び交う。
さらにすーちゃんが「体力と言えば筋力。筋力つけるならベンチプレスでしょ」と目を輝かせた。
「ベンチプレス……?」
「ベンチプレスなんてこいつには無理だろ」
「誠君にベンチプレスは危ないんじゃない?」
「いいな、ベンチプレス。俺もやってみたいわ」
「いや、ごめん、そもそもベンチプレスはないんだ」
「ていうか誠に限らず私達にベンチプレスはまだ早いよ」
小中学生の会話でここまでベンチプレスという単語が出てくるのも珍しい。
小学生の体力作りで大人のようにトレーニング器具を使う必要はないのでベンチプレスは却下した。
確かに最終目標はマッスルを手に入れることだが、ジムのようなやり方はまだしなくていいだろう。
まずは体力作りだ。第一回の今日はアスレチックを攻略し、ドッジボールをすることにした。
人数が少なすぎるのでチーム戦として機能しないので、一番最後まで立っていた者が勝ちというアバウトなルールになった。
自分以外全員敵と見なした闘争心溢れる面々を見て、メンバー集めを失敗した気がした。第二回の開催日・メンバーは未定である。




