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*完結* 大海の冒険者~不死の伝説~  作者: terra.
第五話 真実と向き合うことが
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(7)




ビクターは目が震えた。

母と聞けば過るものがある。

瓦礫に命を奪われた母親が自分を残した様に、フィオは飾りと共に世界に残され、何かを託されているのだとすれば




「早く! 信じて! 私は変わったりなんかしない!」




いよいよ焦り始めたフィオが声を上げると、ビクターは(ようや)く飾りを手渡した。

咄嗟に差し出したそれにフィオが触れる瞬間、思わず顔を背けてしまう。

もしその身体が光を放ち、石の様に変わり果ててしまうと思うと、怖かった。




 だが違った。

フィオの言う通り、身構えていた現象は一切起こらず、彼女は両手にそれを取るとシャンの元へ走った。




 その時、彼女の背中からほんの微かに白い微光が尾を引くのが見えた。

足元では、空島の森を歩く際に見た現象の様に、地面から光が弾けている。

靡く毛先には仄かな銀の光の筋が走り、肌に細かな銀の線が迸ると、服や髪の下に消えていく。




 フィオの手がシャンに触れた時、肩で呼吸するのがやっとの彼は落ち着いた。

その最中、長の危機にやっと駆けつけた竜の使者が、目を開けないリヴィアに眼光を浴びせる。

この光に覚えがあるジェドとシェナや、戸惑うグリフィンが眩しさに堪らず目を背けた。

共に光を浴びた3人の傷もまた、癒えていく。




 そこに合流できずにいるビクターの指先が、微かに痙攣する。

次々に判断を下し、立ち上がろうとする皆を追えず、腹が立った。

己を叩き上げる皆に、これまで通り誘導してきた自分が入る隙はない。

友達は自らの力を発揮して挑めている。

ならば自分は、十分に力を出し切っただろうと切り離してしまいそうになる。




 押し寄せる負の感情に、いつの間にか拳を震わせていた。

その手を急に誰かが掴んでも、どうせまた大人が気休めを言いに来たのだろうと、目も向けずに振り解いてやる。




 誰の顔も見たくなく、何の言葉も要らなかった。

何もかも分かり合えるものか。

何故ならここは、見ず知らずの他人の寄せ集めの地なのだから。

本当の家族になれはしないし、そもそも他に家族がいると知った。

この島の人間ではなく、もっと違う地に生まれ落ちた存在だと、目まぐるしく捻くれていく自分に乾いた笑みを零す。

つまらないのは周囲ではなく、自分自身だ。

これではまるで、いつかの自分ではないか。




「ビクターっ……!」




肩が乱暴に揺さぶられる。




「ああ煩ぇな! 話しかけんじゃねぇ!」




視界に飛び込んだ長老はしかし、それに怯まず彼を強く掴んで放さない。

瓦礫から這い出て、身体の至る所に血が滲んでいた。

痛みに全身を震わせながらも足を引き摺り、孤独に立ち尽くす家族から目を離そうとはしなかった。









代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~

シリーズ最終作


2025年 2月上旬 完結予定


Instagram・本サイト活動報告にて

投稿通知・作品画像宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています


その他作品も含め

気が向きましたら是非




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― 新着の感想 ―
どうもです! フィオは変わりましたね! 飾りを手にした時、石のように変わり果てた姿にならないかヒヤヒヤしましたが、そうならず良かったです(^O^) それにしても、やはり母親は偉大ですね! 母と言う名を…
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