(6)
4人は、動かないシャンとリヴィアに震え上がり、駆け寄る。
その時、最後尾になったビクターは、先を行く3人に目が留まると、足が止まった。
フィオがシャンの肩を必死に揺さぶり、ジェドがリヴィアの上体を起こす。
シェナはその状況から再びコアを見据え、身構えていた。
その姿はまるで、いつかのフィオの様にこちらを振り向く気配がない。
こんな事は今だけだろうと思えば思うほど、何故か足が重くなっていく。
自分はそこに行って、何ができるだろうか。
皆を見ていると、どうしても、何もできない気がしてしまう。
それに拍車をかける様に、フィオが急ぎ戻ってきた。
「ビクター、お願い! 飾りを貸して!」
彼は大きく後退ってしまう。
飾りがフィオに齎す事に恐怖しているのは、もはや自分だけなのだろうか。
彼女の黒い瞳には、薄い白銀の微光が混ざり合っている。
力強い眼差しで、懸命に飾りを求めてくる。
ミラー族の元へ行く事を決めているのだろうか。
そう思う内に、強張る手は、装備ベルトの中の飾りを押さえ付けて出そうとしない。
「それがあれば、シャンやリヴィアを治してあげられるわ!」
「止めろよっ……」
渡して何が起こるのかを痛いほどに知っている。
だからこそ、押さえ付ける手は酷く震えた。
友達との関係を歪めた飾りが、恨めしくてならない。
「お前がそんな事すんなよっ……」
「……ビクター?」
周囲の声が遠ざかっていくと、零した発言が強調されて困惑する。
目先の2人の回復など、彼等の仲間がすればいいだろう。
フィオには人間として、自分の友達として、これまで通り島で生きていて欲しい。
シャンは上体を持ち上げるのがやっとだが、リヴィアは未だ動かず、ジェドとシェナが引っ切り無しに声をかけている。
そこへグリフィンも駆け付けていた。
他の戦士達は、沖で悶えるコアに掛かりきりだ。
フィオは、飾りを渡すまいと頑なになるビクターを静かに見つめる。
彼の瞳には、どうしようもない恐怖と迷いが滲み、次の判断の邪魔をしていると悟った。
飾りを渡す事で起こり得る事態を避けようとしている事も。
互いに譲らないまま暫くして、フィオはビクターの装備ベルトから覗き出る飾りの一部を見ると、彼の腕を掴んだ。
「大丈夫。もう、呑まれたりなんかしない」
汚れた勇ましい顔に、薄い白銀の光を宿した真っ直ぐな瞳が揺れる。
ビクターは、彼女の真剣な表情から間違いないと受け取るも、すぐには手放せなかった。
明らかに魔術をコントロールしてみせる様な言い方が、余計に身体を強張らせていた。
「それは、私のお母さんのものなの」
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
Instagram・本サイト活動報告にて
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インスタではプライベート投稿もしています
その他作品も含め
気が向きましたら是非




