(5)
「人類がおらぬ地球に、不都合などない……!」
太い稲妻が走る球体が高々と宙に掲げられた時、其々の瞳に廻る。
見兼ねたシャンは、2本の槍を投擲すると眼力を込める。
鋭い眼光が、目尻から耳まで血管を浮かび上がらせながら迸った。
槍から伸びた鏡の鎖が球体に巻き付いたと同時に、コアが灼熱の眼光を強く放ちながら、球体を島に向けて投じた。
コアがその反動で身をよろめかせた時、守護神の竜がコアの肩から胸部にかけて喰らい付き、半身を引き千切ろうと揺さぶる。
コアは激痛のあまり、地鳴りの様な声を響かせた。
そこへ重ねて襲いかかる竜の使者達に、炎の雨を浴びせられる。
更には、精霊達の刃や矢が続き、コアの原動力である腹の光を打ち消しにかかった。
コアはそれを妨げようと、青く燃え滾る半身に構わず、空の神を払い除けていく。
片や、放たれた球体に立ち向かうのは、シャンの眼光の合図で海から飛び出した危険鮫とロブスターの援軍だ。
高々と飛躍した彼等はまるで、鏡の防壁を思わせる。
其々の身体や鰭に球体の黒光りが反射し、人々の目を眩ませていく。
鮫達が、迫る球体を噛み砕いて阻止しようと大口を開く横から、ロブスターが太い触覚と鋏で突き返そうと迫った。
皆の攻撃が球体に減り込んだ時、放たれる黒い稲妻が彼等を焼いていく。
シャンは矢継ぎ早に落ちていく戦士達に焦る中、黒い稲妻は巻き付いていた鎖を這い進む。
シャンディアの金切り声がシャンに届いた直後、太い青の落雷が、2本の鎖を断ち切った。
ミラー族が見上げたそこに、斧を最大限に振るったリヴィアが追いついていた。
粉砕した鎖と共にコアの稲妻が大気に消えるも、僅かにそれに触れられたシャンは感電し、砂浜まで吹き飛んでしまう。
その傍ら、爆音が天に轟いた。
未だ迫る球体を拭うべく、リヴィアは先回りし、斧で受け身を取るが――華麗に両断し、抹消できたものの、爆風によって周囲諸共吹き飛び、リヴィアまでもが砂浜に叩きつけられた。
この事態に声を上げる人々だが、容赦なく目に飛び込んだのは、宙に浮いていた残りの瓦礫の数々だ。
それらは留めを刺す様に先端を光らせ、島に迫りくる。
「止めてーっ!」
シェナは怒号を放つと、降りかかる瓦礫の全てに声の光が包まれた。
同時に、彼女が片腕を振り払うのに合わせて一掃される。
海へ薙ぎ払われた瓦礫は、そのまま渦を巻くと竜巻と化し、コアに向かい始めた。
コアは竜達に攻撃される中、全身に絡む炎の隙間に予想外の事態を見て、焦りを滲ませる。
空の神が咄嗟に飛翔すると、彼等と入れ替わる様に瓦礫の竜巻がコアに直撃した。
コアが半身を海に沈めた時、仮面に深い亀裂が走る。
その音と共に黒い吐血が散ると、隙を狙って接近していたミラー族に落ちていった。
代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~
シリーズ最終作
2025年 2月上旬 完結予定
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その他作品も含め
気が向きましたら是非