第九話 一つの終わり、一つの始まり
すみません! 昨日は書いてたのですが、寝そうになりながらも書き終えたあと、なぜか消してしまい萎えたのでそのまま寝てしまいました。
次は明後日に更新予定です!
すきま風がうるさい廃墟の中で唯果は小さな声で言った。
「違うよ」
薄々気付いていた。
「何が?」
俺の記憶がなくなった理由を聞いた時は怒って教えてくれなかった。
当たり前のように第五部隊のことを五部と略していた。
俺に叩かれたら死ぬと言っていた。それは俺の力を知っている証拠だ。
そして、副隊長が言っていた、カナン様がネックレスを近くに置いていないのはおかしいということ。
だからか。
いつも家を出るときに引き出しを開けていたのは、持っていくためだったのか。
『待って~、忘れ物』
『バイバイ』
『さいてー』
遅刻しそうなときでも持っていくほど大切なものなんだな。
「そんなことより、なんかわからないけど助かったみたいだねお兄ちゃん」
唯果は赤髪の記憶を変えて俺を助けた。
「俺はお前の兄じゃない」
全部否定したい。
肯定したくはない。
でもこれは事実だ。
――――唯果はカナン様だった。
その子は笑っていた。
「何言ってるの? 五部に襲われて頭おかしくなってない?」
まさかずっと妹だと思っていた人が――――二年前まで俺がお世話してた女の子だったなんて!!!
ショックだ!!
これからお世話しなくちゃならないのか!?
……いや、今までと変わんないか。
俺も笑っていた。
「いつも頭おかしいお前に言われたくねーよ」
唯果は、ひどーい!と言って頬を膨らませる。
そう、今までと何も変わらない。
だから別に気にすることもない。
唯果がカナン様だったとしても。
それに、唯果が赤の他人ではなかっただけでも安心だ。
この子は、好きで俺の傍にいたのだから。
ヴォン、と音がした。
lockerが消えたのか。
俺達は生き残れた喜びでハイタッチをした。
「これから何て呼べばいい? カナン様か?」
唯果は、うーん、と少し悩んだあとに言った。
「唯果でいいよー。……ね、ねぇ…………たいちょーって呼んでもいい?」
別に名前でもいいのに、なんでたいちょ―なんだ?
「二年前まではね、お兄ちゃんのことたいちょーって呼んでたんだー。……ダメかな?」
なんで上目遣いするんだよ。
ちょっと可愛いと思ってしまった俺は末期かもしれない。
「別に、たいちょーだろうがへいちょーだろうが何でもいいぞ。好きなように呼んでくれ」
「わーい! ていうかたいちょー、へいちょーは両手に変な剣を持ってないと――」
「あー、わかったわかった。よしよーし、たいちょーと一緒にお家に帰ろうねー」
「たいちょーのバーカ!!」
俺は今までとあまり変わらない生活ができるならそれでいいと思った。
俺が教室に着いたときにはすでに梓がいた。
梓は俺の存在に気づき、こっちに向かって走ってきた。
「硬大くん! 光翼見なかった!?」
「見てない。HRまでまだ時間あるし、来るかも」
死んでないといいが。
光翼は二限目の途中に来た。
調子が悪いのか、元気が無い。
昨日何かあったのか?
昼休みになって、光翼が俺のところへ来た。
さっきまでとは違い、笑っている。
「よう硬大! 元気そうだな。みんな無事だったのか」
「まあな。お前もな」
「ああ」
急に光翼の表情が暗くなる。
……しかし、瞬きしたときにはすでに元の表情に戻っていた。
俺には、光翼が無理に笑っているようにしか見えなかった……。
学校が終わり、帰るときに俺と光翼のところに梓が来た。
梓は光翼をちらちらと見て様子を窺いながら言う。
「え、えと……光翼? 無事だったんだね……。き、きの――」
「昨日はごめん! 俺、どうでもいいことでムキになってた。俺が気持ち悪いのは真実なのにな」
ハハハハと光翼は笑う。
しかしそれに対して梓は首を振る。
「違う違う! 私が悪かったの! なんでかわからないけど言い過ぎちゃって……。もう気持ち悪いなんて言わないから!!」
梓は頭を下げた。
光翼は困った顔をして頬をかく。
「俺なんかに気使わなくてもいいよ。……俺はいつも通りの梓が好きだ」
光翼は決め顔で言った。
俺と梓はドン引きしていた。
「光翼やっぱり気持ち悪い」
「だな」
光翼は、なんでだよ~と言いながら頬を膨らませ――――
おいおい、やめてくれよ気持ち悪い。
こいつらが生きててよかったと、俺は空を見上げながら思った。
二人と別れた後、俺は家に向かって歩いていた。
夕日が綺麗だ。
空がオレンジ色に染まっていた。
背後に人の気配を感じた。
俺は振り返る。
もちろん誰もいなかった。
しかしなぜか――――嫌な胸騒ぎがした。




